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救炎のガルダ  作者: ドカン
3章 灰の翼
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第41話 内心

 「ありがてぇ! だがどこを探せばいい?! こんなだだっ広い所を手探りなんて無理だぜ!?」

 「手掛かりならある。お前達の持っている聖剣だ」


 ガルダのその言葉にハッとするゴウマ。彼はヒメを見つける方法に気付いたようだ。


 「なるほどな。これなら楽勝だ! 待ってろよ! ヒメ!」


 ゴウマとシイトの聖剣からは一筋の光が放たれている。それは巫女の位置を知らせるもの。つまりはヒメの場所を示すものだ。ゴウマは一目散に光が放たれている方向へと走り出した。


 「……敵が1人逃げたぞ。追いかけないのか?」

 「自分が言ったことの矛盾に気付いていないのか? お前は私を倒すんだろう? それとお前に言っておくことが2つある。1つは人間は敵ではないということ。ありとあらゆること関係なくな。そしてもう1つ、私の目的はガルダ、お前達を倒すことにあるのではない。私の民達を守ることだ!」


 その言葉を言い終わると同時に、ベンヌは爪でガルダに掴みかかる。


 「お前の方こそ目的はなんだ! その使命にこのようなことは含まれてはいないはずだ!」

 「簡単だよ。ベンヌ、私はお前を越えなければならない。ここからは、誤魔化しも何も効かないからな」

 「なんだ、フギンにビビってんのか? 情けねぇじゃねぇかよぉ!」

 「敗者になど言われたくない! 私はお前とは違うのだ!」

 「勝ち負けじゃねぇ! 俺はビビってなんかいなかったぜ! そんな弱気じゃあ俺にさえ勝てねぇ! あまり先輩を舐めるなよ、後輩!」


 ベンヌはガルダを掴んでいた足をグイッと引っ張り、ガルダごと上空へと飛ぼうとする。


 「ソロン! 後はお前に任せた!」


 そのように言い残し、ベンヌはガルダと共に空へと消え去った。


 「承知しました。ベンヌ様」


 雑多に集まっている民衆の中から、1人の白衣を着た男が出てきた。ミュソスより少し上ぐらいの年齢で、黒髪の中に白髪が混ざっている、優しくも真面目そうな顔をした男。


 「ソロン……!?」


 その男を見て、ミュソスはこれ以上ないほどに驚いた様子を見せた。




 一方その頃、灰に飲み込まれ、知らない場所に飛ばされたヒメとシン。ベンヌの言う通り、死んではいなかったが、目を覚ましたその場所は、まるで都市とでも言うべき世界だった。しかしそこには人の姿や影すらもなく、全てが廃墟となっていた。

 だが、それでも2人には理解出来ないほどに進んでいる、あるいは進んでいた文明の跡。ヒメもシンも、ただそれに圧倒されるばかりであった。しかし、2人には目の前のそれが何に使われていたものであったのかは理解出来なかった。


 「すごい……。これを全部、作った人達がいたんだ……」


 これらを人が作り、人が使っていたことは分かった。全て人に都合良く作られていたからだ。

 素直に驚くシン。その横で、ヒメは何も言葉を発することなく黙っていた。シンがヒメの方を見ると、ヒメは右手で頭を抑え、なにやら苦しそうな表情をしている。


 「どうしたの!? 母さん! 大丈夫!?」

 「っ……」


 ヒメの頭の中には、再び見たこともない映像が流れ込んでいた。それはおそらく、かつてこの場所で暮らしていた人々の記憶。都市が綺麗で、多くの人々がヒメの見慣れない姿で歩いたり、座ったり、各々の過ごし方をしている。優雅で贅沢な、進んだ暮らしがそこにはあった。

 とくにヒメの頭の中に強く流れ込んできたのは、ある女性の暮らしだ。誰かは分からない。だが、オシャレな服装、キラキラと装飾、そして隣にいる異性。順風満帆そうな日常。幸せに見える。

