第30話 鋼鉄の兵士たち
ずらりと並ぶ黒き人影。金属が薄暗い工場内で反射し、無感情な銃口が一斉に三人を射抜く。動きは寸分の狂いもなく、まるで一本の線でつながった生体のようだ。
「……機械兵士か」
トレセルが低く呟く。その瞳に、冷静さの奥に潜む緊張が滲む。
スピーカーから、軽やかな声が工場の空気を震わせた。
『そう、その名も『量産型影兵装〈ガンナー・モデル〉』。個体差ゼロ、迷いゼロ、命令すれば必ず仕留める。僕の最高傑作だよ』
「最低傑作ね」
ホリーがとん、とん、とステップを踏みながら前に踏み出す。耳をぴんと立て、低く構えた足がリズミカルに床を叩く。
『ウサギちゃんは近接戦闘型だよね。でもガンナー・モデルは『そもそも近づかせない』。さあ、どうする?』
「決まってるわよ、やられる前に、やる!」
ホリーの瞳が鋭く光る。
カシャッ──。全ガンナー・モデルの銃口が赤く瞬く。
「ヴィーノ!」
「うん!」
ヴィーノが腕輪を外す。トレセルが光となる。二人の輪郭が揺らぎ、淡く光る魔法形態へと変化する。
ヴィーノ由来の透明な魔力の薄膜が彼を包み、銃弾を遮る盾のように光る。
轟音と閃光が工場を震わせる。一斉掃射する機兵の間を縫ってホリーは床を蹴り、宙を舞い、ガンナー・モデルの頭部へ回し蹴りを叩き込む。1体が崩れるが、残りは数十体。
「トレセル、そちらから見て左、やつらが固まってる!」
敵の懐に潜り込んだホリーが、その分布を見抜く。
「了解!」
トレセルが拳を叩きつけると、透明な魔力の線が弾道を打ち砕き、衝撃波が広がった。
「ホリー、右!」
「おっけぇ!」
ホリーは壁蹴りで横回転し、近づいてきた1体の胸部を蹴りとばす。金属と影が火花を散らす。
『へぇ……近接でここまで押すとは思わなかった。君たちは飽きさせないねぇ』
しかし銃口は依然として三人を狙い続ける。崩されても崩されても列を整え、脅威が残り続ける。
と、フロア奥に、天井を突き破って仁王立ちの機体が現れた。胸部には円形の黒いスピーカー、無数の赤外線センサーが光の筋を描く。
「仕方ない、僕が一気に制圧するか」
スピーカーからガンスミスの声。
「よし、親玉を引きずり出したぜ」
「別に売り物じゃないから説明もしたくないんだけど……この機動兵器『G-frame』、僕専用の一点物だ。正直強いよ」
G-frameが爆発的な初速で動く。少年が飛び退くより早く腕が床を抉り、衝撃波で吹き飛ぶ。
「ちょ、速すぎない!?」
「避ける前に、着地点に来ている……!」
ホリーが飛び込むが、G-frameのセンサーは進路に先回りして射撃。トレセルが炎を放つも、機体は完璧にガードする。
「反応速度が……人間じゃない」
「もちろん、僕ごときに君たちの動きは見えてなんていないさ。オート感知しているだけだ。位置、動きを生体電気からね。攻撃は事前に計算され、君たちは僕に触れることすら許されない」
彼は冷酷に言い放った。




