Scene2.
「とりあえず出てきなよ。この状態で話するのもなんだし」
少年にそう言われ、私は木の陰から出た。
少年は思ったより背が高かった。片メガネがきらりと光る。
「待っていたってどういう事?」
私が聞くと、少年は笑って答えた。
「僕は君が来ることを予感してたからね」
「ふざけてるんですか。それとも頭がおしいんですか」
「まあ説明は後回し。どうせ行くあてないんでしょう。うちにおいでよ」
寒さと孤独と空腹には勝てないであろう。
わたしは少し間を置いて首を小さく縦に振った。
「良かった。いろいろ聞きたいこともあるんだ。平行世界へのトリップを体験した君に」
「えっ、ちょっと!何のこ……」
「ほら、ごちゃごちゃ言ってないでついてきて!」
屋敷の方へ歩いていく少年を私は慌てて追いかけた。
屋敷に入ると、まず目に入ったのは美しい内装。……を台無しにするほどの大量のゴミ。
口を開けてゴミの山を見るてと
「いやー。片づけが面倒すぎてどんどんたまっちゃってねえ」
という解説になってない解説が入った。
「家政婦でも雇うべきかなあ」
そう言って、何かに気づいた彼は私を見た。
そして要件を思い出した私は彼をまくし立てた。
「あんたのお家事情なんざどうだっていいのよ!平行世界?トリップ?それと私になんの関係があるってのよ!?」
「まあまあ落ち着いて。とりあえず座ってよ。話はそれから」
少年はそう言って椅子を引いた。私はおとなしく座る。
「コーヒーしかないけどいい?」
別にいいけど、とそっけなく答えて落ち着いたふりをする。
でも実際は全く落ち着けてない。トリップって何?平行世界?理解できない。
わかるのは私は、私の知らない所で起きた大きな何かに、影響されたということだ。
「お待たせ。淹れたてだから火傷しないようにね」
少年がコーヒーを持ってきた。
「さあ、いろいろ説明してもらいましょうか」
私がそう言うと、少年はにやりと笑った。
「そうはいかないよ。こんなチャンス二度とないからね」
悪戯を思いついた近所のガキと同じ顔をした。
「住み込みでうちの片づけと家事、やってくれない?」
予想通りすぎる。
「じゃあ……前向きに検討します」
「給料は払うよ?それに住み込みだからそれなりの暮らしだってできるし」
少年は服についたホコリを払いながら言う。
「働いてくれれば生活費はこちらで持つから、少しは余裕もできる。君の身に何が起きたかもわかる範囲で話す」
「なかなかの条件ね」
「断ってもいいけど、その時は野宿+トリップの事もわからない。どうする?」
ああ。人の弱みに付け込むわけね。見上げた根性だ。
「いいよ。ここで働いてあげる。その代わりちゃんと条件は守りなさいよ!」
「そう来なくっちゃ」
こうして私は住む所と働き口をゲットしたわけである。
でもなぜだろう。彼に全く感謝したくないのは。
To Be Continued?