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Scene14.


「えー……これより合同授業を始めます」

 先生の声がマイクを通して体育館に響く。

「皆さん、『禁止魔法』を知っていますか」 

 ……どうやら運命は私の味方のようだ。

「禁止魔法とは全世界魔法使い連盟が指定した、高度かつ強力で私利私欲を満たすために使用すればそれこそ

 世界を一個消しかねないため一般人が使う事を禁じた魔法をさします」

 そんな定義はいらない。早く新しい情報を教えてよ。

 ……あれ、私今はこの世界から出てこうとしてる。

 帰るのが当たり前、だから今もこうして『知りたい』って思ってるんだ。

 それが分かってるのにどうしてこんなに揺れてるのだろう?帰りたくないって思ってるのだろう?

何が私を引き止めているのだろう?

「この魔法はかつて『災厄の魔女』がこの国に魔法をもたらした時に他の魔法と同時にもたらされたものです。

 『災厄の魔女』はこの魔法については『私利私欲のために使ってはならない』と言っていたと伝えられています。

 そしてそれは『災厄の魔女』が滅びた今も全世界魔法使い連盟によって厳しく守られています。

 守らなかった魔法使いは魔法使いの資格をはく奪され、魔力も失う事になります」

 魔力を失う……ここまではナイトも言ってなかった。

 魔法使いにとって魔法はカネを稼ぐ手段でもあるし、生きがいでもあるだろう。

 要するに魔法使いとしての自分を殺される事――それが『魔力を失う』って事。

 禁止魔法を使うにはそれだけのリスクがある。余程の覚悟がなきゃ使えないんだろうなあ……。

「では具体的に禁止魔法がいかに危険なものか説明しましょう。たとえば『呪殺』。これは自分の嫌いな人間を呪い殺す魔法です。

 どういう風に殺したいかを念じながら魔法を使えばその通りにターゲットを殺せます。悪用すれば……もう分かりますね。

 他に『他人を支配する』――他人の意志の中に入り込みその人を意のままに操る魔法などもあります。

 そして……『もうひとつの世か……「先生!緊急事態です!」

 話をさえぎって若い先生が駆け込んできた。何よ、結構いい所だったのに。

「学園の図書室に保管されていた『禁止魔法之書』のページが破かれていました!『もうひとつの世界をつなぐ魔法』のページです!」

 重大機密をデカい声でばらされた事に口をあんぐりさせる舞台上の先生。ざわめく生徒。

 何だか色々と解決に突き進んでる気がする。私のあまりに奇妙な運命は終わりに近づいてるのかな……。

 喜ぶべきなのだろう。でも今は凄く、複雑な気持ちだ。


  @@@


「はあ……」

 俺は枕元に積まれた大量の氷のうと風邪薬を見つめた。

 彼女のいない屋敷は、いつにもましてがらんとして見えた。学校に行ってる時間なんてたかが知れてるのに何だか孤独を感じる。

 俺はいつの間にかナナちゃんのいる生活に慣れ切ってしまったようだ。

「……俺、独りぼっちが好きだったのにね」

 呟きは広い部屋に響く事もなく消えて行った。

 俺はおかしい。今や独りぼっちは寂しいと思ってる。

 あの子の存在は確実に俺自身を変えていってる。それが良い方向になのか否かは分からないけど。

 ナナちゃんには申し訳ないけど、俺はまだ君を手放すつもりはないよ?

 だって俺にはあの子が必要だから……激しく色んな意味で、ね。

 玄関の方でベルが鳴った。待ち人の帰還かな。

 ドアスコープを覗くと、見覚えのある長い髪が揺れていた――という展開を期待していたんだけど、立っていたのは荷物を持った中年のおじさんだった。

「お届け物です」

 くたびれたおじさんは荷物を渡し、受領印を受け取ると帰って行った。

 荷物はナナちゃん宛。珍しく宛名が『ナナシ様』だ。……普段は百パーセント『魔女』なのに。

 怪しすぎるな。よし、強制検閲だ。

 包装紙を剥ぎ取り、箱を開けた。中には白い花の鉢植え。

 その花が何か気づいた俺は、強制検閲した自分を全力で褒めた。

 中に入っていた花はスノードロップだった。

 スノードロップは、『希望』だとか『恋の最初のまなざし』だとかポジティブな花言葉を持つ。

 しかしこの花は人への贈り物にすると意味が変わるのだ……『あなたの死を望む』という風に。

 しかも時期的にこの花は咲いていないはずだ……わざわざ咲かせて送りつけた?

 要するに送りつけてきた人間はナナちゃんをぶっ殺そうとしているって事だ……結構本気で。

 ただの手の込んだイタズラだったらいいんだけど……。

 鉢に貼りついていた紙に、『for G』と赤いインクで書かれていた。

 

 とりあえずこの花、森のどっかに植え替えてこないと……花に罪はないもんね。


To Be Continued?

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