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5.魔王様は箱入り

「アイリス…私は、勘違いをしてしまったのです。」



 お母様はゆっくりと息を整えてから、静かに声を紡いだ。



「貴方も、お父様がフォルティーニ公爵家に婿入りで入ってきたことは知っていますね?」


「はい。」



 そうなのだ。我が家は貴族としては珍しく、フォルティーニ公爵家の一人娘だった母の元に、伯爵家の三男だった父が婿入りして来たのだ。



「私とお父様は幼馴染でした。だからこそ、私は勘違いしてしまったのです。」



 お母様が物憂げな表情になります。

 幼馴染…それは初耳ですね。いいんじゃないですか?幼馴染。ロマンがあります!



「あの人は私のことを幼馴染として大切にしていたのであって、女として愛したわけではなかった。なのに私は…一人の女として愛されていると思ってしまったのです。」



 おっと?

 雲行きが怪しくなって来ましたね。これって6歳児に聞かせていい内容なのでしょうか…?いやまぁ精神年齢28だけど!



「私のお父様はあの人が文官になったと聞いて、私とあの人の婚約を許してくれました。私は、本当ならもっと格式の高い身分の方と結婚するはずでしたの。けれど私はあの人を愛していますし、相思相愛だと思っていたものですから、あの人と結婚したいと駄々をこねたのです。そしてお父様は一つ条件を出しましたわ。自らの力で這い上がってみせろ、と。」



 なるほど。それが初めの文官に繋がるんですね。あれ?お父様頑張ったてことだよね?…相思相愛じゃない?



「そしてあの人は見事文官になってみせました。初めは…とても幸せでした。貴方が産まれて、2人で笑い合うことも出来ました。ですが、幸せはそこで終わりでした…。」



 なぜでしょうか?

 え?これでお母様のこと好きじゃないとか。あり得なくないですか?だってお母様と結婚するために努力したんでしょう?



「あの人には、本当に愛する人が別に居ると言われたのです…。だからなかなか帰ってこないのだと。そのお方はとても可愛らしく、伯爵家のご令嬢ですの。私が我儘を言わなければ、彼と私は結ばれていたのに…と、そう言われたのです…!彼は親に言われて嫌々文官になったのだと…!」


「私は、お二人の仲を引き裂いたのです…!私には、あの人の名前を呼ぶ権利も、貴方に会う権利も、何もないのです…!!」



 …えーと、突っ込みどころ満載ですよね。これ。

 まず誰かは知らないけど伯爵令嬢、絶対一方的にお父様好きだろ。お父様も見目麗しいらしいので、それが理由かな。

 そしてお母様。

 純粋すぎない?箱入り娘だったんだろうなぁ。貴族の令嬢らしいしたたかさに騙されるとか。これは分かるでしょう…。そしてお父様のヘタレ。はっきり伝えないから誤解が生じるんだよ。実力で這い上がった分、仕事が沢山回って来たんでしょうね。



 まぁ何にせよお母様の盛大な勘違いだよ。

 きっとお父様はお母様を愛してる。



「お母様、嫌々でなれるほど文官試験は甘くありませんよ。相当な努力が必要なはずです。」


「…ですが」



 遠回しに伝えても駄目みたいですね。

 お母様は小さく首を振りました。



「お母様との結婚式でのお父様はどんな表情でしたか?私が産まれたときは?お父様はどんな表情をしていましたか?」


「…!」



 えぇ、えぇ。とっても幸せそうな顔をしていたでしょうね。そしてそれが幼馴染でもあるお母様にも分かるのでしょう。



「そのご令嬢は、お父様のことが好きだったのでしょう。ですが…お父様はお母様を選んだのですよ。相当な苦労すると分かっていても、お母様と共にある未来を望んだのです。それが…愛以外の何と言えるのでしょうか?」


「…っ!!」



 最後にお母様の目を見て微笑むと、お母様は涙腺が爆発したかのように泣き始めました。

 やっぱり素直な方のようです。

 すぐに私の言ったことを理解して受け入れてくれました。まぁ、貴族社会を生き抜くには純粋すぎたんでしょうね。きっと平民に産まれていればとっても幸せになれてましたよ!



 お母様はそれからしばらく泣き続けました。

 途中でお母様の専属侍女さんが、見計らったかのようなタイミングで入ってきました。実際見計らっていたのかも知れませんが。



「…アイリス、ありがとう。愛しているわ。」



 お母様は顔を上げると花のように笑いました。



 お母様、可愛い…!!

 天使はネロと被りますが、まさに天使!!フォルティーニ公爵家には天使が2人いるようです。



 私が照れ隠しに「あ」の三連ちゃんだ、とか思ったのは秘密です…。





ご覧頂きありがとうございました!

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