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救炎のガルダ  作者: ドカン
3章 灰の翼
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第40話 戦いの始まり

 「はぁ……」


 シイトのため息。


 「おい、それ空気悪くなるからやめろ」

 「なんだっていいでしょ」

 「よくねぇよ。敵の陣地なんだぞここは。そうやって俺らの仲が悪くなったらどうすんだ」

 「もしかして今まで仲良くやってるつもりだったの? おめでたい頭だね」


 シイトとゴウマの言い争いが始まった。お互いに自らの主張を譲るつもりはないようだ。しかしそれでは埒があかない。


 「母さん、こんな奴ら放っておいて先に行こうよ。母さんだってそれがいいでしょ」

 「良いなんて思ってないわ。でも先を急ぐわよ! オコナ! 場所まで連れていって!」

 「そういう積極的なの、私は好きよ。さぁ、背中に乗って。ナビちゃんが連れていかれた場所まではそんな遠くないわ」

 「早く! 早く! ツナが一番に行く!」


 ヒメ達はそれぞれオコナやツナの背中に乗り移動する。

 目的の場所まではすぐに辿り着いた。

 そこは巨大な穴のような場所。よく見れば大勢の人々が密集している。そして、少し離れたところにベンヌの姿があった。

 ガルダはベンヌの姿を見て、翼を1回羽ばたかせ、軌道を変える。そこから勢いをつけ、一気に急降下した。

 ガルダはベンヌの身体を、その背後から一瞬で爪によって貫いた。


 「ぐ、ぅ……!」

 「きゃぁぁぁぁぁ!」


 そこから聞こえてきたのは、ベンヌの苦しみを噛み殺すような重い声と、近くにいた人々の悲鳴。

 ベンヌが貫かれる瞬間を見ていた人々、そして近くにいた人々は、その場から急いで逃げ惑う。


 「ちょっと! アイツ急になにしてんの!?」

 「ちょっと頭が熱くなっちゃったかしらね……」

 「私達も急いで行かないと!」

 「行ってもどうにもならないわ。あなた達はここで下ろすけど、ガルダのように下手な真似はしないでね」


 そう言って、オコナ達はヒメ達を人々が去った後の穴へ下ろした。


 「じゃあ、私達はここで、ね。後は任せたわ」

 「え、ちょっと! オコナ達はアイツを止めてくれないの!?」

 「止めたりなんかしないわ。彼、もともとあれが目的でここに来たんだし。それに事が進むのは私達も歓迎してるの。でもそれとは別に、私達には他にやることがある。それだけよ。よろしくね」


 そう言って、オコナとムウ、モロはその場から飛び去り、ヒメ達を置いてどこかへ行ってしまった。


 「よろしくねって……どうしてここに来てそんなこと言うのよ! それよりガルダ! 今すぐにやめて! 人がいるでしょ! 巻き込むつもり!?」

 「人? あぁ、いるな。だからどうした。今は目の前のコイツを倒す方が先だ」


 ガルダは変わらずベンヌの方を見つめている。ガルダに貫かれたベンヌ。胸に大きな穴が1つ、ぽっかりと開いてしまっている。ベンヌはその場に倒れこみ、動く気配がない。


 「あぁ、ベンヌ様……」


 倒れているベンヌの周囲に、先程まで逃げ惑っていた人々が集まる。彼らはベンヌに近付き、心配するかのように手を伸ばし、嘆きの声を漏らす。


 「なにこれ……。なんでそんなことをしてるの……?」


 人々の行動に困惑するヒメ。彼女には人々の行動が理解出来なかった。まるで鳥を心配するかのような態度。それは決して無条件に出てくるものではない。虐げられ、苦しめられた者達からは出ない行動と気持ちだ。

