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snow man

作者: 咲坂 美織

試験前ですが、どうしても冬の童話祭に参加したくて書いてしまいました。

普段とは一味違う作風となっています。

楽しんでいただければ幸いです♪

 あるところに双子の男の子と女の子がいました。男の子の名前はるーくん、女の子の名前はみーちゃんです。


 ある日のこと、るーくんとみーちゃんが朝起きるとお外にはたくさんの雪が降っていました。


「みーちゃん見て見て! 雪が降ってるよ!」

「本当だ! ねえ、るーくん。今日はお外で遊ぼう」


 二人は急いで着替えると、家から飛び出しました。

 外は一面真っ白。二人は思わず、ぼーっと見とれてしましました。こんなに雪が積もったところは見たことがありません。


「るーくん、雪ってどうやって遊べばいいの?」


 るーくんは困ってしまいました。るーくんもこんなに雪が積もるのを見たことがなかったのです。

 それでもお母さんに読んでもらった本に書いてあったことを一生懸命思い出して言いました。


「みーちゃん、雪だるまを作ろうよ」

「雪だるま? それなーに?」

「雪だるまっていうのはね、こうやって……」


 るーくんは雪をギュっと固めると、それを雪の上でころころと転がしました。

 すると、不思議なことに雪だまがどんどん大きくなっていきました。


「すごい! 魔法みたい!」

「みーちゃんもやってみる?」


 みーちゃんは、るーくんに作ってもらった雪だまを雪の上でころころと転がしてみました。転がせば転がすほど雪だまはどんどん大きくなっていきます。


「大きくなったら、こうやって二つつなげて、ほら! 雪だるまの出来上がり」


 るーくんは周りをきょろきょろと見回しました。


「るーくん何を探しているの?」

「木の枝とか石を探しているんだ。それで雪だるまの顔や手を作るんだよ」

「それなら……これは?」

「うん。いいね」


 みーちゃんは見つけた石を二つ、雪だるまにつけました。雪だるまの目ができました。それから二人は一生懸命探して、雪だるまに口や手、鼻やボタンを作ってあげました。


「最後にこれをかぶせて……」


 るーくんが雪だるまに小さな赤いバケツをかぶせました。これで雪だるまの完成です。


「みーちゃん、今日はもう遅いからお家に帰ろうか。お母さんがきっと心配しているよ」

「うん。また明日もここに来ようね」


 二人は手をつないで、仲良くお家に帰りました。


「るーくんとみーちゃん、お家に帰っちゃった。また明日も来てくれるかな」


 残された雪だるまは少し寂しそうでした。



 その次の日も、そのまた次の日もるーくんとみーちゃんは雪だるまのところにやってきて遊びました。雪だるまは一緒に遊ぶことはできませんでしたが、二人がそばで遊んでいるのを見ているだけでも十分満足でした。


「あ! るーくん、見て見て!!」

「何、みーちゃん」


 みーちゃんが手を広げてみせると、そこには小さなどんぐりがのっていました。


「まだどんぐりが残っていたんだね。それをどうするの?」

「雪だるまにつけてあげるの」


 雪だるまは嬉しくなりました。そして、二人に心の中でそっと、ありがとうを言いました。



  その次の日、双子は雪だるまのところにやってきませんでした。雪だるまはずっと待っていましたが、いつまで経っても来ませんでした。


「二人とも、風邪ひいちゃったのかな」


 雪だるまは心配しました。


 そこへ、一匹の子犬がやってきました。


「雪だるまさん、そのどんぐりのボタン、素敵だね」

「ありがとう。あの双子の兄妹が作ってくれたんだよ」

「それはいいや。君はとても大きくてかっこいいな」


 雪だるまはとても誇らしい気持ちになりました。けれども、子犬は言いました。


「でも、ボクは雪だるまと話すよりも走って遊ぶ方がずっと楽しいや。だってこんなにたくさんの雪が降っているのだもの」


 そう言うと、子犬は走っていってしまいました。また雪だるまは一人ぼっちです。


 そこへ、一匹の子猫がやってきました。


「あら、雪だるまさん。その赤いバケツ、とても似合っているわね」

「ありがとう。あの双子の兄妹がかぶせてくれたんだよ」

「まあ素敵。あなたはとてもきらきらしていて羨ましいわ」


 雪だるまはとても嬉しくなりました。けれども、子猫は言いました。


「でも、私は寒いのは嫌いだわ。早くお家に帰らなくちゃ」


 そう言うと、子猫はすたすたと歩いていってしまいました。また雪だるまは一人ぼっちになってしまいました。


 もう誰も雪だるまのところに来てくれませんでした。雪だるまはとても寂しくなりました。



 しばらくして、春がやってきました。だんだん暖かくなり、周りの雪は溶けていきました。


 一番最初に雪だるまのどんぐりのボタンが地面に落ちました。


「あ、みーちゃんがつけてくれたボタンが!」


 しかし、雪だるまにはどうすることもできません。雪だるまもだんだん溶けていきました。



 それから何年も何年も経ちました。


 ある日のこと、大きくなった双子のるーくんとみーちゃんが昔雪だるまを作ったところにやってきました。


「あ、るーくん。あれ見て!」

「あんなところに大きな木が生えている」


 昔二人が雪だるまを作ったところには大きなどんぐりの木が生えていました。


「みーちゃん、ここに来てごらん。とっても気持ちがいいよ」

「本当だ。木がお日様の光から守ってくれているのね」


 木はその大きな枝を空いっぱいに広げて、大きな影を作りました。周りには暑さに疲れた動物たちが次々と集まってきます。


 木の周りにはいつも、たくさんの動物やるーくんとみーちゃんがいました。

 木は今日も、その枝を広げています。その枝には、いつかの小さな赤いバケツが一つ、引っ掛かっていました。


私が目指す童話とは、子供が読んで楽しむのはもちろん、大きくなってから「そういえばこんな話があったな」と時々思い出してもらえるような童話です。

大人になってからも楽しめる童話って素敵ですよね。

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― 新着の感想 ―
[良い点]  どんぐりの役割が上手いです。感嘆しました。  確かに、楽しいことがあったら前のことを忘れてしまいますよね。小さいときって。だけど雪だるまはずっと待っていて。  雪だるまではなくなってしま…
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