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救炎のガルダ  作者: ドカン
3章 灰の翼
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第34話 知るべきこと

 ゴウマとシイトが振り下ろした剣はカモメを真っ二つに斬り裂いた。


 「ぬぉ!? こ、こんなことが!?」

 「あり得ないことだ!」

 「どうする!?」


 狼狽するカモメ達。その場で右往左往しながら飛んでいるばかりで、群れに混乱が広がっていく。


 「こっからいかせてもらうぜ!」


 一方でカモメ達とは対照的に、ゴウマとシイトは勢いに乗って、次から次へとカモメ達を斬り伏せていく。斬ったカモメを足場に次のカモメのもとへ。そのようにして、この場にいたカモメ達のほとんどを倒してしまった。


 「どうだ! ざっとこんなもんよ!」

 「存外あっけなかったね」

 「それだけ俺らが強ぇってことだ!」

 「そうかな。向こうが弱かっただけな気もするけど」


 あらかた倒したところで、カモメ達も無理を悟ったのか撤退した。ゴウマとシイトは上空から落ちていくカモメの死体の上に乗って、そのまま落下した。衝撃を吸収するためのクッションにしたのだ。

 地面にズドンと大きな音を鳴らしながらも、2人は地上に降り、剣をしまった。戦い疲れた2人をヒメ達が出迎える。


 「お疲れ様、ゴウマ、シイト」

 「2人ともすごかったよ! バッサバッサってあの鳥達を倒していっちゃうんだからさぁ! カッコよかったなぁ!」

 「そう思ってもらえるなら戦ったかいがあったぜ!」

 「お二方とも見事な御健闘ぶりでした。まずは戦いの疲れを癒やしてください。しばらくしたら、この先へと向かいましょう」

 「そうね。それがいいと思うわ」


 ミュソスの提案にヒメが同調する。そこにガルダも戦いを終え、戻ってきた。オコナ達も一緒だ。


 「ほう、お前達だけであれを倒したのか」

 「結構やるのね。さすが聖剣に選ばれただけあるわ」


 周囲に倒れているカモメ達を見て、ガルダとオコナが素直に褒める。ゴウマは自慢気に、シイトは気怠けにその言葉を受け取った。ヒメはあまり他を褒めることのない、あるいは全く褒めたことなどないガルダのその言葉を聞いて、驚いている。それが少し顔や態度に出てしまっているものの、他がそれに気付いている様子はない。


