夜光虫
決して夢を諦めたわけではなかった。
ふとした街の夜の明かりとか、前を行く3人組の会話とか、そういうどうでも良いものに気を取られてしまう。
2年前、大学に入学した時は何かが変わると思ってた。
勿論プラスの方向へ、彼女だって作れると思ってたし、友達だって当然。
思い返せば入学式の様子は昨日の朝の出来事だし、今日のことは変わらず今日のことだ。
時間の流れが速いのは日々を生きることに関心が薄いから。
今日はスマホの明かりだけが部屋を照らす。
蛍は光るが近くで見ると綺麗ではない。
自分が輝く何かの一部にならないように、一生懸命努力してるみたいだ。
望んではいない。
どれだけ照らしても前は見えない。