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1-6 七英傑

6話です


『七英傑の入場ですーーー』


  静かな会場にそのアナウンスが響き渡ると同時に、照明が落とされ、ステージにだけスポットライトが照らされる。

それと同タイミングで、会場にいる数千人の新入生が地震が起きたかの様な歓声を上げた。


「す、すげぇな……」

「そりゃあ、七英傑はこの魔導院の中でアイドル……英雄的な存在だからね〜」


間所もまた耳を塞ぎながら答えていた。それ程までに、この場にいる者達の歓声は大きく、そして七英傑の人気と憧れの大きさを表していた。


「ほら、出てきたよ」


  そう言う間所が指差す方から1人の人物が姿を現した。


『七英傑!  第七席(ザイン)!  水原遊羽(みずはらゆう)!』


 先程までの大歓声は更なる大きさへと変化し、豹牙も流石に耳を塞いでしまう。

アナウンスに呼ばれた水原という人物は新入生の方を1度も見る事なく、端の席に座った。


「なんか……愛想の無い奴だな」

「はは……違うよ。彼は人見知りなのさ」


  間所が「意外でしょ?」と言い、軽い笑顔を豹牙に見せる。その間所の奥には何やらカメラを持ち出し、シャッターを切りまくっている白王が居た。


『 第六席(ヴァヴ)!  仙石朧(せんごくおぼろ)!』


  次に現れたのは白髪の男。体の線は細く、如何にも優男な笑顔を新入生へと振りまける。


「なんか見た目は弱そうだな」


 その言葉に反応したのは、七英傑オタク・白王。


「お前! 彼は僕達と同じ1年生だぞ!?」

「なっ……嘘だ、ろ!?」


  その言葉にうんうんと頷く間所。豹牙は改めて、仙石朧の姿を見つめたーーーだが、どう見ても、何回見ても、優男にしか見えない。


 ましてや、同じ1年生で七英傑に入ってるなんてーーー


「因みに彼、ここの院長……仙石幻斎のお孫さんだよ」


  ついでの様な軽い感じで、間所が豹牙に伝える。

  驚きばかりのオンパレードだが、それにしてもあの仙石朧に関しては不思議と他人な感じがしない。


「同じ1年生だから戦う機会があるかもね」

「……おう」


  間所の言葉に静かに頷く。いつもならもっと大きく頷いているが、今回そうしなかったのは、別に仙石朧が恐ろしいからとか、負ける気がするとか、そんな訳ではなく、自分が頂点に立つ為には(仙石朧)を倒さなくてはいけない。ただ標的を静かに狙っていた。

  自然と……ゆっくりと……闘志が溢れてくる。


第五席(へー)西園夢葉(にしぞのゆめは)!』


  現れたのは女性。と言うよりも少女という言葉の方が相応しい人物が入って来た。

先程の水原と同じで、新入生の方を一瞥もしない。その彼女の静かな体の両腕が抱き抱えているのは、人形。それも、少し気味の悪い…普通の人間ならまず手にしようとは思わない様な人形。


「「なんかお子様だな」なーんて思ってるでしょ?」

「……!」


 いきなり予言してくる間所に、実際に思っていた豹牙はビクッと反応してしまう。それを面白がるかの様に間所は白い歯を見せる。


「でも……実力に関してはーー君もある程度はわかるでしょ?」

「まぁ……七英傑だもんな」

「ご名答」


 少し真面目な雰囲気が豹牙達に漂うが、その中で豹牙は西園夢葉に対して1つ思った事があった。


(あの人……何歳なんだ?)



