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1-1 仙石魔導院へ

ここから本編です。


定期的に更新するつもりですのでよろしくお願いします。

 

 夕刻の茜色に染まる空の下で、静かな公園に「ゴン」と鈍い音が響く。

 1人立つ少年に対して、尻を地面に接している3人の少年達。

喧嘩だろうか。それにしては3人の少年達だけが服を汚して、口の中が切れた為に血も流れており、一方的な結果になっている。


「おいおいもう終わりか!?」

「て、てめぇ……魔法を使うなんてせこいぞ!」

「はぁ……? お前は包丁でも何でも武器にして良いし、俺はこの場から動かないって約束で闘ってんだ。文句あんのか?」

「……っ! もういい! 覚えとけよこの野郎!!」


 逃げ出すアニメのキャラがよく言うセリフを本当に吐きながら、丸坊主で筋肉質の男達は去っていく。そんな後ろ姿を見つめながら無傷の少年は吐き捨てる様に言葉を発した。


「……つまんねぇの」



 彼の名前は風薙豹牙(かざなぎひょうが)

 彼が魔法を使える様になったのは彼の親の原因。親は共に魔導士だった事から必然的に魔法を使える様になった。

 だが当初、彼は魔法を邪視していた。理由は、魔導士だからという理由で皆から避けられ、頼りの親は「魔法の進化の為」と言って家に居る事が少なかった為に子供時代から誰かと仲良く過ごした……という経験は皆無に等しかったからだ。


「ただいま」

「おぉ、お帰り豹牙…ってその服の乱れ方は、また喧嘩したのか……」

「良いじゃねぇかよ別に。俺の自由だろ」

「確かにそうだが、いつもいつも学校に頭下げに行くのは俺なんだぞ……?もう少しお前はーー」

「はいはい。次は気をつけるよ」


 そんな豹牙の数少ない語り相手は、兄の風薙隼牙(かざなぎしゅんが)。この隼牙も昔は魔導士だったが、数年前に起きた世界規模の魔道士の戦争に出兵して足を失って帰って来た。戦争も結局は平行線を辿り、どの国にも利益を与える事が無いままに、無駄な死だけを増産して停戦。


「今日は豹牙の好きなカレーだぞ」

「いつカレーを好きなんて言ったんだよ」

「あれ? 嫌いだったか?」

「……別に。嫌いじゃねぇけどよ」


 優しい兄が足を失う必要がどこにあったのか、まだ当時、幼かった豹牙には分からなかったし、兄の痛々しい姿を現実だと受け止める勇気がなかった。だが、ある時隼牙の戦時中の仲間が家に来て、真実を知った。

訪問して来た仲間を庇う為に、隼牙は足を失った事をーー

優しい隼牙らしい理由ではあるが、その優しさ故に大き過ぎる傷痕が残ったのだ。


 豹牙は自分を傷つけたく無いし、兄の様な大事な物を失っても動じない強さなんて持ってない。

 だから強くなる。誰にも負けない様に…強く。

 そこからは彼は喧嘩に明け暮れた。それに昔から魔導士だからと言う理由で避けられてきた彼には優しさなんてものは、備わっていなかったからこそ都合が良かった。魔法を極める為に今まで彼を白い目で見てたヤツを1人1人潰していったーー彼自身の手で。

 すると、いつの間にか本気で彼に関わろうとする人間も白い目で見る人間も居なくなっていった。

そして次第に、彼は本当に誰とも話す事が無くなった。


「あぁ、そうだ豹牙」

「んぁ?」


 隼牙は自分の鞄の中から何かを取り出すと豹牙にとある物を差し出して来た。渡された物に視線を落とすと、パンフレットの様な物と判明する。


「んだこれ? 仙石魔導院入学手続書……は?」

「て、事だ豹牙。お前、四月から魔導院生な」

「ふざけんなよ! 何で俺がそんな所行かなきゃ何ねぇんだ!」

「お前の為だからだよ」


 隼牙の勝手な行いに苛立つ豹牙は紙を持つ手を、思い切り机に叩きつけた。だが、それを気にする事もなく隼牙は話を続ける。


「だってお前、高校卒業してから就職するわけでもなく進学するわけでも無いんだろ?」

「なんだよ……文句あんのかよ?」


 少しだけ返す言葉に戸惑う豹牙のおでこを、隼牙は強くデコピンで弾いた。


「痛って!」

「大有りだっつーの。お前、魔法使って喧嘩ばかりしてるだろ」

「そんなの昔から知ってんだろ」

「でだ。そのパンフレット見てみろ」

  

