Scene1.
頭が痛い。
目の前にはいつもと同じ青い空。
だが、周りの景色は一変していた。
「……え?」
うまく状況が呑み込めない。
まず、元いた場所を思い出そうとする。
でも、記憶はぼやけていて、はっきりしない。
次に名前。こちらも思い出せない。
年齢、住所、家族……自分に関わるすべての情報が欠落している。
これは「記憶喪失」というやつだろうか。
そして、周りの景色。
中世ヨーロッパ風の建物が遠くにちらほらと見える。見覚えなどない。
要するに、私はどこか知らない場所に飛ばされ、記憶も失ったということだ。
……そうか、私は今とてつもなく大変な状況に置かれてるのか。
状況は呑み込めた。が、この不可思議な状況に変化はない。
いろいろ考えた挙句、まず人を探すことにした。
とりあえずどこかに泊めてもらわないと元いたところに帰る前に死んじゃう。
人はおもうよりたくさんいた。人里離れたところじゃなくてよかった。
だがしかし何かおかしい。
みんな私から距離を置き、何か陰でヒソヒソ話している。
『魔女だ……魔女がとうとう……』
『近づくな!世界に破滅をもたらす魔女だぞ!殺されるっ!』
「ちょっと!どういうつもりよ!?」
私が怒鳴りつけると、『魔女が怒ったぞー!』と人々は逃げて行った。
どうもこの村には何か魔女に関する噂とか伝説があるのらしい。
だがそれとこれとは別!見ず知らずの人間に『魔女』はひどい!
何だか、前途多難のような気がしてきた。
そして、その予感は当たった。
村中歩いても誰も話を聞いてくれないのだ。
店に入ると追い出され、道を歩けば石をぶつけられる。
飛んでくる石を避けつつとうとう村はずれの森まで来た。ここから先に人は住んでいなさそうだ。
「洞窟とか廃屋とかあればいいんだけど……」
そう思って、私は森に入った。
私は、溜め息をついた。
どれだけ歩いても景色に変化がない。どこまで行っても木しかない。
だんだん暗くなってきた。おまけに鵺のような鳴き声までする。
「本物の魔女でも出てきそうね」
その時、雷が鳴った。
割と近くに落ちたらしく、大きな音に驚いた私は慌てて音と反対方向に走った。
すると突然、森が開けたのだ。
そこには古ぼけた大きな屋敷。あちこちひびが入り、ツタが絡んでいる。
屋敷から人が出てきた。少年のようだ。私は慌てて近くの木の陰に隠れる。
少年は私の隠れている木の近くへ来て、言った。
「いらっしゃい。待っていたよ、魔女さん」
私は驚いた。
To Be Continued―――?