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3.魔王城の関門

 くっ…!

 やっとここまでたどり着いた…!



「お嬢様!お戻りください!」



 ここまで来て引き返せるわけないだろう?

 私は絶対に目的を果たす!魔王城へ決死の思いでたどり着いたんだ!

 真の平和のために、私は戦う…!!



「お嬢様!そちらは奥様の自室でございます!」



 ちぇー、ネロさん、もうちょっと乗ってよー。

 いやまぁ勝手に遊んでたんだけどね。けどあながち間違ってないのかもしれない。ここは魔王城だ。そして私は勇者。ネロは…お供?あれ?なんか桃○郎になっちゃった?えーと、ならお母様は鬼か。…いや、格好悪いわ!なんだ銀髪の桃○郎って!なんで桃○郎なんだよ、私!



 あぁ!こんなこと考えてる場合じゃなかった!

 私は今、お母様の自室の前に居ます。そして扉の前で右往左往しております。来たはいいけど、突撃作戦考えてなかった…!!



 突撃なんだからそのまま入れよ、と思うかもしれない。だがお母様は、何年も引きこもっている強者なのだ。急に何の用もなく入ったら、一瞬で負ける…!そんな気がするのです。

 駄々っ子作戦?んー、お母様相手にはリスクが大き過ぎますね。

 どうしたものか…



「…!」



 ここで私に神の啓示が舞い降りました。

 作戦決定です!



「ネロ、お母様はずっと外に出て居ないのですよね?」


「はい。」



 よし!予想通りです!

 ではまずネロから落としていきます。



「それなら、お花を摘んでお母様のお部屋に行きたいです。」


「それは…」



 ネロが困った顔をします。

 ごめんなさい。けどネロさんの許可が出ないことにはどうしようもないので辞めません。いや、本当は私の方が立場は上だから、許可なんて要らないんだよ?けどさぁ、お世話してもらってるんだし…。あぁ、前世のお人好し引きずってますね、これ。



「大丈夫です。私だって…ちゃんと分かっています。お母様に拒絶されるのも、覚悟の上です。私はただ…お母様の姿が少しでもみられればいいのです。」



 そう言って微笑んで見せると、ネロが唇を噛み締めました。

 ネロは本当にいい人です。まだ少ししか一緒にいた時間はないけど、ネロの優しさは細かな気配りからも伝わってきます。今こうしてお母様の元へ行くのを渋るのも、私が傷つくのを案じてなんでしょう。だからそこに漬け込みます。



「お母様に少しでも外の世界と繋がりを持って欲しいんです。それに…何がお母様の希望を持つきっかけになるか分かりませんからね!出来る事はなんでもしたいのです。」



「…ですが」



 ネロは強情です。

 だけどあと一押しかな?



「ネロ…だめ?」



 決まりました!

 首を斜め45度に傾け、上目遣いをするのがポイントです。相手の袖の裾などを軽く引っ張るとなお良し。



「…!!」



 しかも私は普段は敬語ですから、威力は倍以上です!この技は本当に破壊力が強いですよ。私も4歳の甥にやられてノックアウトした経験があります。



「分かりました。ただし私も付いていきます。よろしいですね?」


「はい!もちろんです!ありがとう、ネロ!」



 ちょっとタメ口を混ぜてみました。

 あっ、ネロさんキュンと来たな、これ。にしてもネロさんはどうもあざと可愛いに弱いみたいです。前にも上目遣いに屈してたよね。






 と、ゆうわけで庭に来ました。

 流石公爵家。主人達の家庭が内部崩壊していても、庭はとても綺麗です!あと、とっても大きい。これも庭師さんの努力の賜物ですね!庭師さん、グッチョブ!



 ですがここで一つ問題があります。

 私、美術の成績終わってたんだよなぁ…。他の教科はそこそこなのに、何故か美術だけは全くダメだった。何を描いても、「怪物…?」と聞かれた苦い思い出がある。こればっかりは美的感覚の問題だから、転生しても中身が私なことにはどうしようもない。



 うーん、これはやばいですねぇ。

 やっぱりこれが最大の関門です。なぜ花束がおぞましいものに見えてしまうんでしょう…。これは自主規制します。あ、ネロさん引かないで。



「お嬢様、庭師のボブの元へ行きましょう。」



 庭師さんに勇者のパーティーに加わって貰うんですね!ネロさん、ナイスアイデアです!



「花束、ですねぇ!なにかご要望はございますかぁ?」



 うん、庭師さんキャラ濃い。

 喋り方独特だなぁ。なんで小さい文字の前にアクセントがつくんだろう。しかも男の人ですよ。



「えと、なるべく沢山の種類の花を使って欲しいです。」


「なるほぉど!ではですねぇー」



 なんだ「なるほぉど」って。

 なんかピエロっぽいな、この人。けど名前はボブなんだよね。ミスマッチだなぁ。

 …って!ボブさん優秀だな!

 もう花束出来てる!しかも色々な種類の花を使ったから、ごちゃごちゃしやすいはずなのに綺麗に纏まってます。ボブさんのセンス、恐るべし!



「完璧です!ありがとうございます、ボブさん。」



 うん、これは大満足です!



「…いぃえ!私はお嬢様がにわぁに出てきてくださって安心しましたよぉ。」



 先ほどまでのハイテンションから、落ち着いた声音になりましたよ。

 これは本当に心配をかけていたみたいですね。

 なにせ、最近高熱で倒れましたから。ボブさん、いい人のようです。



「これからはちょくちょく庭に出て来ると思います。そのときは、花のとこなどを教えてくださいね!」



 これは本当です。

 だってずーっと邸の中に居たら、病気になります。実はお母様も散歩から始められたらと思っているのです!…ん?なんか邸の使用人さん、いい人率高くない?アイリスって幼少期孤独設定だよね…?まぁいいか!

 あっ、けどキャラが濃すぎて精神的なダメージが大きいですね。上目遣いとかも精神年齢が三十路近い私にはきついものがあるんですよ!ですが目的を果たすためなら耐えてみせます…!!







 はい。

 てなわけで魔王城の扉の前に戻ってきました。



 さぁ行こう!

 引きこもり魔王、もといお母様の元へ!!















ご覧頂きありがとうございました!

次回は魔王城に突入して行きます!

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