 隼牙が指差すパンフレットを開くと、そこには夥しい数の恐らく生徒であろう人が写っていた。


「うげぇ……これ全部生徒なのかよ」

「それに此処はただの学校じゃない。卒業出来るのはたったの100人だ」

「は!? 100人しか卒業出来ねぇのかよ!」

「当たり前だろう? なんせあの日本唯一で世界一厳しい魔導院…仙石魔導院なんだからな」


 パンフレットを握る手に汗が滲み出る。

 正気の沙汰じゃない。100人に俺みたいな学力皆無の人間が入れるわけがない…


「尚更、ことわーー「だがお前には都合がいいと思うぞ?」……え?」

「仙石魔導院は主に自分の持つ魔法の発展応用を学ぶんだ。そこで得た力を魔闘と呼ばれる対人戦で試すんだが、それに勝った者が相手の順位まで一気に上がれるシステムだからな……下克上の様な感じだな」


 その言葉に豹牙はこの話の中で1番の食いつきを見せた。


「……!? ってことは!?」

「お前の大好きな魔法を使って闘いし放題、更に魔法も進化する……すなわちーー」

「俺が最強になれるってことだな!」

「そういうことだ。さぁどうする豹牙?」


 豹牙としてはそんな実力主義の学校なら、断る理由もない。


「んなもん行くに決まってんだろ! 俺はてっきり学力かと思ったじゃねぇか!!」

「はっはっはっ……お前なら頂点(てっぺん)取れるさ」

「当たり前だろ! 俺は最強の魔導士・風薙豹牙だ!!」


(見てろよ……このパンフレットで笑ってるお前らの顔を恐怖に染めてやるぜ!)


「さて学費だが…」

「え、隼牙が出してくれるんだろ?」

「それはそうなんだが普通の大学よりも高くてな……」

「……因みにいくら?」

「年間300万」


 隼牙の答えに目も口も真ん丸に開いてしまう。


「……」

「院内で成績上位になったら学費免除らしいから頑張ってくれよ」

「お、おう! 任せとけ!!」

(まぁ本当はそんなにしないんだけど…これで豹牙も少しは落ち着いて学生生活を過ごしてくれるだろう)

「見てろよぉ! ぶっ潰してやるぜ仙石魔導院!!」

「……そんな事もなさそうかな」


 隼牙は豹牙に聞こえない程度の声で溜め息を吐いて、カレーのスプーンを手に取った。


ーーー

ーー


「荷物は持ったか?」

「おう。万端だぞ」

「当分はこっちに帰ってこれないだろうからな…しっかりと家を目に焼き付けとけよ」

「そんな事しねぇよ……すぐ帰ってくるからよ!」

「どうやって早く帰るんだよ……ったく、無理はするなよ?」

「分かってるって……って電車の時間だ!」


 慌てて背中に背負う鞄と両腕で大きな荷物を抱える。


「そうか……じゃあ気をつけてな」

「おう! じゃあな!!」


 走り去って行く豹牙の後ろ姿を隼牙はじっと見つめ続けていた。昔と変わらずのままだが、帰って来た時の顔はどんな風になっているか…。もしかしたらゲッソリした顔になっているかも。

 想像していたら笑いがこみ上げて仕方がない。


「おっと……そう言えばまだ学長に連絡してなかったな。早くしないと……」


 隼牙はもう1度だけ豹牙の方を向くが、そこにはもう既に豹牙の姿は無かった。


「頑張れよ豹牙」


ーー


「ここが仙石魔導院か……」


 豹牙の前にそびえ立つ校門。それはあまりにも巨大で校門と呼んでいいものなのかも分からないくらいだ。


「ここが俺の戦場……考えたら胸が高鳴るぜ」


 燃える豹牙の目の前で大きな門が開き始める。

 ゆっくりと開く門が同時にさっきまで見えなかった院内をくっきりと映し出していく。見た感じは普通の大学。しかしここは100人に1人しか卒業出来ない様な修羅場。


(この門潜ればもう後戻りは出来ねぇ…けど、ここは進むしかねぇだろ!)


「さぁ覚悟しろよ仙石魔導院! 風薙豹牙のお通りだ!!」


威風堂々と、豹牙は大きく構える門の下を大股で通り抜けた。


さて、どうですか本編一話目は?


そうですね、まだ面白くもなんとも無いですよね。ここから物語は広がって行くんでお付き合いよろしくお願いしますね!

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