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救炎のガルダ  作者: ドカン
2章 黒の翼
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第16話 2人目の剣士

 それぞれが離れ離れになってしまった。ヒメやタレスがそれぞれの場所で鳥や世界樹の秘密に迫ろうとしている一方、ゴウマもまた、世界樹の内部を探索していた。


 「ったく、ヒメと離れちまった。これじゃヒメを守れねぇ」

 「大丈夫! 仲間が付いてる!」

 「あぁん? あの鳥野郎......いや野郎っぽくはなかったな。どっちかってーと女っぽいっていうか......。いずれにせよ鳥なんかにそんなこと任せられっかよ! 早く合流するぞ!」


 ゴウマは4羽いたトビの1羽と共にいる。彼がいる場所は、ヒメともタレスとも異なる、これまた不思議な場所であった。

 不気味という言葉が似合う。暗く、陰湿な空気の漂う雰囲気は、快活なゴウマの好むところではなかった。

 巨大な洞窟のような場所で、鳥達が飛ぶには十分な広さではあるものの、ゴツゴツとした岩肌に囲まれ、足元には得体のしれない液体がちょっとした窪みに水溜りを作っている。ニオイもいいものではなかった。鼻にツンとくるような刺激のあるニオイ。あまり長居はしたくない、そんな感情を抱く。


 「合流......。右か!? 左か!? どっちだ!」

 「上! 上! ガルダがそこにいる!」

 「ガルダの場所を聞いてるんじゃねぇ。ヒメの場所を聞いてんだ! 分かんねぇのか、お前!」

 「巫女、ガルダのもとに来る! 絶対来る!」

 「......なるほどな。ならひとまずそこを目指すか」


 ゴウマが言われたことに納得し、ガルダのいる場所を目指そうとした時だった。突如として壁を打ち破って、トビではない巨大な鳥が姿を現した。


 「ハッハー! こんなとこに人間がいるじゃねぇか! どうしたぁ、迷子にでもなったかぁ!? 俺が向こう側に送ってやんよ!」


 ハゲワシである。現れては急に襲いかかってきた。話し合って分かるようでもない。


 「チッ!」


 ゴウマは舌打ちをし、剣を抜く。ハゲワシと一戦交えるつもりだ。早速ゴウマに降りかかるハゲワシの爪を剣で受け止める。そして剣を右へと移動させることによって、ハゲワシの勢いを利用しながら攻撃を受け流す。


 「アッ!?」


 大きな力は急には進路を変えられない。ハゲワシに大きな隙が出来た。ゴウマは地面を蹴って、さらに距離が近づいたハゲワシの体を蹴る。ハゲワシを見下ろすまで高く飛んだゴウマは狙いを定め、そこに向かって自身の全体重をかける。剣はハゲワシの首を切り裂き、ハゲワシは首の上と下を分けて、その場に倒れ込んだ。


 「ふぅ、こんなもんか」

 「......倒せるのか」

 「おう。どうした、怖気づいたか?」

 「手伝ってやってもよかったのに」

 「あぁ!? 鳥の手なんか借りねぇよ! 第一名前もねぇ奴、なんて呼べばいいか分かんねぇだろうが!」

 「名前?」

 「そうだ。ないんだろ。呼びにくいったらありゃしねぇ」

 「ならお前が付けろ! 何でもいい! 呼びやすい名前!」

 「......んだよ」


 トビにそう言われ、ゴウマは少し悩む。鳥とはあまり関わりたくないと思っていたが、お願いされると断ることが出来ないのがゴウマだ。


 「そうだな。諸々......そうだ、モロでいいだろ」

 「モロ! モロ! 俺の名前! モロ! よろしくな! ゴウマ!」

 「うるせぇ! 気安く名前で呼ぶんじゃねぇ!」


 ゴウマとしてはだいぶテキトーに付けたつもりだったのだが、喜ばれるとは思わなかった。鳥とは気が合いそうにないと感じたが、それを口に出すようなことはしない。ただ、あまり馴れ馴れしくするつもりも彼にはない。しかしモロの方はどうやらそのつもりはないらしい。かなり親しく接してこようとする。


