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救炎のガルダ  作者: ドカン
1章 炎の翼
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第6話 解放計画

 「そうは言うけど、それもだいぶ難しいんじゃない?」


 ブライの勢いから出てきたような意見に、アンリが冷静に指摘を入れる。ヒメもブライのように、今すぐに助けてしまえばいいと考えていたため、アンリの指摘を疑問に思う。そしてヒメの疑問を解決したのは、他ならないブライだった。


 「まぁ、そう上手くはいかないよな。助けた後に、鳥に見つからずに過ごすってのは難しいだろうし」

 「どうして難しいの?」

 「鳥は執念深いんだ。一度縄張りから出ていった人間をどこまでも追いかけて捕まえようとする。連れ戻されるだけならまだいいけど、最悪の場合、その場で殺されることだってある。助けるのが1人だけだったら、すぐに移動すればいいけど、大人数になるとそうはいかないだろ? それに、今回は事情を抱えた人達が中心だからな。もし鳥に見つかったらどうなるかは想像に難くないね」

 「そう......」


 ヒメは逃げることばかりを考えていたが、ブライ達は違った。その後のことまで、しっかりと考えていてくれたのだ。しかしだからこそ壁が立ち塞がり、思うように動けない。


 「ねぇ、ブライ。そういえば前に他の縄張りを見つけた時があったよね?」

 「あぁ、あったな。確か、黄色い鳥が支配してるとこだったか。それがどうしたっていうんだ、ナビ?」

 「僕、鳥同士をぶつけたらどうかなって思うんだけど」

 「鳥同士を?」

 「なるほどな! つまりあれだろ? 鳥同士で潰し合わせるってことだろ!」

 「ジェイにしては理解が早いな! で、その間に助けつつ、運がよければ鳥を討つことも出来るってわけか」

 「アンリも分かってくれて助かるよ!」


 鳥に人間は敵わない。しかし鳥が徒党を組むかというと、そうでもない。縄張りを持つほど支配意識の高い鳥なら、自分と同じような力を持つ存在を許しておくことはないだろう。ナビはそこに付け込もうと考えた。鳥だって無敵ではない。必ずチャンスはある。そしてそのチャンスを作り出すのだ。


 「最低でもどちらか一方。運がよければ、どちらとも潰せる......。よし、それでいこう!」


 考えがまとまった。ヒメと革命隊は、その作戦に則り、さっそく動く。革命隊は人々を受け入れる準備や、鳥との戦いを想定した作業を行う。

 一方でヒメは、一度火の鳥の縄張りに戻り、革命隊の存在と、そこで決まったことについて人々に説明した。ほとんどの人が納得する。彼らも鳥の支配からは逃れたかった。そこに届いたこの報せは、まさに希望に感じられただろう。しかし唯一反対する者もいた。タレスだ。


 「お考え直しください」

 「どうして? 全員が助かるのに、これ以上確実な方法はないわ。それともタレスは、皆を助けたいって思ってないの?」

 「いえ、決してそのように思っているわけではございません。しかし、人が鳥を倒すなどというのは、この世の理に背く、あってはならないこと。鳥から逃げることは許せても、鳥から殺すことは許しては置けませぬ」

 「でもそうしないと、いつか見つかるかもしれないのよ。それに、この世の理だなんて、私、聞いたこともないわ」

 「だとしても、だとしてもでございます」

 「ならこうしましょう。タレスはこのことに関わらないで。私達がすることに、協力も邪魔もせずに黙って見てるの。どう?」


 ヒメは今回のことに強い決意を抱いている。そのことをタレスが知らないわけではない。それに、ヒメからの提案は、タレスにとって損なことは何一つとしてありはしない。成功しても失敗しても、無関係であるから何も影響を受けない。ヒメがタレスに配慮して出した考えだ。


