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救炎のガルダ  作者: ドカン
2章 黒の翼
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第14話 神鳥の巫女

 ハゲワシの介入によって四手に分かれることとなったヒメ達。それぞれ別の場所から世界樹の内部へと入り込んだ。

 ヒメと共にいるのはリーダー格の妖艶なトビである。

 世界樹の根っこの付近に降りたヒメ達。世界樹の中は空洞になっており、広大な空間が広がっていた。神秘的で、樹の中であるにも関わらず、優しい光が差し込んでいる。そのため周囲は明るく、自分がどこにいるのかがよく分かる。足元には砂か灰のようなものが重く積もり、歩きづらくなっていた。


 「さっきはごめんなさいね」

 「別にいいわ。ところであれは何なの?」

 「あれはハゲワシ。私達と似たような存在。彼が邪魔してきたのは、きっと彼がムギンに従っているから」

 「ムギン?」

 「えぇ。神鳥ムギン。神の両翼の片割れ。最も偉大な鳥よ」

 「神鳥......。それに従ってるからって、どうして私達の邪魔をするのよ」

 「それはね、ガルダがムギンに戦いを挑んだから。そのためにガルダの仲間である私達を倒そうとしてきたのよ。きっと今も狙っているわ」

 「仲間って、私はそんなものになった覚えないわ!」

 「あら、でも人間達の中じゃ、あなたが1番の関係者じゃない。ガルダの巫女さん」

 「......ッ!」

 「そんな悔しそうな顔しないで。私はあなたのことを応援してるのよ?」

 「は? 応援?」

 「えぇ。小さいのに健気に頑張ってるでしょ? 見てて応援したくなっちゃうわ」

 「......」


 トビのその言葉に返すべき反応が思い浮かばないヒメ。鳥にはそう見えているのか、それともこのトビがただ単にずれているだけなのか、分からないのだからどうしようもない。


 「......で、ここからどうするの」

 「そうね、ひとまずは上を目指すわ。彼もそこにいるはずよ」

 「上、ね。アイツはこんなとこで何してんのよ」

 「気になる?」

 「悪い?」

 「いいえ。契約している主が何をしているのかを知ることも巫女の役割よ。知ろうとすることは何も悪くないわ。むしろ義務であるぐらいよ」

 「......そう。で、何してんのよ」

 「使命を果たしているわ。彼には生まれた時から与えられた使命があるの。それを私の言葉で説明するのが難しいのだけれど」

 「使命? それってさっき言ってた神様が関係してたりするの?」

 「あら、勘がいいわね。そうよ。だから大事な使命なの」

 「ふぅん」


 ガルダがどんな使命を抱えていても、ヒメには興味などなかった。しかし彼女自身が「アイツ」に振り回されて、都合のいいことをさせられるのも気に食わない。もし機会でもあれば邪魔してやりたいぐらいだが、とくに方法も思いつかない。自分の意思でここにはやってきたが、今はやれることが限られていることも気に食わなかった。


 「そういえば、あんた達って名前とかないんだっけ」

 「えぇ、そうよ。私達はトビであって、それ以上でもそれ以下でもないの。それがどうしたの?」

 「呼びにくい。さっきなんかとくにそうだったわ。似たようなのが4羽もいて、話しかけたくても話しかけずらいじゃない」

 「フフッ、そんな風に思ってたの? 気兼ねなくしてくれてよかったのに。私もあなた達とお喋りしたいと思ってたのよ」

 「お喋りじゃなくて、大事な話とか色々あるじゃない。それすらもやりずらいって言ってんの」

 「じゃあどうするの?」

 「名前」

 「え?」

 「名前がないと駄目でしょ。ないなら私が勝手に付けるわ」

 「あら、面白いじゃない。どんな名前を付けてくれるのかしら」

 「......」


 ヒメは悩んだ。名前を付けた経験などない。自分が付ける以上、あまり不格好なものにはしたくないが、アイデアも思い浮かばない。仕方なく辺りを見渡す。

 目に入ったのは、この神秘的な空間に漂う、なんだかよく分からない、光の粒のようなもの。そしてそれは地面に落下し、足元の砂とも灰とも断定できないものの一部になっていくのだ。

