幕間
日が暮れてから数刻が経ち、暗闇に閉ざされた世界。
そんな世界を一人の少年が駆け抜ける。
少年の向かう先には、この暗闇に閉ざされた世界にぽつんと一つだけ、松明のぼんやりとした光を放つ建物があった。
周囲には何も無いのにも関わらず不自然なほどに警備は厳重であり、門の前に番人が四人、建物の上に弓兵が数人。おそらく中にはもっと多くの兵が潜んでいるだろう。
この建物に封じ込まれている己の主を解放すること。
それが少年の目的であった。
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「お迎えに参りました、魔王様」
そう跪くのは栗色の癖っ毛を持つ獣人の少年。
少年の服にはやや汚れが目立ち、少しばかりの血が付着していた。
「うむ。ご苦労であった。」
魔王と呼ばれた青白い肌の、大柄な男がそう言った。
男の放つプレッシャーはとてつもなく強く、目の前の獣人の少年ですら、男が口を開いただけでぴくりと背中を震えさせた。
「あれから千年経ったのか。」
「はい。その通りでございます、魔王様。魔王様の放たれたマナは正常に機能されました。直に他の魔族達も、その魂に刻まれた使命に目覚めるでしょう。」
やがて、少年の背後のドアが開け放たれる。すると老若男女、種族を問わず数十人の者達がぞろぞろと部屋に入ってきた。
彼らは獣人の少年と同じように跪き、口を揃えてこう言った。
「「「復活おめでとうございます、魔王様。」」」
その翌日、魔王を封印していた神殿の近辺にあった人口数十万の国が、たった数十人の戦力によって陥落した。
魔王復活という情報は、瞬く間に世界中に広がったのである。