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「護衛依頼盗賊退治漫才」慶太・令太

慶太・令太の短編です。よろしくお願いいたします。

彼らの名前は慶太けいた令太れいた

異世界に転移させられた、漫才師である。

なお、転生前は退魔師もやっていたが、それは別の短編を見て頂きたい。


異世界では漫才師らしく、ボケとツッコミを利用して冒険者家業をしている。



商人「君たちが護衛をしてくれるパーティか?」

慶太「そや」

令太「よろしゅう、お願いします」

商人「ほう、その言葉づかい、西方の国、ア・ラヴィアン聖国の出身かな?」

慶太「いやいや」

令太「関西や」

商人「カン・サイとは聞いたことのない国だな」

慶太「ま、ともかく、泥船に乗った気で」

令太「大船や!沈むぞ!」

商人「ははは、冗談がお好きなようですな。では、出発しましょうか」


目的の町まで馬車で約2日。

盗賊が出ることもあるが、冒険者が護衛している場合は、無理に襲ってこない。

そういうこともあり、普通は5人くらいのパーティを護衛に雇うものだ。


しかし慶太と令太は二人だけ。

だが、すでにあまたの依頼をこなしてCランクになっていたため、この依頼を二人でも受けることが出来たのだ。


慶太「ヒマやな」

令太「そやな」

慶太「あの辺から盗賊がうわっと出てこんかな?」

令太「結構深い茂みやからな」

慶太「そや。隠れるにはもってこいやろ?」

令太「よし、警戒しよか」


慶太「待て待て、ここは先手必勝や」

令太「まだおるかどうかもわからんのに、なにすんや?」

慶太「あそこにファイアーボールぶちこんで、いてこましたる」

令太「お前、ファイアーボールどころか、魔法まったく使えんやないか」

慶太「さっき、巻物スクロールゲットしてきたんや」

令太「いつの間に?」

慶太「トイレに行くって言って別れた時や」

令太「何でわざわざ隠れて買いに行くねん!」

慶太「いや、トイレに紙が無くってな」

令太「そりゃ一大事や」

慶太「すまん、誰か紙をくれって言ったら、隣の個室からかつらが飛んできてな」

令太「それは紙やなくて髪の毛やないか!」

慶太「これは違うから、くるくる巻いてある紙をくれって頼んだら、これが来たんや」

慶太は真っ黒な巨大スチールウールのようなかつらを見せる。

令太「巻いてるカミって、アフロやないかい!」

慶太「他にも色々間違われてな、やっと来たのがこの魔法の巻物や」

令太「確かに巻物は巻いてある紙やけどな」


慶太「ともあれ、これを使って魔法を叩きこむで!」

令太「あかん!あんな深い茂みにファイアーボール打ち込んだら大火事になるわ」

慶太「大丈夫や!巻物使用リリース!」


すると巻物から白くて丸い玉が飛び出して、茂みに向かって飛んでいった。


令太「なんや、ファイアーボールとちごたんか?」

慶太「巻物の『ファイアー』の部分やぶってケツ拭いたで、ボールだけ飛んでいったんやわ」

令太「何で半分だけで呪文出るんや!普通使えへんくなるやろ!」

慶太「使えたからええやないかい。それよりボールが茂みに飛び込むで」


「あいたっ!」

「おかしらっ!」


慶太「誰かおったな」

令太「そやな」

慶太「出てこい!出てこないと、もう一つ魔法をブチ込むで!」

令太「まだ巻物持っとったんかい」

慶太「無いけど、ここは脅すんや」

令太「お前、たまに頭ええな」

慶太「たまには余計や」


すると、10人の盗賊が茂みから現れた。


盗賊お頭「おらあ!殺せ!」

盗賊部下1「おらあ!奪え!」

慶太「おらあ!笑え!」

令太「真似んでええわ!」


びしっ!