 「......まぁいい。とっとと気を取り直して上行くぞ」


 ゴウマがモロの背中に乗り、上を目指そうとした時、洞窟内に風が吹く。それもかなりの勢いがある。

 こんな場所で風を感じるということは、決して自然なことではない。何かが起こっている。ゴウマは再び、剣を手にした。

 モロの背中の上で体勢を整え、風の正体がやってくるのを待つ。音も段々と大きくなる。


 「ウァァァァ!」


 やはり、というべきか。叫び声を上げながらハゲワシがやってきた。しかしおかしい。既に傷を負っている。それに自分からゴウマ達の前にやってきたような感じでもない。ふっ飛ばされてきたような出現の仕方。


 「どういうことだ」

 「......もしかして! もしかして!」

 「おいモロ! 何か分かったのか!?」


 慌てた様子のモロ。恐怖というより焦りのようなものをゴウマはモロから感じた。

 ハゲワシがやってきた方から、何か鉄器を引きずるような音と足音が聞こえる。


 「う、お、ぉぉぉ」

 「ふぅん、まだ息があるんだ。案外しぶといね」


 現れたのは凛々しく見える少年であった。彼はゴウマと似た剣を引きずりながら、微かに息をしている地に伏せたハゲワシにゆっくりと近付く。


 「ま、今すぐ楽にしてやるよ。じゃあね」


 そして少年は、ハゲワシの側まで近付くと、持っていた剣を振り上げ、ハゲワシにトドメを刺した。ハゲワシの息は確実に止まった。


 「......ん? 誰、君達?」

 「まさかこんなところで人間に会えるなんてな。相手に名前を尋ねる時は、まず自分からどうだ?」

 「はぁ。てか、それ鳥だよね。なに? ぶっ殺していい感じ?」

 「うわ、アイツ野蛮! モロ、アイツ好きじゃないかも」

 「俺も生意気な奴は嫌いだ」

 「仲良いのは結構なんだけどさ、初対面で人のこと嫌うとかなに? マナーがない感じ? ちょっと失礼なんじゃないかなぁ。ま、いいや。僕の名前はシイト」

 「あっさり名前教えるじゃねぇか。素直なんだな」

 「君達とは違うんでね。で、僕は教えてあげたけど? 君は?」

 「俺の名前はゴウマだ」

 「モロ! 俺の名前はモロ!」

 「鳥の名前知ったって意味ないだろ......。で、ゴウマ、だっけ。なんで鳥なんかと一緒にいるわけ? 死にたいの?」

 「事情があってな。だからこんなところでチンタラしてるわけにはいかねぇんだよ」


 ゴウマとシイト。お互いに一歩も譲る気のない、強気の姿勢が続く。場の空気は緊張で満たされ、一触即発の様相を呈していた。

 お互いの動きを注意深く観察する2人。いつ攻撃されるのか分からない状況で敵の情報を盗み取ることは、その後に訪れるかもしれない戦いにおいて強いアドバンテージとなる。

 そんな中、シイトがゴウマの持っている剣について気付く。そしてそれはゴウマも同じだった。とてもよく似た剣を持っている。そして何故だか、その剣から視線を離すことが出来ない。


 「おい、お前」

 「奇遇だね。僕も思ってたところだよ」


 答えの分からない問題を解く方法がある。それは似た問題を探すことだ。

 そしてゴウマとシイト。2人は答えの分からない問題を持つもの同士である。目の前には似た問題、いや全く同じ問題を抱えた奴がいる。だから聞く。


 「「その剣、どこで手に入れた?」」


 2人の声が重なる。鳥を倒す、タレスの言葉を借りるならば、聖剣。それが2本。そして、聖剣に選ばれた者も今ここに2人いる。

 お互いに、自分以外に聖剣を持っている者と出会うのは初めてだ。興味もあれば、自分が聖剣を使えるからこその恐怖、危機感、あるいは別の何か特別な感情のようなものが芽生える。

 これ以上は言葉もいらない。2人は目つきを変え、互いに剣を手に取る。

 そして大きな力がぶつかった。

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