クビカリサマ(裏)
「何だよこの馬鹿馬鹿しい話は!クビカリサマなんて、どうせどっかの頭のおかしい奴が考えた妄想だろ!」
ゴミの散らかった汚い部屋の中で、中年の男が言葉を漏らす。
ネットを巡回している最中に見つけた怖い話をつまらないと一蹴し、開いたページを閉じる。
隣の部屋から聞こえてくる夫婦喧嘩や外の騒がしい喧噪をBGMに、男はその後も不満を漏らし続けた。
「そもそもこんな話を信じる奴もどうかしてんじゃねえのか?」
自分以外に誰もいない部屋の中。
目の下に隈を浮かべた不健康そうな顔で、日常の不満を発散するかの様に騒ぎだす。
その後しばらくの間、顔の見えない人物への中傷やその人物に関わる人物への侮蔑を口にする。
そして、自分が如何に素晴らしい人物なのかという自画自賛を誰も聞いていない室内で語り続けていた。
「こんなつまらない話を読む位なら、また適当に他の奴を叩いた方が面白いな!よし、今度はこの話を書いた奴を吊るし上げるのも面白そうだな!」
醜悪な笑みを浮かべた男は、誰でも匿名で簡単に呟きを投稿出来るサイトにアクセスをし始めた。
普段から、ネット上で他者を貶す発言を連呼しているこの男。
相手を誹謗中傷したり、自身の批判に対する同調者が現れることに優越感を感じる性格をしていた。
そして、自分が批判されると逆上し、複数のアカウントを使って相手に嫌がらせを繰り返していた。
そして、文章を書き終えた男は再び醜悪な笑みを浮かべる。
「これで完成だ!この文章を投稿すれば、俺の貴重な時間を潰すようなつまらない話を書いた奴を酷い目に遭わせてやれるぞ!!」
そこには、耳障りのいい言葉を並べながらも、実際には相手を誹謗中傷するためだけに書かれた根も葉もない内容の文章が書かれていた。
そして、そのまま文章をサイトに投稿しようとした時、彼以外誰もいない筈の部屋にその声が響いた。
クビカルカ? ソレトモ、クビキルカ?
果たして彼は生き残れたのか……?
少なくとも、クビカリサマに遭った際に助かるために必要なおまじないを彼は自ら手放したのは確かです……。