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救炎のガルダ  作者: ドカン
2章 黒の翼
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第25話 戦い続ける者達

 突如としてヒメとタレスが眠りについた。


 「ムギン様に楯突いたからよ!」


 リリィは、まるで復讐でも成し遂げたかのように満足気な表情をしていた。

 一方でガルダ達は一転して窮地に追い込まれる。無防備となった巫女を狙うことなど、敵かたしてみれば、なんとも容易い。それぞれを背中に乗せたオコナとムウが必死に2人を守ろうとしているが、余裕がないように見える。


 「聖剣に選ばれた騎士なら巫女を守れ!」


 ガルダが号令をかけるように叫ぶ。


 「言われなくても分かってんだよ!」


 強制力はないが、ゴウマはいち早くヒメのもとへ走り出した。


 「待て!」


 後を追ってラズもヒメのもとへ向かう。ヒメのもとへと近付くことを阻止するかのように、ラズは再び激しい攻撃をゴウマへと加えた。

 それをなんとか凌ぎきることに精一杯で、このままではヒメを守れそうにはない。もし今ハゲワシの大群でも来られようものなら一方的にやられてしまうだろう。


 「おい、シイト! お前がなんとかしてヒメを守りやがれ!」

 「僕? 僕も忙しいんだよね。目の前の相手で精一杯って感じ。あ、ソイツの相手ってことなら引き受けてもいいよ」

 「精一杯っつったろ?!」

 「いいだろ? こんな手応えのある戦い初めてなんだ。どこまでやれるか試したいんだよ」


 どこか冷めた目をしていたシイトだったが、この追い込まれた状況に密かに心を踊らせていた。自分と同等か、それ以上の強さを持つ相手と戦うことを楽しんでいる。追い込まれれば追い込まれるほど、彼は自らの力を知りたくなるのだ。


 「俺じゃ力不足かい?!」


 シイトと戦っているブライが、口角を上げ、挑発するように聞く。今戦っている者の前で、もっと相手してもいいというのは、相手の神経を逆撫でするようなことだ。もともと戦いに向いているわけではないブライだが、そのようなことを遠慮なく言われることは男としてのプライドが許さない。


 「力不足だって思うなら本気だしなよ!」


 やはり火に油を注ぐような言葉を返すシイト。しかし彼の一撃もどこかブライに届かないもどかしさがあった。


 「ヒメに近付くなぁ!!」


 そしてなおもゴウマを追うラズ。少しずつ感情の制御が効かなくなってきており、暴走とでも言うべき状態となりつつある。


 「おいおい、ヒメが見てねぇからって好き勝手しやがって!」


 ラズは力まかせに所構わずあちこちに攻撃を振りまく。聖剣から放たれた斬撃が、周囲へと飛び散り、被害を拡大させる。


 「ちょっとぉ! こっちまで来てるんですけどぉ!?」


 遠く離れたリリィにまで斬撃が届き、彼女がビビりながらも威勢よく文句を言う。一歩間違えれば体が切断されてしまうかもしれなかった状況に、リリィはとても迷惑そうにしている。

 トビ達も飛び交う斬撃を避けることに精一杯で、他のことにまで手が回らない。ヒメとタレスを守ることすら、非常にギリギリなのだ。


 「大変そうだねぇ。手伝おうか?」


 ゴウマとラズの戦いを見ていたシイトが小馬鹿にしたような態度で協力を申し出る。激しい攻撃に防戦一方となっていたゴウマを見て、上から目線で嘲笑うかのように言うのだ。


 「......いや、いい」

 「!」

 「コイツは俺が倒す!」


 ゴウマは目をカッと開き、まるで先程までとは打って変わって攻撃に出る。剣には剣を、斬撃には斬撃を。そして止まらない攻めにはこちらも攻めを止めることなく続けること。やがて暴走しているラズと同じ力でゴウマは戦いの土俵にのった。


