6.魔王を倒しました…
お母様の盛大な勘違いが発覚して1週間。
お父様はまだ一度も帰ってきていないので、誤解を解けてはいませんが、お母様のリハビリは順調に進んでいます!
「アイリス!このお花、とっても綺麗よ!」
約6年引きこもっていたお母様が外に出て笑顔を見せていると思うと、感慨深いものがありますねぇ。
あぁ、最初は辛かった…。
「お母様!おはようございます!一緒に散歩をしませんか?」
誤解を解いた次の日、私はお母様の食事量が半端なく少ないとの情報をお母様の専属侍女さんに貰ったので、朝一で散歩に誘いました。
「えぇ、そうね。外に行くのなんて、久しぶりだわ。」
そう言ってはにかみながら微笑むお母様。
それを聞いたお母様の専属侍女、マリッサさんは涙ぐんでいました。
ここまでは良かったんです。ここまでは…
「あと少しで庭に…お母様?」
あれれ?隣に居たはずなお母様がいません。
後ろを振り返ると…あの床に這いつくばってる不審者は誰なんでしょう。今日のお母様のドレスと似ている服を着てるなぁ。
「…」
マリッサさんが首を横に振っています。
お母様…
ネロさん、そんな顔をしちゃいけません。
まるで地球外生物体に出会ってしまったかのような表現してるよ。
気持ちは分かりますけどね。だってまだ外にすらたどり着いてないよ?
…仕方ない。
お母様の所まで戻ってみよう。ドッキリだと期待して!
「ハァ、ハァ、ハァ。アイリス、貴方、歩くのはやい、の…ね」
よ!名女優!
…いやいやいや、冗談でしょう。めっちゃ息切れてますよ?もうフルマラソン走りきりました!って感じです。
6年間、強し…!
てなわけで、最初はお母様の体力のなさに完敗しました。
…が!今では庭にたどり着けるようになったのです!涙が出そうです。あっ、マリッサさん泣いてる。
お母様の病的に白かった肌も、外に出たことで健康的になってきました。そして食事はですね…私も活躍してます!実は最近の食事で出たトマトパスタ以外は、全て味が微妙だったのです。
なんでトマトパスタだけ!?
あれは本気で驚きました。
そこで役に立ったのが前世の知識です!
私、結構料理は得意だったんです。学生時代に嫁に行くときのために練習したんです。使わなかったけど!!
けど無駄ではなかったのです。
あの日々はこの世界のためにあったのです…!!
そうして美味しくなった食事をお母様も食べてくれています。「どこでこれを!?」と料理長に詰め寄られましたが、頭に浮かびましたとだけ言ったいます。立場が上でよかったぁ…。
お母様は元の美貌を取り戻しつつあります。
髪には艶も出てきたし、だいぶお肉も付いてきました。これは順調っていえるでしょ!
お母様のフラグ回避は大体かたがつきました。後はお父様が帰るのを待つのみです。
そして私は遂に魔法に手を付けました!
周りに魔力持ちの方がいなかったので、フォルティーニ邸の書庫にある魔法関係の本を漁っています。あっ、文字は普通に読めましたよ。これぞ転生オプション!
「ネロ、精霊召喚の文献がどこにあるか分かりますか?」
書庫が大きすぎて、全く目的の本が見つかりません。もはや図書館です、ここは。
「はい。こちらでございます。」
そうだよね、分からないよね…て、えぇ!?今はいっていったよね!?
ネロさんがそれらしき本を持ってきてくれました。私の努力…。
まぁけど、とっても嬉しいです!やっと精霊召喚出来ます!多分!
「ありがとう、ネロ!」
「…いえ、これが仕事ですから。」
…!?
ネロさんが笑いましたよ!!え?めっちゃ可愛いです!やっぱり天使!!
…
おっと、やっぱり魔法陣が必要みたいですね。
うーんと…覚えました!ついでに簡単な詠唱もあったので覚えました!いやぁ、記憶力チート様様ですね!