 「......分かりました。では、そのようにいたしましょう」


 タレスは折れた。これ以上引き止めたところで、それは徒労に終わると悟った。

 未来が確実に分かるわけではない。しかし経験から分かることもある。変化は必ずしもいいことばかりではない。今ある社会に納得がいかないからといって、仮にそれを打倒し変えたとしても、やって来るものが今までよりも良い社会であるとは限らないのである。

 何と伝えれば良いのか。痛い目を見なければ分からないのか。しかし本当にそれは正しいのか。答えが出せないからこそ、妥協したのかもしれない。

 一方で、タレスを納得させることに成功したヒメは、さっそく縄張りにいる人々を逃がし始めた。革命隊の隊員達の協力を得て、着々と作戦を進める。

 そこに報せが入る。ブライがここではない、他の鳥の縄張りへ向かうというもの。


 「私も行く!」


 咄嗟にそう言った。ここではない縄張りには、自分以外の巫女がいる。会ってみたいし、会わなければならないと思う。ヒメは急いでブライのもとへ駆けつけ、共に別の縄張りへ向かった。

 火の鳥の縄張り、ヒメ達が囚われている場所から、そう遠くない場所に、その縄張りはあった。荒野の中、まるで抉られたような窪地に、人々が住む縄張りがある。


 「本当にあったのね......」

 「君の所と造りは違うが、本質は一緒だ。鳥が人を支配するためにつくったカゴのような世界。自由とは程遠い、支配と苦痛の檻」


 縄張りの中、窪地の壁面に沿うように階段や廊下が複数階となるように設置されている。擬似的な高層建築、光の届く地下世界のようだ。そこの最下層で人々が暮らしているのが見える。真ん中にぽっかりと空いた広場のような場所に人々は集まっていた。とくに何をするでもなく、人々はただひたすらそこにいた。

 2人はそこを、地上から眺めている。周辺の様子や縄張りの中を一目で把握でき、なるほどこれは非常に支配に適している、とヒメとブライは納得した。


 「ここにも鳥はいないか」


 ブライが呟く。縄張りの主である鳥の姿がどこにも見当たらない。いないにこしたことはないが、それは把握出来ないことが1つ増えたということでもあり、不安が消えることはない。この縄張りの鳥を上手く誘導し、火の鳥とぶつける。そのためには、2つの縄張りの鳥が確実に、近くにいなければならない。


 「ねぇ、ここの人達は助けないの?」

 「うーん」


 今、ここにはブライとヒメの2人で来ている。2人で今から、先程の火の鳥の縄張りで行ったようなことをするとなると、色々と問題も多い。まず、ここにどれほどの人々が囚われているのか、この縄張りの鳥はいつまで帰ってこないのか、などといった壁が立ち塞がる。しかしここで多くの人々が苦しんでいるであろうことは明白であり、ブライの正義感はそれを無視できない。


 「......やれるだけ、やってみようか」

 「えぇ、そうしましょう!」


 そして2人は縄張りの中へ入るため、窪みの中へ降りた。壁沿いに造られた廊下を渡り、下へと続く階段を降り、人々がいる中央へと向かう。途中、壁にはいくつか人が入ることの出来る大きさの穴が掘られていた。まるで部屋のようだ。


 「巫女がいれば楽なんだがな」

 「どうして?」

 「巫女は縄張りの人々を導く役割があるからね。君の所だってそうだったろ? よく分からないけど、巫女には不思議な力があるんだ」


 2人が話しながら向かっている途中、壁に掘られた部屋の中から、若い女性が姿を現した。白い肌に銀髪のミディアムヘアが特徴の、ドレスのような服を着た美しく若い女性。


 「あら、あなた達、見ない顔だけど......」

 「いきなりで失礼かもしれませんが、この縄張りを支配している鳥の巫女を知りませんか?」

 「い、いきなり聞くの!?」

 「これが1番手っ取り早いと思ってね。手段を選んでる暇もないし」


 驚くヒメに、冷静に返すブライ。そんな2人を前にして、銀髪の女性はマイペース気味に答える。


 「巫女、ですか。それなら私です。何か御用でしょうか」

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