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Scene10.


 どれほどの時間が経ったのだろう。

 いまだ頭の痛みは治まらない。そのせいか頭がボーッとする。

 突如、いくつかのシーンがフラッシュバックする。その瞬間頭痛も激しくなった。

 シーンは一瞬で消えた。ぼやけていてよく分からなかったが、ズサリとくるものがあった。心の、一番深くの痛いところをフォークの柄で抉る様な。

 あれは、私の失くした記憶なのだろうか。

 そうだとしたら、何故苦しいのだろうか。

 

 消毒薬の独特な臭いが辺りにまみれている。

 目を開けると正面に真っ白な天井。手を動かせばふかっとした感触。

 状況から考えるに、私は今保健室で寝かされているのだろう。

「あ、起きた」

「あれ?あんたあの場にいなかったわよね?ソフィアさんは?」

「今ね、『あんたのお仲間がぎゃあぎゃあ騒いで殴りかかろうとしたからナナシさん倒れちゃったじゃない!

 よって責任者のあんたに制裁を下す事にするわ』って校舎裏でシグマをフルボッコしてる」

 うわあ……容易に想像できる。ご冥福を祈ろう。

「それにしても何があったの?もしかして過労?それだったらちょっと雇主として色々まずいんだけど」

「確かに劣悪な環境だけどその程度でぶっ倒れるほどヤワじゃないわ。別の事なの」

 私はナイトにさっき起こった事を全て説明した。ナイトは驚いたように言う。

「もしかしたら、記憶が戻り始めてるのかもしれないよ!ホントにそうなら、君がトリップした事について

 何らかの手がかりが得られるかもしれないね!」

「でも、まだあれが私の記憶だったかどうかは……。それにぼやっとしてて全然何だか分からなかったし」

「それでも、君に何らかの関係があるシーンだと思うよ。そしてそれは君の心にも結構強く干渉したんでしょ。

 そういった事から一番考えられる可能性は『君の記憶』だよ」

 なるほどね……でもそんなドヤ顔で言われるとね、素直に認めたくないかなー。

「でも頭痛が伴うのは……そのたびにバッタンバッタン倒れられても運ぶ俺が力尽きちゃうしねえ……」

 あんたが運んだのか。悪うございましたねえ重くて。

「あんたの言うとおり記憶が関係してるとしたらそれは不可抗力じゃない?そのたびにあんたが力尽きればいいわよ。問題ないわ」

「いや問題大アリだよ!?」

「じゃあ何とかしなさいよ」

「……」

 一分ほど、白い空間は静寂につつまれた。

「結論としては、『どうしようもない』だね」

「私が痛みに耐えれるようにならないとダメっていう事ね。……てなわけでしばらくは力尽きてちょうだい」

「俺の犠牲も必要って事なんだね……」

 当たり前でしょ。そういう意味で言ったからね。

 でも独りぼっちじゃなくて良かった。今はそれをすごく身にしみて感じる。

 一人だったら誰も助けてくれない。いかつい男子に囲まれても、廊下でぶっ倒れても。

 この世界にたった一人で飛ばされて、記憶もなくして。おまけに『災厄の魔女』扱いされて。

 敵はあまりに多い。でも味方でいてくれる人たちがいる。だからこの世界で笑っていられる。

 向こうに帰るのにはまだまだ時間がかかりそうだ。そして帰る前に『災厄の魔女』伝説の真相だって解明しないと。

 こっちの世界だって悪くない。私がいつか、あっちの世界に帰る時まで……

 それまではこの世界で皆と精一杯、生きていってみせる。

 独りぼっちじゃないから。

 To Be Continued?

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