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【完結】1000年後に目覚めた転生勇者が、もふもふ毛玉になって少年と旅をするお話  作者: すくらった


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第42話 六番目の『七災禍』

 セレステの気配が空から完全に消えたあとも、村は元に戻らなかった。

 凍りついた家々が、ぱちり、ぱちりと音を立ててひび割れている。


「……行った、のよね?」

ホリーが空を見上げる。


「今はな」

 トレセルは油断なく答えた。

「だが、あいつは『始まりの合図』を告げに来たにすぎない」


 その言葉を裏付けるように、村の中央、かつて広場だった場所で、空間が歪んだ。


 音はなかった。

ただ、黒でも白でもない闇が、炎のようにしきりに揺らめいているのが見えた。


「なに、あれ……」

ホリーが一歩下がる。


と、闇の中心に人の輪郭が浮かび上がった。


 それは、男でも女でもない。

 幼さと老いが同時に存在し、肌は透き通るように淡く、胸の奥で青紫の光が燃えている。


「よぉ初めまして、勇者と、その同行者たち」


『それ』が、低く名を告げた。


「俺は『魂』の七災禍、シェール」

 シェールの声は、直接『心の内側』に届いた。

 音ではなく、感情として。


「安心しろ。今日は戦いに来たわけじゃねぇ」


 その言葉とは裏腹に、空気が張り詰める。


 シェールは、ゆっくりと両手を広げた。


「セレステの言っていた、『ふさわしい舞台』、それを整えにきただけだ」


 すると地面から、七つの青炎が噴き上がった。


 青とも紫ともつかない、魂の火。

 炎は熱を持たず、だが確かな実在をもって、三人の前に並べられていく。


「こいつは、『魂の道』」


 七つの炎が、円を描くように配置される。


「俺たち七災禍は、全員があなたたちと戦うことを望んでいる」


 ホリーが目を見開く。

「……戦いたがりすぎじゃない?」


 シェールは、クックックと笑った。


「確かめたいんだよ」

「確かめたいって、何を?」

ヴィーノが、震えながらも問い返す。


青紫の炎が、ひとつ強く揺らぐ。


「お前らが、影に抗う存在なのか、それとも俺等を打ち倒し、自らが新しい災いになるのか」


トレセルが舌打ちした。


「どっちでもねぇ。お前ら全員ぶっ飛ばしてからフェイドゥーラのやつもぶっ飛ばして、世界の平和を取り戻す」


「あっそ」


シェールはトレセルの言葉を受け流す。


「この七つの炎は、それぞれが『災い』に通じている」

「災い?」

「挑む七災禍への、魂の経路」


 ホリーが、一つの炎に近づく。

「じゃあ、順番はそっちが決めるんじゃなくて……」


「ああ」

シェールは頷いた。


「選ぶのは、お前らだ。自らの意思と責任において、好きな炎を選び、好きな順で戦っていけ」


 沈黙。


 トレセルが腕を組む。

「覚悟を決める時間はくれたってわけだな」


 シェールは、満足そうに頷いた。


「そういうことだ」


 その身体が、少しずつ光に溶けていく。


「炎は、ずっとここにある。ここは、全ての始まりの地、だからな」


 最後に、シェールの声が響いた。


「選べ」

「進め」

「そして、結果を受け入れろ」


青紫の炎だけを残して、シェールは消えた。


 凍りついた村の真ん中で、七つの魂の火が、静かに燃えている。


 ホリーがぽつりと言った。


「……なんかさ、なんというか、世界に、指名された気分じゃない?」


 ヴィーノは、炎を見つめながら呟いた。


「フェイドゥーラ最強の配下、七災禍。必ず……」


 その瞬間、七つの炎が、同時に脈打つように揺れた。


「まずは、態勢を整えよう」


 トレセルの言葉に二人は頷き、近くのガムルの街に宿をとり、準備を整える。



そして数日後。再び、彼らは『七つの炎』に戻ってきた。


「さて、どこからぶっ倒してやろうか」

トレセルは腕を鳴らす。


炎には、それぞれ文字が浮かんでいる。



全てを喰らい、全てを破壊する『獣』


全てを圧し潰し、世界を瓦解させる『剛』


全てを腐らせ、終焉へ巻き戻す『時』


全てを凍土と化し、空もを焦がす『天』


全てを斬り裂き、存在を否定する『武』


全てを喪わせ、輪廻すら殺す『魂』


全てを歪め、理を嘲り尽くす『超』



「『獣』のウル、『剛』のメタ、『天』のセレステ、『武』のロンフゥ、『魂』のシェール、『超』のタマモ……」

ヴィーノが数え上げる。

「これのうち、『時』だけは出会ってないね」

ヴィーノが唸る。


「一人だけブラックボックスにして判断を迷わせる……もてあそびやがって」

トレセルが唸る。


「どうする?」

「『時』に行こう。不確定要素はなくしておきたい」


ホリーの問いに、ヴィーノは迷いなく答える。


「俺もその意見に賛成だ。じゃ、いくぜ」


三人は青い炎に手をかざす。

熱さは、無かった。

三人の意識が反転し……


その姿は、村から消えた。

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