必殺技!
必ず殺すと書いて必殺。その意味では必殺技と言えるでしょう。
リンド王国からの帰りは、全土がリンド王国の領土であるモムール山地に沿って北東へ進み、途中から街道に沿って北へ上り、ジクスを目指すことにした。途中、道らしい道はなく、正確な地図のないこの世界では無謀な行為だが、自分たちなら問題ない。ヴィレッツァ王国の入国時の不愉快な兵士に会いたくないのもある。国境の検問所や関所は交代制なので、確率は低いのだろうが、自分たちなら絶対また会うに決まってる。
それに、安全な街道から外れた山地のルートなら、山間部特有のモンスターにお目にかかれる可能性も高い。ドラゴンとまでは言わないが、せめてワイバーンぐらいは出てきていただきたいものである。正直、最初に倒した時に20㎏しか貰わなかったのは失敗だったと後悔している。お金の問題があったとはいえ、こんなに美味しいとわかっていたら、もっと貰っていた。いや、むしろ売らなかったかも。
南の方と言ってもこの辺りは山岳地帯に近く、秋も深まってきたのもあって、昼夜の寒暖差が大きくなってきた。だが食べ物が最も美味しくなる季節とも聞いている。実際、手頃な森に立ち寄って、柿に似た野生の果物を食べてみたが、甘く熟して美味しかった。
野生の果物が食べられるのは良いのだが、流石にあまり人が通らないせいもあって、モンスターはそれなりにいた。ただ、コボルトやゴブリンなどお金にも、肉にもならないものが殆どだ。一応繁殖力が凄まじいので、見つけたらできるだけ殺すように、と冒険者ギルドの方針はなっているため、めんどくさいが退治していく。前回のように巣があって、女性が捕らわれたりしていなかったのが救いだった。
また、数は多くないが、オークもいた、こちらは肉が美味しいので喜んで狩らせてもらう、集団にはよくあるようにリーダー格らしき大きな体のオークもいた。基本的には強いほど味は良い傾向にあるので期待したい。
コウ達がそれなりに楽しみながら、ジクスに帰る旅の途中、遠く離れた上空に居るにもかかわらず、その鋭い目でコウ達を獲物と定めたモンスターがいた。大空の覇者とも言われるロック鳥である。鳥とは言ったものの、その大きさは桁外れで、ワイバーンを大きく上回る。火を吐くような特殊能力はないが、その鋭い鉤爪、そして嘴、何よりその巨体は、ワイバーンすらも餌とみなす強さを誇っていた。
「そろそろ、ワイバーンとか出てきてくれないかなぁ。本当はドラゴンが良いんだけど、その辺をうろちょろしているようなモンスターじゃないらしいからな。ドラゴンステーキ美味かったなぁ。ワイバーンも美味かったけど、やっぱりドラゴンは格別だったよな。レッドオーガは正直微妙だったけどさ」
(そんなサラに朗報です。3時の方向より種名ロック鳥接近中。距離25,200m、高度1,500m、時速430km、推定戦闘力0.008~0.01)
ユキの思考通信が届くと、皆そちらに目を向けたが、聞き間違いを疑うほど、点ではなく鳥の姿にはっきり見えた。この距離でこの大きさならワイバーンの何倍もある。翼を広げた大きさなら優に100mはあるだろう。
(ワイバーンの時と同じ作戦で行くかい?)
(それには賛同出来ません。敵の推定ペイロードは100t~150t。それぐらいの重さの船を持ち上げたという話もあります。サラとマリーのペアなら大丈夫ですが、コウと私の場合は不安があります。それに余り重くするといくら強化したと言っても、馬が耐えられません)
サラの提案にユキが難色を示した。ペイロードが100t以上なんて、本当にモンスターだな、と自分達を棚に上げてコウは感心した。
(まあ、順当に弓で倒すか。再生能力とかあるのか?)
