表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
救炎のガルダ  作者: ドカン
3章 灰の翼
38/75

第38話 忘却の都

 「ま、まぁとりあえず先に進みましょ」


 ヒメの言葉に従い、この広い空洞の中を進む。じっとしていてもどうにもならないし、悪くなった空気も少しは良くなるかもしれない。

 周囲を見渡すと、なにやら無機質で灰色、そして縦に長い建造物が立ち並んでいた。


 「なんだろう、これ。凄くボロボロだけど……」

 「これはビルと呼ばれていたものよ。遥か昔はこの中に人々が集まっていたらしいわ」


 ナビの疑問にオコナが説明する。ビルと呼ばれる複数の建物。どれもボロボロで、もはや人が寄り付くような場所ではない。しかしそれでも、かつて誰かが使っていたのだろうと分かる痕跡があった。決して、鳥に合わせて作られたものではなく、人に合わせて作られた数々の建物に、ここで何があったのかをヒメ達に想起させる。


 「おい、あれ」


 ゴウマが上に指を差す。そこには巨大な鳥がこちらを見て佇んでいた。即座に剣を手に取り、戦闘の態勢に入る3人。


 「安心しろ。あれはオウムだ。こちらが何もしなければ、向こうも何もしない」


 ガルダがオウムと呼んだ鳥。こちらを見続けているものの、本当に何もしてこない。ただ目線を動かし、じっとしているだけだ。

 そして周りを見てみると、オウムは目の前の1羽だけでなく、周囲に何羽もいた。高く見渡しの良いビルの上で、ただじっとしている。


 「気味が悪いわね」

 「何もしてこねぇだろうな」

 「気にするな。それより先に行くぞ」


 ヒメ達はこの広い空洞の中を進んでいく。


 「ここを昔の人々は街と呼んでいたそうよ。多くの人が集まる場所という意味らしいわ」

 「へぇ」

 「じゃあここにはたくさんの家族がいたんだ! 母さんもさ、いつか一緒にこういうとこに住もうよ!」

 「……いえ、ここはいいわ」

 「さすがにこんな廃墟には住めねぇよなぁ。住むんだったら風が気持ちよくて、見晴らしの良い丘とかどうだ?」


 ヒメを中心に、シンとゴウマが話し始める。


 「うるさいなぁ、おじさんは黙っててよ」

 「なっ……! 俺はおじさんじゃねぇぞ!」

 「あはははは! おじさん! ゴウマが、おじさん!」

 「うるせぇ! 笑ってんじゃねぇシイト!」


 ヒメとふたりきりで話したかったシンが、話に加わってきたゴウマを疎ましく思い、少し毒を吐く。おじさんと言われたゴウマが顔を赤くして怒る。それに大笑いするシイト。ヒメはノリに付いていけず、ため息を吐く。

 進んでいく中で、周囲の景色も少しずつ変わっていく。同じような形のビルだけでなく、それぞれの形をした建物や舗装された道が代わる代わる出てくる。


 「凄いねぇ、見たことのないものばっかりだよ」

 「昔、と言っていましたが、どれほどの昔なのでしょうか。そしてこれほどの街を作り上げた人々はどういった人々で、どこへ消えたのか……。興味は尽きませんな」


 街の景色に興味津々のナビとミュソス。見るだけでなく、触ったりしながら思い、考える。

 そんな彼らを横目に、ヒメは頭がボーッとするのを感じていた。それはいつしか痛みに変わり、両手で頭を抑え、その場で悶え始める。


 「どうしたの?」


 オコナがヒメに声をかける。


 「う、うぅぅ……。なに、これ……」


 ヒメの頭の中には、見たこともない様子が映像のように流れていた。

 綺麗な街で暮らす人々。そこは、今ヒメ達がいる場所だ。ここにまだ人々が暮らしていた時の様子。ヒメはそれを見ていた。人々は見慣れない服を着て、何に使うのかも分からない道具を身に付けたり、手に持っていたりしている。


