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救炎のガルダ  作者: ドカン
1章 炎の翼
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第4話 微かな希望

 「ヒメ様って、様なんて付けなくてもいいのに」

 「いえいえ、あなたは大事な巫女なのですから。それぐらいしなければ」

 「そう......。よろしくね、タレスさん。それで、巫女のことなんだけど」

 「分からないのなら、分からないなりに手探りでやるしかないでしょうな。出来ることなら、他の巫女に聞いてみるのもいいかと」

 「巫女って私以外にもいるの!?」


 ヒメは驚きを顔にする。てっきり巫女は世界に自分だけで、1人で抱え込まなければならないものだと考えていた。しかしタレスの口ぶりからするに、どうやらそうではないらしい。


 「えぇ。力のある鳥は巫女を持つものです。そして巫女を介して人々を従え、他の鳥に自らの縄張りを主張する。そうすることで、鳥の権威は高まっていくのです。もしかすると、火の鳥も権威を高めようとやっきになっているのかもしれませんな」


 鳥達にも権威というものはあるらしい。何故そんなものが必要なのかは、今はどうでもいいことだ。それよりも、タレスの言葉通りに火の鳥が何かの目的のために動いているというのなら、ヒメ達にも火の鳥の隙を付くチャンスが生まれるかもしれない。


 「もしアイツが今、何かに一生懸命なんだとしたら、当分はここに帰ってこないこともありえるのかしら」

 「どうでしょうか。鳥が自らの縄張りを放置するとは考えづらいですが、ここから去っていった者達のその後を聞かないことを思うと、そうなのかもしれませんな」

 「なら、やっぱり、今は逃げるチャンスってことなのね」


 ヒメの目に光のようなものが宿る。ここで暗く沈んでいるよりも、何かやるべきことをやらなければならない。ヒメにとって、今はそれが、この場から逃げ出すことなのだ。


 「あまり悪いことを考えない方がよろしいのではないでしょうか。他者にも危害が及ぶ。そして何よりも、あなた様はもう、巫女なのです」

 「そう。私は巫女よ。巫女は、人々を導くのでしょう? なら、皆のためにここから逃げるのよ!」


 もはや先ほどまでのヒメではない。その声には情熱と力がこもっている。こうなったからには、いくら止めても無駄だろう。

 しかしやる気に満ち満ちていても、何も決まっていないのではどうしようもない。


 「行くあてはあるのですか? それがないから、ここでくすぶっていたのではないのですか?」

 「あてならあるわ。他の巫女のところへ行くのよ」

 「お待ち下さい。他の巫女がいる場所へ行くということは、また別の鳥の縄張りへ向かうということ。結局は、ここにいるのと変わらない、いや、もっと酷い目に合うかもしれませんぞ」


 タレスの忠告に、ヒメは言い返すことが出来ない。巫女なら、自分と同じ悩みや苦しみを抱えていて、無条件に助け合えると考えていた。しかし巫女がいるということは、同じ悩みを抱えているということは、火の鳥とは違う鳥がいることを意味している。

 言葉に詰まるヒメを見かねて、タレスは助け舟を出す。


 「他の巫女に頼ることは難しいかもしれませんが、どこかに鳥を倒そうとする人間達の集団がいると聞いたことがあります。そこなら、もしかすると」

 「そこに行きましょう! 今すぐに行きましょう!」

 「しかし問題があります。私はその者達の居場所も、本当にいるのかどうかすらも知らないのです」


 今までヒメに助言を与えてきたタレスも知らないこと。彼も噂程度にしか知らず、それが実在しているのかすら怪しいと言う。確かな情報もないまま、噂だけを頼りに探そうとするのはあまりにも困難を究めることは明白だった。行き詰まった、という空気が2人の間に流れる。しかしヒメは諦めきれなかった。


 「他の人にも聞いて回りましょう! 何人か減ったとはいえ、まだまだ残っている人はいるのです! きっと誰かが知っているはず!」


 それは楽観的な予測であった。しかしそれに縋りたくなるほど、ヒメはこの状況を打破したいと強く思っていたのだ。

 そうして、2人による聞き取りが始まった。


 「うーん、知らないなぁ」

 「聞いたことないね」

 「なにそれ?」

 「本当にそんなものがあるんですか?」

 「ちょっと分からないわ。ごめんなさいね、力になれなくて」


 案の定、そう上手くはいかなかった。火の鳥が集めた人々の中で最も知識のあるタレスが知らなかったのだ。他に知っている者がいる方が珍しい。だが諦めずに聞いて回る。ほぼ全員に聞いて回った、というところで、ヒメは半ば諦めに近い感情で獣人に声をかけた。


 「あぁ、その方達なら知ってますよ。というか、僕は元々そこにいたんですよ」

 「え!? そうなの!? よければ話を聞かせて貰えないかしら!?」

 「えぇ、いいですよ。何からお話ししましょうか」

 「では獣人の子よ。その者達は一体どこにいるのだ?」

 「はい。僕が連れてこられる前、革命隊はここから東の方にいました。おそらく今もあまり遠くへは行っていないかと」

 「革命隊、というのはその者達の名前かな?」

 「はい! 僕達は各地へと赴き、鳥に支配されている人々を解放しようと活動していたんです! ......僕は捕まっちゃいましたけど」


 目を輝かせ革命隊について語る獣人の子。今まで、あまり人とコミュニケーションを取ることなくひっそりとしていたので、暗い性格なのかとヒメは勝手に思っていたが、どうやらそれは違ったようだ。ここまで熱中して語る人が、暗いわけがない。おそらく集団に上手く溶け込むことが出来ていなかっただけだろう。居場所があれば、本来の能力を発揮することなど造作もないのかもしれない。


 「素晴らしい考えだわ! 今すぐにでもその革命隊の所へ行きましょう! それでアイツをぶっ倒すのよ!」

 「いいですけど、いいんですか?」

 「どういうこと?」

 「えっと、ほら、色々あるんじゃないんですか? 命令されてることとか。鳥は人間を道具のように扱うとも聞きますし......」

 「あぁ、それなら大丈夫よ。アイツは私達のことなんかほっといてどっか行ったっきりだし」

 「お主にしてほしいのは、革命隊までの案内だな。現状、彼らの居場所を知っているのは君しかいない」

 「行くのは構いませんが、誰を案内すればいいんですか?」


 獣人の質問にヒメは答えられない。全くと言っていいほど考えていなかったからだ。彼女は頼る気持ちでタレスの方を見る。タレスはヒメに言われるまでもなく、考えをまとめていた。


 「まずは出来るだけ少人数で行った方がいいだろう。1回で全てをまとめるのは難しいだろうから、複数回に分ける。最初は信頼がおけて、ここで起こっていることを把握している人間を向かわせるのが望ましいな」

 「ならやっぱり私しかいないわ! 自分が1番信頼出来るし、アイツが来る前からここにいたんだもの!」

 「しかしあなたは巫女で、本来は安易に離れていい立場では......」

 「大丈夫よ。すぐ帰ってくるから。それに、ここに残ってる人達は怪我とか体力とか、色々事情があって残るしかなかった人達よ。皆のためにも、私が行かなきゃ!」


 真っ直ぐに人々を思いやるヒメの気持ちに、タレスは折れるしかなかった。それと同時に、タレスは微かに希望も感じていた。もしかすると、もしかするかもしれない。この人に託してみよう、そう思えたのだ。


 「それじゃあ行きましょう! 私、ヒメって言うの! あなたは?」

 「僕はナビです。よろしくお願いします」

 「よろしく、ナビ!」

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