(いえ、幸い特殊能力は無いようです。文献にもありませんでした。ただ、個体数が少なく、更に遭遇した場合の生存者も少ないため、確実ではありません)
(では徹甲弾型の鏃で攻撃してみるか。駄目なら成形炸裂弾型の鏃で攻撃してみよう)
コウとユキが作戦を練っていると横槍が入る。
(ちょっと待ってくれよ。最近ほら、あたい達あんまり出番ないだろう。ここはあたい達に任せてくれないかな)
(出番が無いわけはないだろう?道中でたくさんモンスターを倒してたじゃないか)
もっぱらコウのお目当ては珍しいモンスターで、作業のように同じモンスターを殺すのは趣味ではない。ユキはコウの後ろに乗っていたので、道中のモンスターの殆どはサラとマリーが倒してきた。
(いやそうなんだけどさ、道中で倒した方法って、弓で射るか、投げ槍で貫くかだっただろう。なんかこう、自分たちの武器じゃないんで、なんか活躍した気がしないというかさあ。コウやユキの代理をしてるっていうかさあ、まあ、そんな気分なんだよ)
サラが説明しにくそうに、そう訴えてくる。なるほど分からないでもない。ゲームや映画などと違い、自分達はどの武器でも扱えるため、ただのスタイル決めでしかないと思っていた武器が、意外と気に入ってるらしい。
(では、どういう風に戦うんだ?あまり変なことは認められないぞ)
(実は空中の敵に対してマリーと考えていた必殺技?みたいなもんがあってさ。それを試したいんだ。方法は見てのお楽しみって事で、どうかな?もちろん自分たちの武器を生かすし、危険な事はやらないぜ)
(まあ……。よかろう)
サラの必死のお願い攻勢に、コウはやらせてみることにした。加速剤を使用しているので、ここまでの会話は瞬きほどの間である。
(恩に着るぜ。じゃあマリー、前に言っていた技を披露しようぜ)
(ええ、本当にやるんですの? お酒に酔ってた時はともかく、しらふで改めて考えるとどうかと思うんですけど……)
今まで、黙ってたマリーがやる気のない返事をする。ちょっと待て、しらふじゃ恥ずかしいってどんな攻撃をするんだ?
(グダグダ言わない、はい、この上に乗る)
そう言ってサラは馬から降りて大剣を水平に構える。そしてその上に仕方なさそうにフル装備のマリーが乗る。
「行くぜ、おりゃーッ!!」
思考通信でなくサラが雄たけびを上げて剣をふるうと、マリーが一直線にロック鳥へ向かって飛んでいく。
ロック鳥は久々に見つけた大きな馬にご機嫌だった。この辺りでは見たこともないような大きな馬だ。それが2頭もいる。良い獲物だった。
馬の上に乗っていた小さな生物が、降りたかと思うと、突然その一体が自分より遥かに速い速度で飛んでくる。気付いた時には片足に激痛が走り、とんでもない重さのものが足に絡まっている。ロック鳥は高度を上げようとしたが、上がるどころか、落ちるスピードがどんどん加速していく。今まで経験したことが無い事態だった。
そのまま地面に叩き付けられるように落下すると、今度は背中に信じられない重さのものが押し付けられて身動きが取れなくなった。朦朧とした意識で最後に目にしたのは自分の頭に振り下ろされる光る何かだった。
マリーが落下させたロック鳥の上に盾を置いて押さえつけ、そこに頭めがけて、サラが大剣を振り下ろした。大剣は頭を切り裂き、根元まで頭に突き刺さっている。落下だけでも結構なダメージを負っていたようだが、これで完全にとどめが刺されたようである。
「どうかな?あたい達の合わせ技、フォーリンダウンスラッシュ!」
サラが自慢げに胸を反らせた。
「悪いがこれはないな。これなら、海でやったように鉄球でも投げた方がましだ」
コウが呆れたように不合格を告げた。
「ですね。技と呼べる工夫も特になかったですし」
「必殺技というよりは宴会芸、ですわよね」
ユキとマリーも同意見だ。
自分の考えた技を他の全員からダメ出しされて、サラは涙目でガックリと肩を落とした。
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