 ヒメはジッとそれを見る。手に取って触れてみる。とても軽い。

 なんとなく右足を振り上げてみた。足元のそれは舞った。まるで粉のようだ。


 「ゲホッゲホッ」

 「大丈夫?」

 「うん」


 粉、こな、コナ。


 「そうだ、オコナ」

 「オコナ? もしかして、それが私の名前?」

 「えぇ、そうよ」

 「......そう、悪くないわ。ありがとう」


 オコナは自分に付けられた名前を聞いて、微笑んだ。


 「そしたら早く行きましょう。上でしょ? もう一度あなたに乗っていけばすぐじゃない」


 改めて目的の場所まで向かおうとするヒメ。しかし彼女は何かの気配を感じ、気配がした方を見る。そこには人影のようなものがあった。近くないのでよく見えなかったが、なぜだか懐かしいような気がする。


 「どうしたの?」

 「あそこが人がいたような気がしたんだけど......」

 「人?」


 オコナには見えておらず、気配も感じていなかったらしい。あれはヒメだけが見た幻だったのかと思い、彼女はオコナの背中に乗ろうとした。

 その瞬間、ヒメでもオコナでもない、若々しく甲高い女性の声がどこからか聞こえてきた。


 「はぁーい! そこにいる哀れな巫女さーん!」


 その声の主はヒメとオコナの前に突如として現れた。黒いロングヘアーに、真っ白な肌。小綺麗なドレスを着こなし、整ったスタイル。そして自信ありげな表情で、ヒメに語りかける。


 「私ぃ、リリィって言いまーす! 短い間だけどぉ、同じ巫女として、よろしくね!」

 「リリィ? それに巫女って」

 「あなた、もしかして」

 「あ、そこのトビさんはお察しがいーですね! そうです! 私こそが神鳥ムギンの巫女なのです! はじめましての今回はぁ、なんと私が直々に挨拶に来ちゃいました! むぅー、こんなこと、特別すぎるVIP待遇なんだぞー! 感謝してね!」


 神鳥の巫女を自称するリリィと名乗る女性は、他者を寄せ付ける気のないハイテンションは語りによって、ヒメとオコナを置いてけぼりにした。ナチュラルにこちらを見下す姿勢と、自信に溢れた表情からは余裕が見て取れる。


 「で、挨拶は終わり? じゃ、私は行かなきゃいけないから。あんたみたいなのを相手にしてる暇なんてないの」

 「もー! せっかちな人は嫌われますよ! 今回ここに来たのは、大事なお知らせがあるからでーす! おたくのガルダさんじゃ、私のムギン様には勝てっこないんだから! とっとと諦めてお家に帰ってくーださい! じゃね!」


 そう言うと次の瞬間、リリィと名乗る女性はその場から姿を消していた。彼女の言っていたことは、ヒメにとって初めて知ることが多く、あまりピンときていない。オコナに聞くしかないだろう。


 「なに、今の」

 「ムギンの巫女、もう来たのね。これは思ってたより事態が進んでいるかもしれないわ」

 「事態ってなによ」

 「あら、そこから知らなかったのね。これって放置プレイ? それとも放任主義?」

 「どっちだっていいから早くしてよ」

 「そうね。巫女は知っておかなきゃ。今、ガルダはね、神鳥ムギンと戦っているの。そして、ムギンに勝つこと。それが彼の使命」

 「どうして、そんな」

 「どうしてかしらね。でも彼は生まれた時からそう運命づけられていたのよ。今までずっとそのための準備をしていた。そしてその一部に、あなたがいる。これもきっと運命なのよ」


 ガルダは神鳥と戦う使命を持ってこの世に誕生した。そしてガルダは自らと契約する巫女としてヒメを選んだのだ。

 戦いは既に始まっていた。

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