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11.遂に...

 お父様とお母様が仲直りしてからはや2週間。

 私はお父様とお母様を見守るという最重要ミッションに付いており、日々お二人のお熱い様子を見守っています。


「...はぁー」


 そう、有り体にいえば暇です。

 それも、とてもとても暇なのです。本気でやることがないとはこのことですね。やぁー、暇なのは素晴らしいことなのですがね、暇すぎて...。


「アイリス、勉学にでも励んではどうだ?近頃は嬉しそうに家庭教師の元へ行っていたであろう?」


 勉強かぁ、いや、そりゃ最初は未来のためにしっかりやろうって思ったよ?思ったんですけどね...


「...簡単過ぎるんだよなぁ」


「ふふ、アイリスにとっては確かに簡単過ぎるかもねぇー。元いた世界は、随分文明が進んでいるみたいだしー。」


 そうなのだ。

 シロの言った通り、元の世界とこの世界では文明の発達レベルが違いすぎて、学ぶことが正直ないのです。本来なら、薬草学は何も知らないので1から学ぶはずなのですが、そこはアイリスのチート能力が遺憾無く発揮され、図鑑などなどを見ただけで丸暗記してしまったのです。

 魔術もチート能力ですることないですし、数学なんかは小学生かっ!ってレベルです。

 もう家庭教師の方々は、「神よ...!」とかいって拝んで来ますし、もう教わるとはなんぞやら状態なのです。


「シロー、クロー」


 てなわけで、私は2人をモフることに命を賭しているわけです。

 んー、幸せです。

 まぁ、幸せっちゃ幸せなんです、こんな日々も。けど、どうしても慣れないんですよね、この幸せが。こればっかりは私の性分なのでどうしようもないです。


「む?見慣れぬ馬車が来たぞ。随分と豪奢なようだ。」


「あら、お父様の来客かなぁ。」


 お父様は優秀な文官ですから、今は屋敷で仕事をしている分、お客様が多いのです。


「...なにか起きないかなぁ。」


 この発言をたった数分後に後悔することとなるとは、このときの私は知る由もなかったのです。



 ーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー



「お嬢様、お嬢様に来客がいらしています。準備をお願い致します。」


 ネロさんが私に一言そう告げました。

 へ?私に来客?おっかしーなぁ、アイリスに友達はいないはずだよね?


「お相手の方はどなたですか?」


「ヴァルザート公爵家の長子で在られる、エウロス様でございます。」


 え?公爵家?

 そりゃあ随分と大物ですねぇ。しかもヴァルザート?なーんか聞いたことある気がします。まぁ、同じ公爵家だし、そんなこともあるかぁ。


「それではお待たせする訳には行きませんね。急いで準備しましょう。」


 どれくらいで準備が終わったか?それはもう光の速さでしたよ、比喩ではなく。着替えもしたのに、家の侍女の方々は優秀ですねぇ...。


 まぁ、なんの断りもない、急な来訪なのでそんなに急ぐこともないんですけどね。貴族社会じゃ完全なマナー違反です。待たせるのは悪いので急ぎますけどね!


「大変お待たせいたしました。フォルティー二公爵家が長女、アイリス・フォルティー二にでございます。」


 しっかりと淑女の礼をとります。この角度といい、我ながら完璧です!


「ヴァルザート公爵家が長子、ロイオスと申します。本日は急な来訪を受け入れて下さり、感謝申し上げます。」


 ほー、私と同じ6歳と聞いていたけれど、しっかりしていますね。小学一年生とは思えませんよ!


「ふふ、この急な来訪、わたくしにどのようなご要件でしょうか?」


 あくまで笑顔で、チクッと嫌味を言います。貴族社会の嗜みです!


『これは嫌味なのか...?』


 はい、クロさん黙る。

 てか最近考えてること漏れてること多くないですか!?


『それはねぇ、繋がりが強くなってきたってことだよぉー。』


 はぁー、なるほど。そういう仕組みなんですね。

 ...って、今はそんなことではなく!


「はい、近頃神童と噂のフォルティー二公爵令嬢様にお話をお伺いしたく、参上した次第です。」


 は?神童?

 そこで私は初めて目の前のヴァルザート公爵子息の顔をはっきり見ました。


「ーっ!?」


 深い青の髪、明らかに他とは違う整った顔立ち、そして6歳にして漂う知的な雰囲気。

 ゲームのような陰った雰囲気はないものの、彼は紛れもなく「ゲコ恋」攻略対象で在らせる、ロイオス・ヴァルザートだ...!!

 え、え、嘘でしょう!?どうして今まで気づかなかったんでしょうか。あんなにやり込んだゲームなのに、攻略対象の名前が分からない時点で不思議に思ってましたが、まさか直接会うまで気づかないとは...!!

 おかげでなんの下準備もないよ...!!


 ロイオスの初期設定、えーと、確か彼は幼少期にーー


「秀才との呼び名が高い、ヴァルザート公爵子息様にそのように言って頂けるとは光栄でございます。」


 そう、彼は秀才と称えられていた。

 秀才、秀才かぁ。私が神童って呼ばれてるなら、どんな奴か見に来たって感じかなぁ...。


 まぁ、ここは当たり障りのない答えでいきます。攻略対象にはできる限り関わりたくないですし、はやくお帰りください。私はいいって言ってないですよー。

 ...おや、粘りますねぇ。

 笑顔でその場を動かないとは。無理に追い出すことも出来ませんし、どちらかが譲らない限り膠着状態が続きますね。もちろん私も譲るつもりは無いので、笑顔で応戦です。


「あら?アイリスちゃん?そんな所で固まってどうしたの?お庭にお茶の準備をしておきましたわ、そこでゆっくりお話でも。」


 オーマイガー!!

 ここで新手とは...!!お母様、本当に本当に本当に善意100パーセントの余計なことをして下さいましたね!?

 くそぅ、ロイオスのやつ、こっちをガン見して止まってやがる。ついでにお母様もニコニコとこっちを見ている...!!しかも嬉しそうだ...!!娘の初の友達(候補)だもんな...!!

 これは、誘わないわけにはいかない...よね?


『僕があれ、ぶっ飛ばそぉかぁ?』


 あれってロイオスのことだよね!?絶対だめ!ダメ絶対!暴力反対です!!


「...それでは、庭の方でお茶でもしながらいかがでしょうか?」


「喜んで。」


 ...くっそぉ!

 にこやかな顔しやがって...!


 お母様、今日だけは恨みます。


ありがとうございました!

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