「お嬢様、何をしていらっしゃるのですか?」
庭に出て土に魔法陣を書いていると、ネロにこんな質問をされたので、私は普通に答えました。
「精霊召喚のための魔法陣をかいています。」
「そうゆうことでは…まさか精霊召喚を行うつもりですか?」
ネロさんがじっとこちらをみてたずねてきます。
そりゃあ描いたんだから使うでしょう。ネロさんどうしちゃったんですかね。
「はい。」
「…お嬢様、一般的には精霊召喚とは魔力を持つ者に師事して行うものです。」
まぁそうだよね。
けど私は一般的って言葉がないより合わないし、絶対に魔力持ちなんだよな。測ってはないけど、ゲームでアイリスが魔法使ってたんで確証があります。
「大丈夫ですよ。怪我はしないと思いますから。」
なんせ召喚するだけですし、安全です。
ネロは諦めたような顔をしています。ネロさんは理解力がいいですね。止めても無駄と判断したのでしょう。正解です!
そんなこと言ってるうちに魔法陣が完成しました!よし!あとは詠唱ですね。
「外界の守護者たる精霊よ。我の召喚に応えるなら姿をみせよ!」
うーん、なんか上からですよね。個人的には嫌いです。
あっ、魔法陣が輝いてきました。楽しみです!
光がおさまりそこにいたのは…
白い狼と黒い狼でした。
可愛いです。すごくもふりたい。けどさ…なんか動物出てきちゃったよ?
「え、えぇと、森に返せばいいのかなぁ…?」
「な…!?我は高位精霊だぞ!?」
「捨てないでぇ!」
二匹の狼が慌てたように言いました。
…この子達、精霊なんだ。だって喋ったもんね。
「あっと、2人は精霊なの?」
黒い方の狼が胸?を張って自信満々に答えます
「そうであるぞ!我は高位精霊だ!しかも光以外の全属性もちだ!」
おぉ、なんだかすごい子みたいです。
続いて白い方の狼がゆるゆるっとした感じで言います。
「僕はね、闇以外の全属性だよぉ〜。僕も高位精霊だから、役に立てると思うんだぁ!」
これで私全属性の魔法使えるって判明しましたよ。しかも高位精霊って2人とも言ってた気がする…。
あぁ!それよりもふりたい!!
「あのさ…触ってもいいかな?」
一応確認はとりますよ。白い方の子が「いいよぉ〜」と言ってくれたので飛びつきます。
「ふわふわ!かわいい!かわいい!」
毛並みが最高です!ツヤツヤ、ふわふわですよ!うーん、可愛い!!
「ふぁん!」
あっ、白い子から変な声が出ました。
私、動物なぜるの大の得意なんです。前世ではゴットハンドと称されたくらいですから!
…これ以上なぜると立てなくなりそうなので、ここら辺でやめておきましょう。
「2人の名前は?」
「アイリスが付けろ。」
「あ!僕もねぇ!」
名前ないんですね。確かに名前がないのは不便です。
「じゃあシロとクロで。」
単純過ぎたかな?
けど結構可愛いと思うんです。ん?なんか2人の体が光ってます。なんか大きくなりましたよ?
私の顔から疑問を読み取ったのか、クロが答えてくれました。
「アイリスと契約を交わしたからな。最高位精霊になったのだ。」
はい?契約?あっ、もしかして名前付けたのがですか!?…まぁ嬉しそうだしいっかぁ。
「そういえばどうして2人は狼なの?」
やっぱり精霊といえば人型ですよね。
「うーんとねぇ、アイリスが好きそうな器に憑依してるんだぁ。だから2人とも同じなんじゃないかなぁ。」
なるほど。
確かに私は狼大好きです。だって可愛いじゃないか。じゃあこの狼は、死体?…よし、忘れよう!
シロが人型にもなれるよぉ、と言って超絶イケメンに変身しました。癖っ毛のふわふわ髪で可愛い系男子です。これが本来の姿らしいです。
あっ、クロも変身しました。
こっちも超絶イケメンです。俺様っぽい感じが滲み出しています。性格のまんまだなぁ。
けど私は狼の方が好きです。
2人には戻ってもらいました。
ネロさんの顔が引き攣っています。そうだよね、私も思うよ。
最高位精霊×2+全属性とか!チート過ぎるよね!!
…ちなみに、この後お母様にクロとシロを紹介したらぶっ倒れられました。あ!運ぶのはとっても楽をしましたよ。風魔法でちょちょいのちょいです!詠唱?そんなものは私には必要ないそうです。思い浮かべてシロかクロかに頼むだけで魔法が発動します。
これも契約の恩恵&私の潜在魔力量の賜物らしいです!魔力量もチートなのが判明しましたね!
…何故こうなる!?
ご覧頂きありがとうございました!