 「海はすぐそこだ。煩わしいカモメもだいぶ片付いた。行くか?」

 「行くわ。でもゴウマとシイトが休んでからよ」

 「それなら問題ねぇ。体の疲れならもう取れたからな。お前もそうだろ」


 ゴウマがシイトの方を見つめて言う。


 「当然。疲れなら君より早く……いや、そもそも疲れてないし。別に休まなくても平気だったよ」

 「2人がそれでいいならすぐに行きましょ」


 そして再びヒメ達はオコナ達の背中に乗り、後少しのところまて迫った海へと向かった。


 「これが海……」

 「こんなに大きいんだぁ……」

 「大きい! 大きい!」

 「不思議! 不思議!」

 「これも神様の力! 大きくて不思議な力!」


 遠くから見えてはいたが、間近で見ると改めてその大きさを感じざるを得ない。ヒメ達は初めて見る海に驚いていた。

 そして今までと同じように言葉を連呼するモロとツナ。一方でムウは海を神様の力だと言う。

 海には多くの魚が泳いでいる。日の光が鱗に反射し、キラキラとした輝きが目に入る。


 「まだカモメ達がいるが……こちらには気付いていないようだ」

 「気付いても襲ってはこないでしょうね。さっきも来なかった連中だもの」

 「気にしなくてもいいってこと?」

 「えぇ、そうよ。ムウ。あなた、少し賢くなったんじゃない?」

 「本当? なら嬉しい!」


 何羽かのカモメ達が次から次に海へとダイブし、魚を素早く、そして正確に捕えていた。カモメ達は嘴で捕えた魚を海の外へ出てからそのまま丸呑みしていく。

 ヒメ達は実際に目の前でカモメが魚を食らう場面を目撃した。


 「あのカモメをよく見ろ。アイツの頭には今記憶が流れ込んでいるのだ。すっきりと、それでいて複雑そうな顔をしているだろう」

 「なに見てるんだろう」

 「この世界の秘密にでも関わるようなことなら、私も知りたいのですが……。流れ込んでくる記憶とはどういうものなのでしょうか?」

 「言っただろう。全てだ」

 「世界の秘密からどうでもいいことまで。あるいは誰かにとって知られたくないことまで、本当に全てが見えるのよ。でも魚が持ってる記憶は、魚によって様々。それぞれが違う記憶を有しているから、全部を知りたいのなら、全部の魚を食べるしかないわね」


 そんなことは無理だ。無限の胃袋があるなら別だが、ヒメにそんなことが出来るわけがない。考えずとも分かる。


 「じゃあ、望んだ情報が手に入るのは運次第ってこと? ここまで来たのに?」

 「そうだ。しかし、一部例外がある」

 「例外、ですか?」

 「定められた運命があるのよ。ここに来た者が知るべきこと。運命に選ばれた者は必ず、知るべきことを知る」

 「その選ばれた奴ってのが魚を取ったら、一発で知りたいことが手に入るのか」

 「それは少し違うわ。「知るべきこと」が手に入るのよ。「知りたいこと」が手に入るわけではないわ」

 「えぇ!? じゃあヒメが魚を食べても、僕たちのいた場所から皆がいなくなった理由は分からないかもしれないってこと!?」

 「そういうことだ。私達が何を知ることが出来るのかは、それこそ神しか知り得ないこだ」

 「それでもやる? 運命が決まっているとしても、決めるのはあなたよ」

 「私としてはやってもらいたいがな。その方が良い」

 「ガルダは黙ってて。私はヒメに聞いているの」

 「フン」


 オコナはヒメに問いかける。「知りたいこと」ではなく、「知るべきこと」が手に入る。神が知るべきだと定めたこと。それが何かが分からない。もし魚を食べたら、一体何を知ることになるのだろうか。しかしそれはおそらく、いや絶対に、これから必要になること。

 私にとって、必要なこと? ガルダの巫女としての、使命のようなものだろうか。きっと私の知りたいことは教えてはくれないだろう。神様はきっと、そんなに優しくはないから。

 ヒメの顔が曇る。彼女は未来のことを考える。これから先の自分の未来を。


 「きっとこれからも、ろくでもないことが起こるのでしょうね。知るとしたら、きっとそのことに関してだわ」

 「無理はしなくてもいいのよ」

 「無理なら、もうとっくにしたわ。だから、私は私の「知るべきこと」を知りにいくわ」

 「ハッハッハ! それで良い! いよいよ巫女として役目が分かってきたようだな!」


 ご機嫌なガルダ。ヒメの巫女としての成長に喜んでいる。しかし一方で、それ以外の者達の表情は明るいと言えるものではなかった。


 「ほ、本当にいいの? ヒメが嫌ならやらなくてもいいんだよ?」


 ナビが言う。ナビはずっとヒメのことを気にかけているし、ヒメが巫女の役目を負っていることをよく思っていない。今もヒメが無理をしているのではないかと心配している。


 「いいの。仮に知りたいことが知れなくても、今知れることはきっと、これから先必要になってくることよ。別に、巫女としてどうこうとかじゃないわ」

 「そ、っか……」

 「で、私は決めたんだから、とっとと魚を捕まえてきてくれない? 早くしないと決意がなくなるわよ」

 「……私は行かない」

 「は?」


 ガルダが放たれた意外な一言。どうやら彼は魚を捕る気がないらしい。


 「どういうことよ! あなたが言ったんでしょ!」

 「それとこれとは話が別だ。行かないものは行かない。私はそう決めた」


 強情なガルダ。それを見たオコナが一言。


 「あなた、もしかして海が怖いの?」

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