第5話 革命隊
話はトントン拍子に進み、ヒメとナビは2人で革命隊のもとへ向かうこととなった。既に2人は出発して、今は荒野の中を歩いている。
「革命隊は居場所を悟られないように、拠点を移しながら生活しているんです。ですので僕がいた頃から場所を移しているかもしれませんが、おそらくはそんな遠くへは移動していないはずです」
「仲間が連れ去られたっていうのに助けにも来ないなんて、もしかして薄情な連中だったりする?」
「いえ! そんなことはありません! ただ一度連れ去られてしまうと、縄張りにいる鳥と戦うことになるかもしれませんし、他の仲間にも危害が及ぶかもしれません。どうしても助けるのが難しくなるんですよ」
「ふぅん」
「あ!」
話している最中、ナビが荒野の向こうに何かを発見したようだ。ヒメにもテントの影のようなものが見える。
「あれです! あれが革命隊の拠点です!」
ナビは興奮しながら、拠点の方へ走っていった。ヒメもナビの後を追って走るが、ナビの足が速く、完全に置いていかれてしまった。息を切らし、疲れた体でようやく影で見えたテントまでたどり着く。
「はぁはぁはぁ......」
拠点の奥の方では何やら騒がしい声が聞こえる。大人数ではしゃいでいる様子だ。
「ナビ! よく帰ってきた!」
「どこまで行ってたんだ!」
「もう会えないと思ってたんだから!」
「ナビはなんとか帰ってこれましたー! 僕もまた皆さんに会えて良かったです!」
ナビと、ナビの帰還を祝福する革命隊の人々の声。その嬉しさはヒメにまで伝わってくる。
大人数ではしゃいでいる様子に招かれるように、さらに奥の方から若い男が1人やってきた。赤い髪の爽やかな青年。彼はナビの姿を見ると、笑顔をこぼしながら、彼もまた嬉しそうにナビを抱きかかえるのだった。
「ナビじゃないか! 騒がしいと思ったらそういうことだったのか!」
「ブライー! 会いたかったよー!」
「俺もだ、ナビ! ん? あの女は誰だ?」
「あれはヒメだよ。僕をここまで送ってくれたんだ」
「そうか! それは感謝しなきゃな!」
青年がヒメの存在に気付き、ヒメの方に駆け寄ってきた。
「わ、イケメン......!」
「俺はブライっていうんだ。この革命隊のリーダーをしてる。ここまでナビを送り届けてくれたんだって? 感謝してもしきれないよ!」
「あぁ、いや、そんな。私そんなに大したこととかしてないし......」
ヒメはブライの顔を直視出来ない。爽やかで、気持ちを真っ直ぐに伝える気持ちのいい青年。革命隊のリーダーをしているというのも、仲間から信頼されているからだろう。人を惹きつける才能のようなものがあって、彼がこの組織を率いているというのも頷ける。そしてなによりも、ヒメにとって、ブライはどことなくラズと似た雰囲気のようなものを感じる。
「聞いてよ、ブライ! 実はここに来たのには理由があってね、助けてほしい人達がいるんだ」
「助けてほしい人達?」
「うん。僕は鳥の縄張りから逃げてきたけど、縄張りにはまだ捕まってる人達がたくさんいるんだ」
「なるほど。その人達を助けたいってことか」
「そう!」
「ちょっと待ってくれ! それは危険だ。助けたい気持ちは分かるが、わざわざこっちから縄張りに突っ込んでくなんて自殺行為だぜ」
革命隊の1人が反対する。周りの者達もそれと同じ意見や考えのようだ。このままでは革命隊は動かないだろう。ヒメもナビと同じく、何とか助けてもらえるように頼んでみる。
「私からもお願い。今しかないの。アイツは縄張りにはいない。今の内に皆を助けてほしいのよ!」
「アイツってのは、鳥のことでいいか?」
「えぇ」