令太は慶太にツッコミを行い、バフを付ける。

速度上昇、防御力強化のバフだ。


慶太「おらおら行くで!」

盗賊お頭「素手だと?格闘家か?」

慶太「我が必殺のラジオ体操を見せてやる!」

令太「それ、絶対必殺とちゃうやろ!だいたいそんなんで戦えるわけが…」


慶太「1、2、3~4!」


慶太は素早く相手の懐に潜り込むと、ラジオ体操の動きから繰り出される鋭いチョップやパンチで相手を翻弄し、ぶちのめしていく。


令太「戦えるんかいっ!」

令太は飛んできた矢をツッコミを利用した回し受けで弾き飛ばす。


慶太「あかん!曲が終わってもた!」

令太「次があるやろ!」

慶太「ラジオ体操の第2は覚えとらへん!」

令太「忘れるくらいなら使うな!そや、お前、柔道もやってたやろ」

慶太「そやった。一応黄帯やったわ」

令太「黄帯って微妙やな」


慶太「習い始めてすぐやめたけど、最近帯を見てみたら黄色くなっとたんや」

令太「それは黄ばみや!実質白帯やないかい!」

慶太「あと数年したら緑帯になるそうやで」

令太「それはカビや!洗え!」

令太がツッコミをしながら相手の攻撃を捌く。


しかし、盗賊のネタではないから、相手に対して大した攻撃力は出せない。


慶太「ところで盗賊って英語でなんて言うか知っとるか?」

ようやくネタができたのか、慶太が話を振り始める。

令太「ん?なんやったかな?」

シーフとかバンデッドだったような気がするが、ここはネタを膨らませるためにあえて知らないふりをする。

慶太「いろいろあるんや。まず、トーフ」

令太「そんなヘルシーそうな盗賊おるか!」

令太のツッコミが盗賊Bの胸元に命中し、


ビシッ!

クリティカル!


盗賊B「ぐぎゃああ!!」

吹っ飛んでピクリとも動かなくなる盗賊B。

敵に合ったネタのツッコミ時にはクリティカルが発生する。

ツッコミのクリティカルは相手を問わず、防御無視の大ダメージを与えることが出来るのだ。


盗賊C「大丈夫か?!くそっ、素手でなんて威力だ!」

盗賊D「まとめてかかれ!」


慶太「そや、ビーフや!」

令太「そうそう、盗賊はやっぱり国産ビーフが一番やなって、ってそれは牛肉やろ!」


バシバシバシバシッ!!

クリティカル!


盗賊C~F「「「「ぎゃあああああ!!」」」」


令太のノリツッこみは範囲攻撃になる。

しかも盗賊ネタだから、全てクリティカルだ。


慶太「思い出したシーフや!山賊がバンデット、海賊がパイレーツ!」

令太「よう知っとるやないか」

慶太「海賊退治は任せてくれ」

令太「すごい自信やな」

慶太「泥船に乗ったつもりで任せとけ」


コンボ発生。


前に言っておいた伏線を回収するとコンボして、大ダメージを与えられるようになるのだ!!


令太「退治する前にこっちが沈むやろ!もうええわ!!」


ズビシッ!!!


盗賊のお頭にツッコミが命中!

しかも『もうええわ』はボスに対して絶大な威力を発揮する!


超クリティカル!


盗賊お頭「ぎゃああああああっ!!!」

残りの盗賊「おかしらー!!!」


慶太・令太「「ありがとうございましたー」」


どんな状況でも、『もうええわ』のあとはこれを言う決まりだ。

そして慶太のバフも解除される。

しかしそこは強気で残りの相手を脅しにかかる。


令太「さて、降伏してもらおうか」

慶太「生き地獄と死に天国とどっちがええ?」

令太「なんや死に天国って?」

慶太「死んだら天国行くやろ?」

令太「こいつらは死んだら地獄行きやろ?」

慶太「ほな生き天国見せたるで!」

令太「ただ幸せなだけやないかいっ!」


ズビシッ!


令太のツッコミが慶太に命中し、再度バフをかける。

今回は攻撃力強化と防御力強化だ。


慶太「おとなしくお縄に付かんかったら、こうやで!」

慶太は足元に落ちていた丸い石を拾うと、力を込めた。


パキーン!


薄いガラスが割れるような音がして、石は砕けて光の粒になった。


盗賊たち「「ひえええええ!降伏します!!」」


令太「ネタになっていない石を木端微塵に砕くとか、そんなにバフ強かったか?」

慶太「いや、あれはさっき使った魔法の『ボール』や」

令太「なんやて?」

慶太「命中した後、まだ落ちとったからな。つかんだら効果時間が切れたのか砕けて消えたわ」

令太「ファイアーじゃないボールやのに、すげえ役に立っとるやないか」

慶太「俺今度から、巻物で尻拭くわ」

令太「高くつくからやらんでええわ!」


びしっ


次の戦闘に備えてネタを振っておく。


漫才師はいついかなる時でも臨戦態勢であるべきなのだ。

なのだ?

なのだよな?


異世界だから、それでいいのである。


読んでいただき、ありがとうございました。

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