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終わると知ってギリギリセーフ

作者: コロン
掲載日:2026/09/08

勝手に「サンキューなろラジ」投稿です。

完全におふざけです。



よろしくお願いします。



「ピピ…ピピ…ピピ…」





「う〜…ん…あとさんぷん寝かせて…」

 目覚ましを止めるため、ベッドから腕を伸ばして音源をペチリと叩くと同時に執事のセバスチャンの声がした。


「お嬢様、あとさんぷんが今ので10回目です」


 その声に布団を跳ね除け飛び起きる。

「じゃあ30分の遅刻!?もーっ!!なんで起こしてくれなかったのっ!?」

 いそいそとベッドから出てルームシューズに足を突っ込みながら、キッとセバスチを睨む。

 申し訳ございませんと頭を下げるセバスチ。しかし…

「お言葉ですがお嬢様、わたくしは何度も起こしましたよ「ピピ…」って言って」



 え?



「目覚ましのアラーム音かと思ってたのは…セバスチが言ってたの?」

「はい」

「もしかして毎日?」

「はい」

「じゃあアラームと思ってぺちぺち叩いていたのはセバスチの頭?」

「はい」



 そうだったのか…悪い事しちゃったな…

「なんか…ごめんねセバスチ。明日からちゃんと起きるわ…」


「はい。そうしていただけたら叩かれた甲斐もあります。…では、あと8分15秒で身支度を済ませてください」

 そう言うとセバスチは胸元に懐中時計を戻し、退室した。


「やば!」

 着替えと同時進行でメイドのマリアが髪を直してくれる。


 この世界に生まれ直してからというもの、髪型はずっとツインテールにしている。

 真ん中からぴっと分けた髪を耳の後ろらへんで結び、細いリボンをつけて終わり。

 ついっと鏡の前に立ち、頭を左右に振って高さ確認。

「今日も完璧!ありがとうマリア!」

 お礼の投げキッスをちゅっちゅっと2回して、セバスチが待つ玄関まで猛ダッシュ。


「いってらっしゃいませ」

 玄関前に待つセバスチが差し出したのは、いつもの食パンではなくホットケーキだった。

「あれ?ホットケーキ?」

 こんがりきつね色に焼き上がったホットケーキの上には、とろりとしたバターとメイプルシロップ。


「はい。昨年末に間に合わなかったので」


「え〜?ちょっと何言ってるかわかんないけど、ありがとう〜!このホットケーキの焼き具合完璧だよ〜❤︎セバスチ大好き〜」


「ありがとうございます。ではあと20分で王城まで走ってください」

「きゃー!遅刻遅刻ぅ!」


 セバスチがフリスビーのように投げ飛ばしたホットケーキを、ジャンプしてパクリと咥えて走り出す。


 向かうは王城の舞踏会。




 異世界転生した私が持って生まれたギフトは「ギリギリセーフ」


 そのせいで毎日がサバイバル。

 暗殺者が王子や聖女に投げたナイフが、私の頬をかすめる事なんて日常茶飯事。


 王妃狙いの下剤入りのスープを間違えて飲んだ時は…もう、本当に何もかもがギリギリセーフだった。


 しかし私のそのギフトのおかげで、王族の命はしっかりと守られている。

 私が王族のそばにいれば、王族たちは命の危険を回避出来るため、私は「重宝」されている。


「まあ、要は捨て駒よね」


 咥えたホットケーキをもぐもぐと食べつつ走る。


 木枯らし吹く外。

 青ひとつない曇天の空からポツポツと雨の雫が落ち始めたが、雨宿りしてる暇なんてない。

「急がなきゃ」



 厄介なギフト持ちの私をきっちり支えてくれるセバスチ。

 前世の記憶の事も理解してくれている。


「セバスチがいなかったらこの世では心折れてたわ」


 前世ではそこそこいい年まで生き、世の中の酸いも甘いも味わってから死んだ私。

 キラキラの見た目だけの、若くてヤングな若僧に心惹かれることはない。


「セバスチの余裕が好き♡」


 まあ、セバスチからしたら私なんて玄孫手前にしか見えないかもだけど…

 セバスチのためなら明日からちゃんと起きよう。そう思えるのだ。



 ホットケーキの最後のカケラをごくりと飲み込み、閉まる寸前の門をスライディングでギリギリくぐる。


 あとはそこらをウロウロしているだけで、任務遂行なのだ。


「舞踏会に行く気はしないのよね〜」


 陛下や他の王族がいるであろうホールには向かわず、なんとなく図書室へ向かう。

 先日読みたい巻がなかったシリーズ本、今日はあるかと見に行く事にした。


 人気のない図書室。いつもはぴっちりと並ぶ図書室の本が、今日は背表紙がバラバラだった。

「誰かのイタズラかな」と、一冊一冊押し戻す。


 それが内通者が連絡のために仕込んだ合言葉とも知らずに。

 そうやってまた城内の陰謀を知らずのうちに阻止していた。


 先日無かった本「オルゴール。パンダの通せんぼ」の12巻を無事見つけ手に取ると、窓辺に置かれた椅子に腰掛ける。

 魔除けのために下げられた風鈴が鳴らす鈴の音を聞きながら、本を開くとハラリと一枚葉書が落ちた。


 拾ってみればそれは年賀状。





「んん??……ちょっと待って?年賀状はないでしょう。ここ異世界なんだけど?」



 でもつまりは異世界。だからなんでもありなんだと納得し、書かれた文字に目を通す。


 《ずいぶんとあけましておめでとうございます。

 2026年3月に放送が終了いたしました「下野紘・巽悠衣子の小説家になろうラジオ」に関しまして、番組終了後もYouTubeチャンネルにてアーカイブは引き続き公開しておりましたが、2026年9月30日をもってアーカイブの公開が終了となります》


 ずこーーーっ!!


「年賀状を使った、ただのお知らせじゃねーかーーいっ!!」



 ツッコミながらも、寂しくなるなと涙がポロリ。


「もしも…違うカタチで復活したら…私の涙と労力を返してね…」





 使わなかったキーワードを突っ込まれたらどうしようと考えながら





 私はそっと本を閉じた。







2025年のなろラジに投稿するつもりで書いてエタったものを引っ張り出しました。


なろラジ、なくなり寂しいですね。



お読みくださりありがとうございました。

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― 新着の感想 ―
なろラジ、なくなってしまうのが寂しいですね…… 1000文字の縛りで色々な方の作品が見れて、本当に面白い企画でした…… 「セバスチ」呼びがなんだか「彼ピッピ」みたいでツボりましたw
セバスチ笑。名前が最高です(*´ω`*) 懐かしいキーワードの数々を見ていたら、なろラジの記憶が走馬灯のように頭を過りました。 なろラジ作品、人によって全然カラーが違って面白かったですよね(´・ω・`…
セバスチ……主人公のためにあの起こし方を……? なんていい人……!!! でもフリスビー(笑)。 「ギリギリ」ではなく「ギリギリセーフ」で本当によかったです。ですが、うら若き乙女なのに、下剤入りスープ飲…
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