「......俺は助けに行こうと思う。皆は?」
ブライは、革命隊の仲間に助けに行くかどうか聞く。真っ直ぐな瞳で仲間達を見つめ、疑うことさえ知らないような態度だ。それに仲間達も折れる。
「しょうがねぇな。どうせ反対したって、お前1人でも行くんだろう?」
「そうそう。そんなリーダーは危なっかしいからね」
革命隊の者達が次々に頷き、ブライの意見に賛同する。きっと反対しても、ブライはそれを受け止めるだろう。しかし、そうならなかったのは、彼の人を惹きつける力なのかもしれない。
「皆、ありがとう! そしたら早速始めよう!」
ブライの言葉で全員が一斉に動き出した。といっても、まずは計画を練るところから始めなければならない。主要なメンバーが、木で作られた机の周りに集まり話し合いを始める。
「その、ありがとう。急なお願いだったのに、引き受けてくれて」
「いいんだ。困ってる人を見過ごすことの方が俺達には耐えられないのさ」
ヒメはブライと革命隊に感謝を示した。こんなにも速く事が進むとはヒメも思っていなかった。
「ウチのリーダーはお人好しだからな! 止めても無駄だぜ!」
「止めるかバカ。ま、お人好し過ぎて危ない時もあるけど、皆そんなリーダーのことが好きなんだよ」
計画を決める場に同席している革命隊のメンバーが冗談を言い合う。しかしそんな冗談からもブライへの信頼が伝わってくる。
「あぁ、仲間の紹介がまだだったね。まず、こっちがジェイ」
「よろしくな!」
紹介されたジェイという人物は、黒肌の筋肉質な男だった。スキンヘッドで、冗談と軽口が好きなムードメーカー的な存在に思える。
「んで、こっちがアンリ」
「よろしくね」
アンリは女性で、長すぎない茶髪の髪が白い肌とよく似合っている。冗談が通じないというわけではないが、どこか真面目といった印象を受ける。
「それで、縄張りについてなんだけど、さっき今は鳥がいないっていってたよね?」
「えぇ。その間に逃げた人もたくさんいるんだけど、まだ残ってる人達がいて......」
「逃げたいけど、事情があって逃げられない、って人達ということだね?」
「そう。怪我とか、病気とかで」
「なるほどな! そりゃますます見捨てらんねぇな! どうする、ブライ!?」
「お前もちょっとは考えろ、ジェイ」
「そう言うなよアンリ。俺が難しいこと考えるの向いてないって知ってんだろ?」
「2人共、話をそらすな。それで、続きなんだけど。縄張りに鳥がいないって言ってたけど、巫女はいるんだろ? 巫女は鳥と通じてるはずだから、そこを何とかしないと」
「その巫女なら、私だけど」
「え!?」
3人が同時に驚く。ヒメは何気なく言ったつもりだったのだが、そこまで驚くことだったのだろうか。
「本当に君が巫女なのか!?」
「え、えぇ」
「間違いないよ! ヒメは正真正銘の巫女なんだ!」
ヒメが巫女であると信じきれない3人であったが、ナビの証言によって、ヒメが巫女であると信じることに決めた。他ならない仲間の言葉を疑う道理は3人と革命隊にはなかったのだ。
「だとしたらこんなにもいい話はねぇぜ! 今回は簡単に上手くいっちまうかもなぁ!」
「甘く見るのは厳禁だけど、巫女が協力してくれるなら、そう思っちゃうのも無理ないね」
「君が巫女で良かった。君のおかげで、多くの人達を助けることが出来そうだよ」
「そんなこと言われるなんて......。私、巫女になってよかった」
ヒメの顔に笑みが溢れる。巫女という立場になってしまった時の絶望が嘘のように晴れて、今は自分を誇らしく思い、役に立ちたいと、心の底から思えていた。
「後は、鳥が来ない間に助けてしまうだけだな!」