『 第四席(ダレット)!  轟爆庵(とどろきばくあん)!』


「イェーーーーーイ!」


 次の人物は、ただただ煩い。先程、無言だった西園夢葉を見たからこそ、余計に煩い。この大歓声の中をマイク無しで響き渡らせるほどに煩い。


「マジで煩いな……」

「でも、それが彼の長所だよ」


 豹牙は既に大歓声に慣れた耳を塞いでいなかったが再び耳を塞いでしまう。しかも爆庵の声、ただ1つだけにーーー

 しかも、長所だと調子のいい事を言ってるクセして間所もしっかりと両手を耳に当てていた。


「次の第三席からは少し今までの4人とはまた一つ桁が違うかな?」

「……!  そうなのか?」


 轟爆庵が椅子に座り込むと、アナウンスが七英傑の紹介を続ける。妙に男達の歓声が大きくなっている気がした。


『 第三席(ギメル)!  漣 渚(さざなみなぎさ)!』


 煩い第四席に次いで出て来たのは、とても綺麗な女性。シュッとした体型と綺麗な長い髪。見た目は笑顔を見せない様な雰囲気を醸し出しているが、新入生に柔らかい笑顔を向けていた。

まさに正統派美女。豹牙の好みかと聞かれたら、正直好みだ。しかも先程の西園夢葉を見たからか、更に大人な女性に見える。

見ると西園夢葉が少し睨みを効かせた様な目つきで漣 渚を見ていた。きっと嫉妬しているのだろうーーー何だろう……少し、不憫。


「ふふっ」


 間所が1人でクスクスと笑っている。


「な、何だよ?」

「……ん?いやぁ、今年も渚ブレイクが始まると思うとね」

「な、渚ブレイク?」

「いずれ……というか結構早く分かると思うよ?」


 間所は今までのどの笑顔よりも悪い笑顔を作っている。


(ていうか……コイツずっと笑ってるな……)



第二席(ベート)!  禍谷廻(まがやめぐる)!』


 出て来たのは、何とも不健康そうな顔をした男。見るからに陰険な感じがする。当然、新入生に手を振る事も無く、中央の大きな椅子の横に座る。


「……あれが第二席なのか?」

「うんーーーってもしかして、弱そうとか思ってる?」


 間所が豹牙に顔を近づける。余りにも近く寄ってくるので、つい離れてしまった。


「彼は……凄いよ。彼には間違いなく()()()が相応しい」

「?」

「そんな不思議そうな顔をしないでよ。これもちゃんと分かる日が来るから、楽しみにしてなよ」


 次にアナウンスが第一席を紹介する。その前から場内からの歓声が溢れかえっていた。


「す、すごい……流石、第一席だね」


 香澄がずっと黙っていた口をそこでようやく開いた。

 それもその筈。会場のボルテージは今までのどの英傑の紹介よりも上がっており、歯止めが効かない状態だ。見れば、女子達が列を乱してまで前へ前へと入り込んでいく。


「あの様子だと、第一席は男か……」


 豹牙は小さく自分に語る様に呟くと、間所の耳には何故か届いており、「お、ナイス予想だね」と言われる。この人…地獄耳だなと豹牙は気づき、彼の前ではコソコソ話は避けようと思った。


第一席(アレフ)ーーー』


 場内は更に盛り上がりを見せる。その勢いに豹牙も思わず圧倒されるが、それ以上に第一席がどんな人物なのかが豹牙は気になって仕方がなかった。

その人物を倒せば、豹牙はこの学園のトップに立てる。だからこそ、第一席の紹介こそが豹牙にとっては1番重要だった。

自然と溜まる唾を飲み込む、急かす足を必死で抑える。高鳴る鼓動を表情に見せない様に堪える。


そしてーーー


明神聖(あけがみひじり)!』


 一気に場内のボルテージは限界を突き抜ける。

 そして、奥からゆっくりと現れて来たのはーーー


「え……?」

「う、そ……」


  豹牙と香澄の顔が動揺の色でで染まる。


 それもそのはず。そこに現れたのは……第一席で名前を呼ばれたのは、あの自動販売機の男だったのだからーーー


次回は12/9(土)16-17時を予定しています


活動報告の方も良ければ見て頂ければ幸いです

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