2話
薄暗い部屋で一人の少女が身を起こす。
エルフには珍しい腰まである黒髪に、ややツリ目のブルーバイオレットの瞳。将来は中性的な美人になるであろう顔立ちの少女の年齢は恐らく六つか七つぐらいであろう。
そう、私だ。
そしてここは私の生活空間である村の端の小屋だ。時間は前世基準にすると恐らく6時くらいであろう。
この村とは隔離されていると言っても過言ではない場所で私は独立した自己完結系の生活を送っている。
六畳程の部屋にベッド用の藁が敷いてあるだけの生活感も何も感じられない殺風景な空間だが、生活に不便はしていない。
魔法という技術は非常に便利な物であり、複雑な魔法を使う際には触媒を用いることが多いが、普段の生活で使う魔法であればこの身一つで使うことができる。
況してや、マナ運用の適正が非常に高いこの身、調理器具などなくても即席の料理ぐらいできる上、体を清めることも、部屋を照らすことも、暖をとることも可能である。
もっとも、この体質のせいでこのような生活を送るハメになったのだが。
とはいえ、食料は魔法ではどうにもならないため狩りに出る必要があるが。
そうして、私は朝食を求めナイフと麻袋を持ち狩りへと赴いた。ナイフと麻袋だけと言っても、無防備というわけではない。魔法を使えば風の刃の一つや二つ簡単に飛ばすこともできるし、獲物を見つける目が無くともそれもまた、魔法がカバーしてくれる。
つくづくエルフとは優秀な種族である。
そんな万能感に浸りながらも早速獲物を見つけた。
鹿だ。私の中では鹿は格好の獲物であった。首が細く狙いやすいので簡単に仕留められる上に、一匹だけで数日分の食料となる。兎や猪とは大違いだ。
手早く鹿の首を風の刃で刎ね、自分の体を魔法で強化し、最寄の川まで引き摺って行く。
流石に幼女の体で鹿の体を一匹分引き摺ることは不可能だ。ここでも魔法に頼ることになる。
軽く血抜きをし、鹿の解体をすべくナイフを取り出す。
まずは喉から胸を通り肛門のあたりまで切れ目を入れる。早速血生臭さが漂うがまぁ、仕方ないだろう。
次に、胸骨と肋骨を接続する軟骨を切り離して胸骨をはずし、骨盤を割る。
ここまで来れば、あとは内臓を掻き出して皮を剥ぐだけだ。最後に肉をパーツごとに切り分ける。
我ながら、どうしてこんなにも手際よく出来てしまえるようになってしまったかな、と自嘲する。
そしてお待ちかねの朝食だ。生憎調味料の類は持ってきていなかったのでただ焼くだけのものになってしまったが、それでもまぁ、十分だろう。
食事を終えた後、私は残りの肉を麻袋に詰めこの肉はどうしようか、と考えながら帰り路につく。
するとなにやら、村の方からなにやら尋常ではないほどに煙が上がっているではないか。
あまりにも異常な光景に、私は何かあったのだろうと思い、肉をその場に放置し、体に強化魔法をかけ走り出した。
ぶっちゃげかなり魔法チートです。主人公のマナ運用技術は適当な独学だけで一流魔術師を凌駕するレベルになっています。