第1話 トラック待ち
もう何もかもが嫌になった。
ぼくは小説家になりたい。そう思って某投稿サイトに小説を何話もアップしてきた。
けどダメだったんだ。投稿した小説は何一つ評価されなかったし、だんだんと書く気力が衰えてきた。今じゃ何も書けない体になってしまった
もう小説なんて書きたくない。
何もしたくない。
嫌になった。何もかもが嫌になった。
ぼくは、この人生が嫌になった。
だからもう終わらせようと決めたのだ。
「…………」
傘をさして、横断歩道を前にする。
雨は土砂降り。
信号は青。
だけど渡る気なんてさらさらない。
ぼくは待っているのだ。信号が赤になるのを待っているのだ。
目の前で車が横切るのを待っているのだ。
――トラックが来るのを待っているのだ。
この人生を放り投げるためにトラックを待っているのだ。
新しい人生に向かうためにトラックを待っているのだ。
異世界へトリップするためにトラックを待っているのだ。
青信号が点滅する。
チカ。チカ。チカ。チカ。チカ。チカ。チカ。チカ。チカ。チカ。
赤。
信号は赤になる。
雨がいっそう強くなる。
傘を持つ手が強くなる。
いや、弱くなる。
生きる気力が枯れる。
車が走り出した。
一台のトラックがやってきた。
ぼくは歩みだす。
――ああ。そういえばトラックって、ドラッグと発音が似てるよな。これって偶然なのかな。
最後にそんなことを思いながら、ぼくは赤信号を渡った。
この、途中までの人生に見切りをつけた。