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番外編 出産、そして・・・

前半はおまけっぽく、いわゆる番外編です。


そして後半は数年後の世界です。

「絶対嫌だ!!」

「なんで?今さら恥ずかしがることでもないじゃん」

「そういう問題じゃない!とにかく嫌だから」

「それじゃぁプレステで俺に負けたバツゲームにならないだろ・・・」

 それは今から2時間前の出来事。夕ごはんを食べ終わって暇だから美咲とプレステをやっていたときのことだ。懐妊祝いとして清水夫妻からもらった格闘ゲームをやっていたら、年甲斐もなく燃えてしまった。

「負けたほうが勝ったほうの言うこと聞くってどうよ?」

 そのセリフを言ったのは美咲だった。このときの僕は意味不明な自信があって勝負に乗った。昔からファミコン、64、プレステ、とにかくゲームの勝負にはなぜか強かったからだ。

「私が勝ったら、孝介一生ごみ当番だから」

「そんなら俺が勝ったら・・・・・」


 僕が出した条件は、美咲と一緒にお風呂に入ることだった。

 だけど、いざゲームに勝っても美咲はかたくなにそれを拒み続けた。美咲の言い分はとにかく恥ずかしいらしい。

「明るすぎるんだよ・・・」

「・・・・・わかったよ。じゃぁ肩でももんでもらおうかな」

 デスクワークで疲れ始めた肩と腕をぶんぶんと回してソファに座ると、突然美咲に首を絞められてしまった。冗談じゃなくぐぇっとなった。

「約束は約束だ」

 異様に低い声で美咲は先にお風呂場へ向かって行った。


 お湯を溜めてから15分。溜まったことを知らせるぴーっという機械音を聞いて僕らは脱衣場へ行く。

 実は、僕は女の人とお風呂に入るのは初めてだった。もちろん昔は母と入っていただろうが、つきあっていた彼女ともお風呂だけは一緒に入ったことはない。だから、美咲とも初めてだ。

 僕らは無言で服を脱ぎ、浴室に入っていく。互いに簡単に体を洗ったり、顔を洗ったりしてから浴槽につかる。

「いい湯だー・・・」

 僕が能天気にくつろいでいるのに対し、美咲は正座してとても小さくなっていた。

「そんなに恥ずかしがらないでもいいって」

「孝介ってさ」

 美咲は僕の一点を見つめて目を離さない。それが僕の足だということに気づいた瞬間、がしっと足を持ち上げられてしまった。完全な不意打ちで、僕はそのまま頭がお湯にどぼんとはまった。

「ごめん。ただ、毛が少ないよなって思って」

 美咲はぱっと足を離す。ようやく僕は起き上がれた。っていうか、かなり驚いた。

「なんの・・・・なんの話・・・ですか」

「男の人って足もっとスネ毛がすごいじゃん。孝介はそんなにだなーって」

 確かに、高校のときにそんなことを言われたことがあった。どうも毛穴が少ないのか、ひげもあんまり生えないのだ。

「だから俺はハゲるって」

「ハゲたら離婚な」

「なにそれ。もう離婚宣言?」

 わりとシャレにならないことを言われて、少しショックだった。だけど、美咲は苦笑して手でお湯を飛ばしてきた。

「冗談だ・・・・あれ、またお腹痛いや」

「お腹?」

 聞き返してから僕ははっとした。これはもしかしたら・・・・・

「陣痛!?」

「どうだろ・・・ただの便秘かもしんない」

 とは言ったものの彼女の腹痛は結構ひどいらしい。すごく迷った挙句、僕は美咲を病院に連れて行くことにした。


「陣痛ですね。もうすぐ生まれると思います」

 女医さんにそう言われたときは、予定日よりも早かったからかまだ実感がわかなかった。

 生まれる?僕たちの子供が?

「葉山さんが傍にいてしっかり奥さんを支えてあげてください」

「はっはい!」

 なんて意気込んでみたものの、いざ美咲の傍に行くと逆にこっちが不安になってしまった。

 普段顔に汗をかかない美咲がびっしょりと汗をかき、何かに耐えるようにぎゅっと目をつむっていた。

「美咲!」

「あ・・・こーすけ・・・・」

「俺がずっと傍にいるから、だから・・・大丈夫」

 何が大丈夫なんだろうか。自分に問いかけたが、美咲は苦しそうに顔を歪ませた後、しっかりと頷いた。


 それから何時間たっただろう。美咲は時々うめき声をあげながらもまだお産を迎えていなかった。

 情けない話だが、僕はずっと不安に押しつぶされそうだった。美咲の手を握っていなかったら、きっともっとパニックになっていただろう。

 近くで看護士さんが美咲の汗をふいている。僕もそれにならって、持ってきたタオルで美咲の汗をふこうとした。だけど、彼女の手を離そうとしたが、美咲は僕の手をぎゅっと握ったまま離そうとはしなかった。

「大丈夫。大丈夫だから」

 少し目を開けて、美咲は僕の声に頷いた。

 そして、そのときから彼女の表情がさらに苦しいものに変わった。


 新たな命が誕生し、元気な産声をあげたのはそれからすぐのことだった。








 今さらと言われるかもしれないが、ここでの一人称が『僕』なのに、会話では『俺』になっている。

 これは、今の僕が昔のことを思い返した話だ。

 今、僕の傍には4歳になった娘がいて、一緒にしゃがみこんで合掌している。ある人のお墓の前で。

「お父さん、ずっとお祈りしてる」

 あどけない表情で娘の(ひかる)は話す。僕は光の頭をなでた。

「とっても大切な人だよ。この人がいなかったら、きっと光には会えなかったかもね」

 光の驚いた顔を見て僕は立ち上がる。墓の主に目配せして光を促して帰り道を行く。

 1年に1回、この日になると今までの思い出が鮮明に蘇る。1つ1つの偶然が今の僕を生み出してきた。

「あっ・・・」

 目の前にある人物が現れた。光が嬉しそうにその人のもとへ駆けていく。

 僕も光の後に続いた。一生かけて守りたい人のもとへ・・・・・



   END・・・・・

ここまで読んでくださってありがとうございます。


誰のお墓なんでしょう・・・?

そして、最後に誰が現れたのでしょうか・・・?


お墓の人も最後に現れた人もこの作品に登場した人です。

その人は―・・・・・・・・




で・・・・

誰もわからなかったらその人物の名前を書こうと思ったのですが

何人かの方に感想をいただき、悩みました・・・

皆さん正解です。だから、予想した人がその人物だと

思ってくださって大丈夫だと思われます。

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