4.魔王様は夜行性
今回ちょっと短いです。
魔王城に乗り込むぞ!
…と意気込んだのはいいんですか、またもや扉の前で右往左往しております。
え?今回は私のせいじゃないよ?
だってさー
「お母様、お母様。入ってもよろしいでしょうか?」
少し強めのノックと共に声をかけますが、全くの無反応。これは…拒否されてるのかな?
いや、入っちゃえば?って思うかも知れませんが、私お人好し引きずってるんで…!無理矢理とかちょーっときついかなぁ、なんて…。
分かってます。ただビビってるだけです。
だって怖いじゃないですか!開けた瞬間泣き叫ばれたりしたら、お母様を不審者をみる目でみちゃいそうです!
もういいや、勝手に入っちゃおう。
「…失礼します。」
静かに扉を開ける。
お母様は…あ、ベットですかね。布団がモコっとしています。お母様の専属侍女さんはどこにいらっしゃるのかな…。
「お母様、勝手に入って申し訳ありません。ですが私、お花を摘んできたんです!」
まぁボブさんの技量で摘んだというよりは、超豪華な花束とかしてるけど。
あ、全然泣き叫ばれたりしないなぁ。良かった良かった。
「お母様が庭の風景を想像出来るようにと思って、色々な種類の花を使ったんです!花瓶にいけておきますから、後でみて下さいね!」
完全なる無反応です。
…なんかスースーきこえる。え?まさか…
「…」
寝てますね。
うわぁ、私恥ずかしい。一人で喋ってたってことじゃないですか!あ、この時間に寝てるってことはお母様は夜行性なのかも知れませんね!きっと活動時間が違うので会わなかったのです!…うん、そんなわけないよね。普通に引きこもってるからだよね。
「お母様、お母様」
お母様の肩を軽く揺すってみます。
うーん、全然起きそうにないですねぇ。ちょっと強めにいきましょう。
「お母様!お母様!」
思いっきり揺らすとお母様がとび起きました。
思いっきり揺らすなよ?いやぁ、随分眠りが深そうだったので、つい!
「おはようございます、お母様。」
初めてみるお母様は、陽に当たっていないのと栄養不足でしょうか?で青白く、ガリガリですがそれでも美しい容姿をしていらっしゃいます。髪の色も目の色も違いますが、この母にしてこの子あり!といった感じです。
「アイ、リス…?アイリス…なの?」
「はい。」
お母様は震える声で私の名を呼びます。
私が返事をすると、口を押さえて俯いてしまいました。…姿をみて吐きそう、とか?え?流石にショックなんですが…。
お母様は顔全体を手で覆い泣き出してしまいました。えぇ…この泣き方は予想外。静かに泣かれるとかえって反応に困るんだよね。どうしたもんか…。
「お母様…?」
「私は、私は…!!」
お母様は俯いて泣き続けています。
あぁ、なんだか迷子の子供のようにみえる。
だからなのか、私はお母様の顔を覆う手をゆっくりととってしまいました。お母様が私が嫌で泣いているなら逆効果なのに。
「お母様。ゆっくりで大丈夫です。急がなくても、ちゃんと待っています。」
そう、お母様はなぜか焦っているように見えたのです。気持ちが伝わるように、握ったお母様の手に少し力を込めます。
するとお母様は一瞬肩をビクッと上げたものの、顔を上げました。
そこで初めてお母様と目が合う。
そしてその瞳をみたとき、なぜだか私はとても安心したのです。もう大丈夫、と。
だってお母様の瞳には、少しの困惑と焦燥、そしてそれを覆い隠すくらいの深い愛情がみえたから。
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