 「へぇ......」


 それを見てどこかつまらなさそうに、しかしどこか心を踊らせながら、シイトはゴウマの戦いぶりに目を見やる。

 だがゴウマがラズと同等の戦いをしたからといって周囲への被害がなくなったわけではない。むしろ悪化した。先程よりもあちこちに飛ぶようになった斬撃が全員を襲う。


 「ブライー! ゴウマを助けて! このままじゃヒメが危ないよぉ!」


 ナビの叫びが響く。悪化の一途を辿る戦いに危機感を募らせたナビは、ブライに助けを求めた。しかしブライからの返事はない。


 「ブライー! ブライー!」


 何度も何度も繰り返しナビは叫ぶ。聞こえていないのなら聞こえるまで叫び続ける。だが一向にブライからの返事はこない。


 「呼ばれてるよ。返さないの?」

 「そうしたいのは山々なんだけどな......」


 シイトはナビの期待に全く応えないブライに問いかける。ブライは顔を歪め、複雑な表情を見せた。彼の言葉からは、期待に応えようとする意思が確認できる。しかしそれと同時に、応えられない理由があることも分かる。


 「体が思うように動かないんだよ。あの鳥、口では色々と言っておきながら、自分の思い通りになるように力をかけてきてやがる。とんだ詐欺師だよ」

 「じゃあ今その口から出てる文句もムギンとかいう奴の命令ってこと? そうは思えないけどな。逆らおうとすれば逆らえるんじゃないの? ほら、あそこで暴れまくってる人みたいにさ」

 「一応これでも抗おうとはしてるんだ。文句は精一杯の反抗ってことで。人としての理性まで失う気はないよ」

 「理性? 優柔不断じゃなくて? 振り切ることもしない、どっちつかずなだけでしょ」


 シイトに悪気はない。だからこそ、思ったことを率直に言う。彼にとって、ブライの都合などはどうでもいいことだ。そしてシイトはさらに言葉を重ねる。


 「そういう態度が1番迷惑になってるよ」

 「ッ!」


 だからここで倒されるべきだ。シイトの言葉からはそんな意味が察せられる。そしてブライはそれに言い返すことが出来ない。シイトの言っていることが、ブライには深く刺さってしまってしょうがない。


 「だからって倒されるわけにはいかないな。鳥の味方なんかしたくないけど、死ぬのも怖いからね」


 優柔不断、どっちつかず。それらは認めるしかない。事実なのだから。その上で、それを理解してなお、ブライは自分の2つの心に揺れる。生前から変わることのない、鳥には屈しない心と、1度死んだからこそ思う2度と死にたくないという心。そしてそれらはどちらも自分の素直な心であった。その狭間に立つかぎり、ブライは優柔不断であり続けることになる。


 「もぉー! どんだけちんたらヤってるのぉ!? リリィちゃんそろそろ飽きてきたんですけどぉ!」


 痺れを切らしたリリィが声を荒げる。誰にも相手をされず、かまってほしいと言わんばかりに叫ぶ。


 「むぅぅぅ」


 しかしそれでも誰にも相手されない。頬に空気を入れ、膨らまし赤くしてあざとく怒る。ついにはその場に寝転んで、退屈そうにゴロゴロし始めた。


 「あ、そういえば聞いたんだけどぉ、そこのブライさんは聖剣もないのに鳥に挑もうとしたんだって? ププッ! 鳥を倒すことが出来るのは聖剣だけなのにねー! バーカバカバカ!」


 たまたま目に入ったブライをいじり始める。リリィとしては少なくともブライが何か反応するだろうと思ったが、彼女にとっては思わぬものが釣れた。


 「ブライをバカにするなぁ!」


 横からナビが抗議の声を上げる。


 「バカをバカって言って何が悪いんですかー?」

 「ブライはバカじゃないー!」

 「バカ!」「バカじゃない!」


 その後も延々と2人の低レベルな言い争いが続く。そしてそれを聞いて最もうんざりしているのは、言うまでもなくブライだ。


 「はぁ......」

 「......なんというか、ご愁傷さま」


 さすがのシイトも気遣った。剣を振りながら。

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