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Scene6. 


「こっ……これが学校――!?」

 私は今、ナイトに連れられて『アイリス魔法学園』の前にいる。

 学校というよりお城のようなその建物に私はびっくりしていた。

 事のおこりはエイプリルフール。私の期間限定バイト最終日だった。


 何でも屋『エルメール』のカウンター前。

「ナナさん、お疲れ様。今日でバイトはおしまいよ」

 ソフィアさんはそう言って給料の入った封筒を手渡した。

「――もう四月になったんですね」

 私がこの世界に飛ばされてはや二週間。

 『魔女』扱いはいまだにされてるけど、何人かお客様と仲良くなれた。

 ナイトの家政婦しつつバイトに勤しんでたら時間は飛ぶように過ぎて行った。

 封筒の中を見る。少なくとも今月分の生活費は赤字を免れるだろう。

「どう?今月分位何とかできそう?」

 どこから湧いたのか、ナイトがひょこっと顔を出す。

「そうね、あんたの買った砂糖九袋分は何とかできるわよ」

 そう言ってナイトの方をジトッと見ると、彼は目をそらしてごまかそうとする。

「ま……まあ、何にせよお疲れ様。これで少し肩の荷も下りるね」

 ナイトが肩にかけたカバンをゴソゴソと探り、分厚い書類を取り出す。

「という訳でこれからもナナちゃんに充実した生活を送ってもらうために、魔法使いから素敵なプレゼントだよ」

 渡された書類を見ると、『アイリス魔法学園編入のご案内』とあった。

「これ、うちの学園の案内じゃない。ナイト、まさかナナさんを学校に入れるつもりなの?」

 ソフィアさんが驚いて言う。もっとも、一番驚いているのは他でもない私なのだが。

「そうだよ。ナナちゃんもまだまだ若いし、家政婦とバイトに明け暮れさせるのはかわいそうだからね」

「えっ……でもちょっと待ってよ。私、身元不明の記憶喪失なヨソモノ魔女だよ?学校入れるの?」

 身元不明な人間ウェルカムな学校は普通ないだろう。入れないのが当たり前だ。

「それがねえ、学園長先生と直談判したら案外簡単にOK出たんだ。だから今月からナナちゃんは立派な学生だよ!」

「じっ……直談判!?」

 ソフィアさんは真っ青になっていた。

「あんた、あの学園長先生と直談判したの!?命知らずも大概にしなさいよ!」

「あのー、そんなに学園長先生って怖いんですか?」

 私が聞くと、ソフィアさんは私の両肩を掴んで揺する。

「怖いなんてものじゃない!ちょっとでも気に障る事すれば即学生牢、運が悪きゃ退学よ!」

「それは先生として幾分間違っているように思えますが」

 ガクガク揺すられながら私は言った。そんな厳しい先生のいる学校なんてイヤだ。

「ソフィアの言ってるのは単なる噂だよ。だってソフィアは優等生だから学園長先生に怒られた事ないでしょ?だから知らないんだよ。

 学園長先生はそんなに怖くないよー。『越後屋印のお菓子』チラつかせて少々ゴリ押せば要求が通るんだから」

「……ワイロ渡したんだ」

 そう言うとナイトが慌てて弁解する。

「いやいや、『越後屋印のお菓子』ってだけだから!底にお金とか入ってないから!」

「生活費が赤字ギリギリなのにワイロ用の金はあるんだ」

 私はナイトをにらんだ。

「店やってる身としてそういうのは……軽蔑するわ」

 ソフィアさんもそれに乗っかり、ナイトはしょぼくれてしまった。

「まあ何にせよこれからナナちゃんはスクールライフをエンジョイできるんだから、感謝してよ?」

「はいはい、アリガトウゴザイマース」

「全然気持ちがこもってないよ!?」

 まさかの裏口入学だったけど、学校に行くって事は外の世界に触れる機会が増えるって事だから。

 魔女って言われるかもしれないけど、きっと友達もできるはず。そのチャンスがもらえたって事。

 ホントは嬉しかったんだよ?魔法使いのプレゼント。


「あの時はホントひどかったよ。『越後屋印のお菓子』ってだけで別にワイロじゃないのにさー」

 そう言ってナイトはカバンから『越後屋印のお菓子』を取り出し、包装紙を破いて渡す。

「ああもう、包装紙は破らず取っとけって言ったじゃない……ってホントにただのお菓子なの!?」

「そうそう。紛らわしい名前だけどホントにただのお饅頭。学園長先生がこれ大好物でさ」

 なんだ。悪い事しちゃったな。ていうかお饅頭ってこの世界にもあるんだ……。

「でもそれ学園長先生にあげたんでしょ?それってある意味、ワイロよね」

 お饅頭をほおばりながら私は言う。ナイトは笑いながらこう言った。

「お金じゃないからノーカン、だよ」

 

 To Be Continued?

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