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For the Honor  作者: 阿藤
第一章
5/12

4話

そろそろ主人公ちゃんの名前を出そうか

 仮面を被る、ということにはいくつか意味がある。

 単純に自分の顔を隠すという意味もあれば、仮面がかたどっているモノになりきる、という意味もある。


 目の前の男の仮面にはどういう意味が込められているのだろうか。


 仮面の男はこちらに気付いたのか、


 「ほぉ、無事なエルフがおったか。」

 

 まるで地の底から響くような低い声であった。

 口調からして、年配者であろう、と私は予想した。


 「お嬢ちゃん、名は?」


 名前を聞かれるなど、いったい何時ぶりだろう。

 それはともかく、わざわざ名前を聞いてくるということはこの人物は私に敵意は無いのだろう。

 いつでも走り出せるようにしていた体勢を崩し、楽に座る。

 そうした途端に、自分が無意識のうちに警戒態勢をとっていたことに気付き、驚く。


 「どうしたお嬢ちゃん、まさか名がないのか?」


 おっと、考え事のしすぎで返答に遅れてしまったようだ。まずは目の前の恩人の要望に答えなくては。


 「シ、セロ・・・」


 自分の声が震えていることに驚く。危機は去ったとはいえ、緊張が完全にほぐれたわけではないのだろう。


 「そうか、シセロか。儂はメイズ。ただの旅人じゃよ。」


 ただの旅人、か。

 ただの老旅人が一瞬にして戦慣れした男を何人も葬れるのだろうか。

 いや、もしかしたら口調が特殊なだけで年配ではないのかもしれない。


 「そうだ、お嬢ちゃんの村のエルフを乗せた馬車のことだが・・・その、な・・・」


 歯切れが悪かった。恐らく結果は芳しくなかったのだろう。


 「爆発、したんじゃよ・・・恐らく、助からないと踏んだエルフたちが自爆して心中したんじゃろう・・・」


 自爆。それは自らの命を攻撃に転用する最終手段だ。

 とはいえ、マナが封じられていては行使できない。恐らく行使したのは長老であろう。

 マナを封じる枷とはいえ、その能力は引き算だ。

 村で私の次にマナ適正が高かった長老は枷の許容を超えていたのだろう。


 「そう、ですか・・・」

 「なぁ、お嬢ちゃん」


 どうやら話題を変えるらしい。まぁ、当然か。


 「お嬢ちゃんからはな、とてつもないマナを感じるんじゃ。儂も千年と少し生きてきたが、ここまでのものは初めてじゃ。」

 

 千年と少し。この世界で千年以上の寿命を持つ種族はエルフのみ。どうやら彼は同族らしい。


 「・・・心当たりは、あります。」

 「そうか、そうか。じゃあお嬢ちゃん、ここは一つ儂に弟子入りしてみてはどうじゃ?」


 ・・・はい?

 彼が言っている事が理解できなかった。

 命を救われ、名前を聞かれ、村の末路を聞かされ、才能を指摘され、弟子にならないかとスカウトされる。

 いや、よく考えれば話の筋としては合っているのだろう。

 しかしこの違和感はなんだ?突然言われて戸惑っているというのは恐らく違うだろう。

 あぁ、そうだ


 「あの、ただの旅人じゃないんですか・・・?」

 「そうじゃよ?」


 そうですか。

 恐らく仮面の下では相当意地悪い笑いを浮かべているであろう。

 

 どう返答したものかと私が悩んでいた時、


 「はぁっ、しっ、師匠っ!早いですってぇ!」

 「おぉ、グレゴか。すまんな、森が煩くての。それより、ほれ」


 一人の少年が息を乱しながらこちらへ走ってきた。

 メイズは私を指差しグレゴと呼ばれた少年にこう言った。


 「儂の新しい弟子じゃ。仲良くするんじゃぞ?」

 「あ、新しい弟子ぃ!?」

 

 どうやら私が弟子になることは確定らしい。

 グレゴと呼ばれた少年もまた、彼の弟子であろう。


 「まぁ、なんじゃ。お嬢ちゃんも行く当てなど無いのだろう。付いてくるがいいさ。」

 

 そう言って彼は背を向けて歩き出した。

 当てがない、といっても私は独立した生活を送っていたため村が滅びようと生活に支障は無いのだが・・・

 しかしまぁ、ここに留まっても意味はないし、命の恩人に恩返しもしたい。弟子入りすればその機会もあるだろう。

 そうだ、彼は恩人なのだ。恩人には恩を返さなくては。ではまずは・・・


 「あの」

 「なんじゃ?」


 私は一呼吸置いてから言った。


 「助けてくれて、ありがとうございます。」

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