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番外編 出会い(美咲視点)

いつか書こうと思っていた美咲視点の出会い。

なぜここで?と思うかもしれませんが、

まぁ長い目で見てくれると嬉しいです。


これが作者の性格だったりします・・・

 今思えば、あのときの私を救い出してくれたのは、他でもない孝介だったんだ。

 親の決めた婚約者なんだから仕方がないと半分あきらめていたところもあった。

 だけど、知ってしまった。自分が幸せになりたいと思っていることを・・・・・・あの人に会ってから。



 最初に頭に血が上ったのは、妹とおそろいで買ったマグカップを婚約者の岸本に割られたことだ。あのときのあいつは謝りもしないで、

「こんな所に置きっぱなしにしておくのが悪いんだ」

 と言い放った。さすがにキレそうになったが、なんとか(こら)えた。もしここで私が怒ったら、じーちゃんや父さんの会社に何かするとか言いかねないからだ。

 根本的に何かがおかしい。

 古臭い言い方かもしれないが、代わりの兵士はいくらでもいる・・という考え方の持ち主で、私は岸本が大っっっっっっっ嫌いだった。


「美咲、もう1度考え直そう。あんな男と結婚なんてしたくないだろう?」

 もう何度目かのじーちゃんのセリフ。

「いいって。決めたことなんだから今さら変えたってしょうがないよ」

 たぶんこの話をするために、じーちゃんは私を誘ってコンビニへ行こうとしたのだろう。わかっていてついてきた。

 口ではしょうがないと思っていながらも、心のどこかでは婚約が解消されることを願っていたからかもしれない。

「・・・・・好きな人はいないのかい?」

「そんな人今までできたことないよ」

 本当のことを言うと、初恋がいつだったかなんてわからない。物心つく前に恋愛をしたような記憶があるが、はっきりと認識していないため、恋なんてしていないと思っている。第一、こんな性格破綻者を好きになる物好きがどこにいるのだろう。

 そんなことを考えているうちにコンビニにたどり着いた。

「え?じーちゃん入んないの?」

「ここで待ってるよ。好きなものを買ってきなさい」

 じーちゃんがガラの悪い男たちに絡まれたのはそのすぐ後のことだった。


 日頃のうっぷんもあったんだろう。

 じーちゃんに絡んでいた男たちを背負い投げで投げ飛ばした後、逃げるように走っていく男たちを、私は容赦なく追いかけた。

 やられたら10倍返し。これがじーちゃんのモットーだ。

 トンネルまで追いかけたとき、男の1人が転んで倒れた。尻餅をついてそれでも逃げようとする男を蹴り飛ばした。

 そのときだった。胸倉を掴んで殴り飛ばそうとしたとき、その右手が誰かによって掴まれてしまった。追ってきた男たちじゃない。

 誰だ?見ると、私にとってまったく知らない男がいつのまにかそこにいた。

 意外に若そうで、いや、大学生か?強い眼差しが印象的な男を一瞬で観察してから、しかしすぐに敵だと認識した。

「・・・・・っ!」

 右ストレートは簡単に避けられてしまった。

 あれ?うそ・・・

 今度は意表をついて蹴りを入れてみる。しかし、それも間一髪で避けられてしまった。

 その間に男たちが逃げていくのがわかったが、追うことができなかった。初めて自分の蹴りを避けられたことにショックを受けたから・・・・・


「邪魔すんな」

 大学生の顔面を狙ったつもりだったが、やっぱり避けられてしまった。

「あんたこそ何してんだよ!暴力だろ!」

 それが、大学生の第一声だった。確かに正論だ。

 私はこれまでの事情を簡単に説明したが、頭の中ではなぜか今まで感じたことのないイライラするような感情が芽生えてきていた。そして、最高にいらだったのは、大学生のこの一言。

「女の子なんだから3倍返しみたいなことするなって言ってんの」

 やっぱり世間の男は、女に思わず守ってあげたいような幻想を抱くのだろう。

 最高にイライラした。 


 そして、じーちゃんにタダでご飯を食べさせてあげるからと連れてこられた料亭で、いきなりお見合いになった。しかも、あの大学生、葉山孝介と。

 最初は抹消したい記憶だったので、思い出すのに苦労したが、1度思い出すとあのときの感情が次から次へと(よみがえ)ってくる。たぶん嫌いだと思われるしいたけを箸で避けているのを見ているだけでも腹が立ってきた。

 普段は岸本の暴言にも耐えられるのに、この男は逆に気になってしまう。

 そうして、思いついたのが腕ずもうで決着をつけることだった。力勝負ならそうそう負けない自身がある。

「腕ずもう・・・?」

「早くしろよ。まさか負けるのが怖いのか?」

 軽く挑発すると、孝介はすぐに乗ってきた。

 楽しかった。この男と決着をつけるために自分から腕ずもうをけしかけたはずなのに、なんでだろう・・・イライラしていたはずなのに、繋いだ手のひらが熱かった。


 やばい・・・こんな感情・・・・・思っちゃだめだ。

 だめなのに・・・・・


 1回デートしてもらえば、全部すっきりとあきらめられると思った。

 きっとこれを楽しい思い出にできれば、岸本と結婚してもずっと耐えられると思った。

 だけど・・・・・だけど、


「ほんっと自分勝手で、すぐ暴力ふるうし、非常識だし、こんな女ごめんだよ・・・・・もう最後にしたい。選べよ。その大会社の息子と結婚して後悔するか、ここにいる人全員ぶっ倒して自由になるか・・・・・俺を選んで一生後悔するか」


「俺を選べ!美咲!」



 見合いで孝介と再会したのは、じーちゃんが図ったからだった。私が孝介をいろいろな意味で気にしていたのを見抜いていたらしい。

 私は知った。

 人を好きになるということを。孝介が好きだということを・・・・・・


「おかえり」

 仕事から帰ってきた孝介を出迎える。

「ただいまー。あぁぁ・・お腹すいた」

「今日鮭だよ」

「おっ!やった」

 就職してから、まだ慣れない仕事に孝介は苦労しているようだ。大学生で結婚したから、金銭面にやはり問題があるのだ。それにもうすぐ家族がもう1人増える。

 正直、昔は子供がほしいなんて思ったことがなかった。だけど、結婚してから急に望むようになったのだ。

 出産予定は9月頃だ。お腹も大きくなってきている。

「・・・・・この子と美咲のために頑張んないとな」

「体壊すなよ」

「『ご飯にする?お風呂にする?それともわ・た・し?』って言ってくれたら大丈夫だと思う」

「言うか!」

 改めて思ったこと。私を好きになる人はやっぱり物好きだ。

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