 まるで、目の前の鳥に感謝でもあるかのような……。


 「おぉ……! ベンヌ様……!」


 ヒメが困惑している間に、人々から感嘆の声が上がる。


 「手荒な真似をするじゃないか。ガルダ」


 そこには胸に開いていた穴を閉じ、まるで何もなかったかのように立っているベンヌの姿があった。


 「その名を呼ぶ気分はどうだ? ベンヌ=ガルダ」

 「知らんな。もはやその名に興味などない。今はそれよりも、ここで戦うことの心配だ。民が傷付いたらどうする!?」

 「ハッ! それこそ知らんな! そんな救いようのない下等な者共を集めてどうするつもりだ? 飼育でもするつもりか?」

 「随分と生意気な口を利くじゃねーか! 後輩!」


 次の瞬間、ベンヌがガルダに攻撃を仕掛ける。ガルダの下に潜り込み、頭で突き上げる。そしてガルダの体が宙に浮いたところをすかさず、蹴りを入れて今度はベンヌがガルダの腹に穴を開けた。


 「おぉ! さすがだ! さすがベンヌ様だ!」

 「そんな鳥早く倒しちゃって!」

 「頑張ってください! ベンヌ様!」


 反撃をしたベンヌに喜び、応援までする人々。


 「お前達は隠れてろ! 巻き込まれるぞ!」


 そして応援してくれる人々の安全を案じるベンヌ。

 やはりヒメには理解の出来ない光景。一体これはなんなんだとその場で困惑する。


 「どういうこと? どうして皆はあの鳥の言う通りにするの?」


 ヒメが漏らした疑問に、近くにいた人物が答える。


 「ベンヌ様は我々のことを思い、そして考えてくれるのです。だから従うのです」

 「鳥がどれだけ危険なのか知らないわけじゃないでしょ!? 私達がこれまでどんな思いをさせられてきたのか! あなた達だって同じなはずよ!」

 「ベンヌ様は違います。他の鳥のように乱暴で、私達を虐げるようなことなどしません」

 「そんなわけない! 鳥なんて皆一緒よ!」

 「同じ時を過ごす中で分かったのです。ベンヌ様こそが我々を救ってくれると」

 「嘘よ……」


 ヒメの考えが目の前の人々によって否定される。実際、今もヒメが人々と話せていること、そしてその場に立ち止まってショックを受けられるのも、ベンヌが上手く立ち回って周囲に被害が出ないように戦っているためだ。

 ガルダとベンヌの戦いは続いている。しかし一向に埒が明かない。ガルダとベンヌはお互いに不死身であり、例え傷付いたとしても瞬く間に回復してしまう。そしてそのことをお互いに知っている。


 「仕方がない。少し手荒だが、使うとしよう。許せ、ガルダの巫女よ」


 ベンヌがその言葉を呟いた瞬間、ヒメの周囲にある、地面に積もった灰が動きだし、ヒメの身体に纏まり付く。


 「やだ! なにこれ!?」


 灰は足先から徐々に上へと上っていく。ヒメはパニックになり、その場で手足や身体を動かすが、纏わり付いた灰は離れない。そして遂には、灰がヒメを包み込み、さらにまるで水のように波打つ地面に飲み込まれてしまった。


 「母さん!」


 ヒメが飲み込まれるのを見たシンが、真っ先に自ら波打つ地面に突っ込んだ。そして、シンも地面に飲み込まれ、その場から姿を消した。

 残された者達は困惑するしかなかった。

 ゴウマ、シイト、ミュソス。慌てる者、冷静な者、考える者。いずれにせよ、今の状況が良くないことについては一致している。


 「くそっ! どうなってやがる! おい! そこの灰色の! ヒメに何しやがった!」

 「ヒメというのはガルダの巫女のことか? 簡単なことだ。ここではないどこかに移ってもらった。死んではいない。それは確認している。安心するといい」

 「どこかってどこだ! テメェ、ヒメもナビも拐いやがって! いい加減にしろよ!」


 ゴウマは聖剣を取り出し、ベンヌに向かって構える。


 「落ち着きなよ。攻撃したって無駄なの分かるだろ? 少しくらい頭使えよな」


 怒りに震えるゴウマにまるで冷や水を浴びせるかのような言葉を吐くシイト。ゴウマのように怒るだけでは何も変わりはしないが、シイトのように何もしないのも駄目だ。


 「そう遠くではないはずだ」

 「……! お前!」


 ガルダがゴウマに教えるように呟く。


 「探しに行くがいい。俺はコレの相手をしているゆえな」

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