八
この上もなく晴れ渡った青い空に、華々しいファンファーレが鳴り響く。騎乗した王が、軍勢を引き連れて都に入ってくる。群衆の歓呼の声がこだました。王の軍は多くの捕虜を従えて王宮へと入ってゆく。王宮の中庭では、王妃との婚礼の日と同じように、下級士官や下級貴族たちがこぞって出迎える。
「国王陛下、万歳。」
誰からともなく声が上がる。
王は馬を下りると歓声に答えながら王宮の広間へと入ってゆく。
広間では、王妃を始め、大貴族たちが王を出迎えた。
王妃が膝を折ったまま、口上を述べる。
「此度は長らくの参陣、誠に大儀に存じまする。同時に陛下の無事の御帰還と大勝利を心より寿ぎ申し上げまする。陛下の御威光と、王国にますますの栄がありますることを、お祈り申し上げまする。」
王は王妃に近付くとその肩に手をかけた。王妃が顔を上げる。
「長らく留守にして、苦労をかけたな。大儀である。」
王は不意にまっすぐ王妃を見つめた。
「そなた、美しゅうなったの……。」
「陛下……。」
その時には王はすでに顔を挙げていた。
「皆々、長らくの留守居、誠に大儀であった。心より労うぞ。」
王の言葉に再び万歳が湧き起こった。
その夜、戦の疲れを癒す間もなく、王は自身の寝所に王妃を召された。ほとんど初夜以来のことであった。
「陛下、お召しにより、まかり越しましてござりまする。」
王妃が王の寝室に額づく。部屋には、王が好む東の国から取り寄せた香の薫りが満ちている。
「よう参った。」
王は王妃の手を手ずから取り、夜食が並べられたテーブルへと誘った。夜食とは言え、さすが国王の食卓、それは見事な料理が並んでいた。雉の内臓を抜いて変わりに米と様々な香草を詰めて蒸し焼きにしたもの、南国より船で届けられた色とりどりの果物、カラスムギを使ったパン、冷やしハム、幾種類ものチーズ、塩漬けにしたオリーヴの実、そして葡萄酒。
「そなたのために特別に用意させた。」
「陛下、これはまた……。」
王妃はあまりの歓待ぶりに驚いた。王妃が椅子に坐ると、壁際にいた侍従たちが王妃に見事な瑠璃の盃を渡す。王が手を軽く振ると、侍従たちは早々に退出する。
「此度は長の参陣、そなたには苦労をかけた。いや、此度ばかりではない、そなたが余に嫁して以来、余はそなたのことを気にかけることがなかった。余の罪滅ぼしじゃ。」
王は王妃に優しく微笑みかけた。
「勿体のうござります。」
王妃は頭を下げた。
「今宵は遠慮のう食せよ。余も楽しもうと思う。」
王は手ずから王妃の盃に葡萄酒を注ぐ。
食事が終わると、王は徐に王妃を寝台へと誘う。王妃にはそれを拒む術はなかった。王妃の脳裏にこびとの顔が浮かぶ。
(赦しておくれ。陛下を拒むことは、私にはできぬ。)
王妃は王に身を委ねた。