 「あなた達は誰……? どうして、そこにいるの……?」

 「ヒメ! 大丈夫!?」

 「母さん! しっかりして!」

 「なにかにうなされているようですが、一体何を見ているのでしょうか」

 「おそらくだが、この街にいた者達の記憶を見ているのだろう。何故見えているのかは、分からないがな」

 「多分、記憶の海で起こったことが関係してる。あの時ヒメが海の中に入ってしまったから、魚を食べた時だけじゃなくて、今も誰かの記憶が見れるようになってしまってる」


 ムウが推測する。イレギュラーな事態が、今のヒメの苦しみを作り出している。


 「では今ヒメ様が見ているのは、ここで暮らしていた人達の記憶ということでしょうか」

 「多分そう。でも何で今ここでなのかはムウには分からない」

 「もしかすると、土地に反応しているのかもしれません」

 「土地に反応……? そんなことがあるのか? それもムウの知らないことだ」

 「えぇ、世界樹のような特殊な状況、より具体的に言えば、神の影響が強い土地では、何か計り知れないことが起こっても不思議ではありません。もしかすると、ここもそのような場所なのかもしれません。まぁ、あくまで推測ですが……」


 ムウとミュソスがお互いに推測を重ね、考えをまとめていく。真実がどうかは分からないが、1つの指標、判断材料が出来ていく。


 「既に滅んだ人達の記憶、ね。とても進んだ文明だったそうよ」

 「文明? なんだそりゃ」

 「たくさんの人々が知識や経験を重ね、紡いでいき、作り出す豊かな世界のことよ。素敵なものだったと聞いているわ」

 「そんな素敵なもんが、どうして滅んだんだ?」


 こういうことにはあまり興味を示さなそうなゴウマが、珍しくオコナに質問する。


 「さぁ、分からないわ。誰もその理由を知らないのよ」

 「鳥のせいじゃねぇのか」

 「違うわ。鳥が来る頃には、既に滅んだ後だったわ」

 「来た頃? 始めからいたわけじゃないの?」


 オコナの言葉に、次はナビが疑問を持つ。

 次から次へと増えていく疑問。真実へと近付いているはずなのに、分かるごとに真実までの距離が遠くなっているようだ。

 この都、ひいては世界の謎に迫っていこうとしていた時、そこに突風が吹いた。


 「何をしに来た! ガルダ!」

 「ふん、ちょっとした野暮用だ。すぐに終わる」


 目の前に現れたのは、灰色の翼を広げた巨大な鳥。鋭いクチバシと爪。まるでガルダと瓜二つの姿。

 ゴウマとシイトが即座に戦闘態勢に入る。

 灰色の鳥は、ヒメ達の目の前に降り立ち叫ぶ。


 「ここはお前らの来る場所じゃねぇ! とっとと出ていけぇ!」


 灰色の鳥は強烈なオーラを感じる。こちらを警戒しているのか。それともここで戦うつもりなのか。どちらにしろ緊張は解けない。


 「残念だがここに来なければならなかった。それに足る理由があったのでな。ま、説明は面倒だから省くがな」

 「理由だと? そんなもんがあるわけがねぇだろ」

 「納得しないか。仕方がない。言い方を変えよう。千里眼で見た、と言えば伝わるか?」

 「なに!?」


 千里眼、という言葉を聞いた瞬間、灰色の鳥の表情が変わった。非常に驚いているのが分かる。

 灰色の鳥はヒメ達を見て、ナビを見つけたとたんに納得したように微笑んだ。


 「なるほど、導きの獣か」


 その瞬間、灰色の鳥は、その足でナビを掴み、飛び立った。


 「うわ!? うわわわ!? うわぁー!?」


 抵抗することも出来ず、ナビは灰色の鳥に連れ去られる。


 「ナビ! ナビを返せ!」


 灰色の鳥を追おうと瞬時にツナが飛び立つ。しかし灰色の鳥は力強く、縦横無尽にテクニカルに飛び、ツナでは到底太刀打ちが出来ない。何とか必死に食らいつこうとするも、ツナでは実力的に無理なようだ。

 そうして、ナビは灰色の鳥に完全に連れ去られ、後を追うことさえ出来なくなってしまった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