 そしてそれはしばらくヒメの頭の中に流れ続けたが、少ししたら止まったのであった。


 「はぁ……はぁ……はぁ……」


 頭の中に映像が流れる時、ヒメには負担がかかるようで、彼女は疲れたように汗をかいていた。

 これがなんなのかは分からないが、とにかく、ここにいてもどうしようもないので、とりあえずどこかへ移動しようとする。


 「あ、待って! 母さん!」


 シンもヒメの後をトコトコと付いてくる。

 ヒメは周りなど見ずに、まるで道が分かっているかのように、どんどん道を進んでいく。どこに進んでいるのか、それはヒメにすら分からない。

 しかしシンはそれを、何か目的を持って、あるいは元いた場所に戻るために迷うことなく進んでいると解釈した。


 「こんなに広い場所で迷わないなんてさすが母さんだなぁ! あ、なにかあったら僕が力になるからね! 困ったらすぐに言ってね!」


 全く離れることなく、すぐ隣を歩くシン。そこでペラペラと喋り続けているが、ヒメはそれを内心ウザく思っていた。


 「ねぇねぇ! 母さんはさ! 今までどんなことしてたの? 僕、母さんのことよく知らないからさ……。知りたいなって……」

 「別に、言うほどのことなんて何もしてないわよ」

 「何でもいいんだよ! 何でも! つまらなくてもいいからさ! 教えてよぉ!」

 「だから本当に何もないって」

 「何もないわけないじゃん! だってあの赤い鳥とか見るからに特別そうじゃん! 絶対に何かあるじゃん! それに他の人達も色んなこと喋ってるし! 僕だけ話に付いていけないなんて嫌だよ! だから教えて!」


 シンからヒメに対する質問攻め。シンとしては悪気など一切ない。むしろ、純粋な気持ちだけである。だからこそ遠慮がなく、それがヒメをイライラさせた。シンをどうにかしなければ、ヒメの心が落ち着くことはない。今の2人はまるで、構ってほしいと騒ぐ子供と、それを突き放そうとする母親のようだった。

 いい加減、シンに対して我慢の限界を迎えたヒメは、いいことを思い付いたとばかりにシンに対して命令を出した。


 「そうだわ、シン。私今困ってるの。力を貸してくれる?」


 ヒメのその言葉を聞いたシンは、一瞬で表情を明るくし、目をキラキラさせながらヒメの次の言葉を聞こうとする。頼られて嬉しいのだ。


 「なに!? いいよ! 全然いい! 何でも言って!」

 「実は少し迷っちゃって。だからシンには戻る方法というか、皆と合流するための方法とかを考えてほしいのよ。もちろん、道を探すのだってありよ。むしろそれが一番現実的ね」

 「うん! 分かった! 考えるし探してくる!」


 そう言って、シンはその場から駆け出し、この広い廃墟となった都市に1人で飛び出していった。


 「……ふぅ」


 ヒメはシンの扱いに困っている。彼が何者なのかも分からないし、自分は母さんと呼んでくるのも、嬉しさなど全くなく気持ち悪いだけだ。

 ただ聖剣を持っているとか、見捨てるわけにはいかないとか、それだけの理由で置いているようなもので、ヒメとしてはシンをあまり良くは思っていない。

 それどころか、ヒメはゴウマやシイトに対しても良くは思っていなかった。

 ゴウマは騒がしく、それでいて何かとヒメに気に入られようとしているような、何かあった時に庇ってくるのもそれだろう。ヒメはそんなゴウマに、下心のようなものを感じ、時々不快に思っている。

 シイトも、彼から下心を感じることはないが、彼の言葉には刺がある。いちいち言わなくてもいいことを言い、周囲のやる気をなくす。彼自身の態度もやる気がなく、それに加えて自分勝手でわがままだ。

 いずれの3人も聖剣を持っており、ガルダ程ではないにしても戦うことが出来るし、強い。

 しかし、ヒメにとっては今の周囲を取り巻く環境は生きづらいものだった。

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