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Scene9.


 

 今日は何だか頭が痛い。

 ずっと痛いわけではなく、時々ずきり、と疼く。

 偏頭痛かな。でもこっちに来てからそんな事はなかったような……。

 いや、あった。私がこの世界に来た直後だ。

 あの時は単に頭打っただけだと思っていた。その時の頭の痛み方と今の頭の痛み方は酷く似ている。

 私がトリップした事、もしくは記憶を失くした事に関係ありそうだ。それも結構高い確率で。

 でも今はそれどころではない。

 私は今、いかつい男子共に囲まれている。みんな手にバットやらカナヅチやら何かしらの武器を持っている。

「魔女!今日こそお前を狩ってやる!会長の仇討だ!」

「そうだそうだ!お前を狩ってその屍を亡き会長の墓前に!」

 こいつらあの自称勇者の仲間か。確かにみんな似たような目してるわ。

 自称勇者シグマ……昨日も彼は魔女を狩って英雄になろうとした。しかし三十回目の校則第十八条違反により風紀委員に連行された。

 彼がその後どうなったのかは分からない。そうか……彼はもうお星さまになっていたのか……。

「いや俺は死んでいない!ひとかけらも死んでないぞ!?」

 どこからわいたのか、死んだはずの自称勇者が登場した。

「勇者は死なない!何故なら、俺は生きながらにして民の未来を照らす希望の星だからだ!」

 シグマがポーズを決める。私を取り囲んでいた男子共は会長の言葉に歓声を上げる。

 あー……痛い。私の頭以上に痛い。

「ところでお前らは何をしている。魔女なんざ取り囲んで……」

「会長!この人数なら絶対に勝てます!赤子の手を捻りつぶすようなものです!」

「今こそ『災厄の魔女』を永遠の闇に葬る時です!ご決断を!」

 うわあ。これ死亡フラグって奴?しかしシグマの口から発せられた言葉は意外なものだった。

「バカ野郎!勇者は常に正々堂々、悪とは一対一で戦うものだ!こんな人数で……アンフェアな戦いはしたくない!」

 またしてもポーズを決めるシグマ。しかし、自称勇者に待っていたのは歓声ではなかった。シグマは縛り上げられ、床に転がされた。

 このいかつい男子達はシグマみたいなRPG脳って訳ではないらしい。ただケンカしたいだけだ。余計にたちが悪い。

 彼らは罠にかかった小動物を見つけた猛獣の様な、ぎらついた目をする。そして武器を振りあげて私に襲いかかった。

 

 一分ほど、時間が経った。ホコリが舞い上がる廊下に、たくさんのいかつい男子が横たわっている。

 そしてそこに、見覚えのある女の子――ソフィアさんが笑顔で佇んでいた。

「あー、楽しかった。久しぶりよ、こんなに暴れたの。……あ、ナナシさん大丈夫?殴られてない?」

「ソフィアさんがやられる前にやってくれたんで完全に無傷です。でも人を殴り倒しておいて恍惚としか例えようのない表情されても……」

 私が指摘すると、縛られていたシグマが口を挟む。

「いやー、すごかった!あいつらも大概強いのにそれをものの一分ですべて倒すなんて……お前、何者だ?」

「何者って言われても……しいて言えば何でも屋『エルメール』の一人娘兼店員、かな」

「じゃあ何故あのような強さを……」

「うーん。単に集団万引きやってるグループを倒そうと思って先週から鍛え始めた」

 先週鍛え始めてこの強さ……デタラメすぎる!努力もへったくれもあったもんじゃないな。 

 シグマが私の方を向いて頭を下げる。

「すまなかった。日頃常に『フェアな戦いを』と教え続けているのだが、あいつらにはしっかり伝わってなかった。俺の指導不足だ。

 ……本当に申し訳なかった」

 どこの先生だよ。でも一ミリ程見直した。こいつはアホな自称勇者。でも勇者の心構えはあるわけか。

「別に怪我もないしいいわよ。また明日から狩りに来なさいよ。返り討ってあげる」

 そう告げ、シグマの下げっぱなしの後頭部をべちっと叩いた。

「……ま……魔女のクセに俺に上から物を言うなああ!……でも明日も来てやるからなっ!」

 自称勇者、退場。

 全く、私はもう少し静かな学校生活を望んでいるのだが。でも私の境遇的に仕方ないのかもしれない。

「……っ!」

 頭痛が戻ってきた。さっきのよりずっとひどい。頭が割れそう。

 頬にあたる冷たく固い感触。どうやら私は倒れこんだらしい。でも頭の痛みで何も考えられない。

 ソフィアさんが私の異変に気づき、声をかける。しかしその声は何だか遠い。

 ぼやけ、狭くなってゆく視界。それと共に意識も薄れゆく。

 

 To Be Continued?

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