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【完結】1000年後に目覚めた転生勇者が、もふもふ毛玉になって少年と旅をするお話  作者: すくらった


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第24話 天空への道

 空気を裂くように、ナコが鋭く叫ぶ。


「回避!回避! とにかく動かないと、的にされるよ!」


 三人と犬騎士団を背に乗せたフライングドッグたちが、急角度で旋回する。毒の矢が空を埋め、避けても避けても鋭い針が迫る。風の流れが刺さるように体を打つ。


 タイタロウの鋭い声が指示を飛ばす。


「慌てるな! 風上へ移動! 火炎攻撃を風下に向けろ!」


 犬騎士たちは指示に従い、一斉に炎の矢を放つ。数条の炎が空を横切り、魔蟲の群れが次々と焼け落ちる。しかし、焼けたそばからさらに新たな群れが押し寄せ、まるで空全体が敵に覆われたようだった。


 ナコが急上昇し、声を張る。


「あのトンボ野郎が司令塔だよ! あいつを倒さないと、いくら焼いても意味がない!」


「なら……弾幕を突破するしかない」


 しかし、セクの周囲は蜂の巣のように魔蟲が密集し、近づくどころか視界さえ阻まれる。セクは虫を指先だけで操り、群れを瞬時に動かす。


「ふん、燃やすのが得意らしいが、焼ける範囲より、焼け残りのほうが多いな」


 セクが手をあげる。その瞬間、空全体から強酸が降り注いだ。金属を溶かすような臭いが鼻を刺し、空気が煙のように白く濁る。タイタロウの警告が絶叫のように響く。


「散開! 一滴でも当たれば命はないぞ!」


 犬騎士団は必死に身をかわし、編隊は瓦解する。羽ばたきと叫び声が空中で混ざり、戦況は完全にカオスと化した。


 ホリーの声が焦りを帯びる。


「炎の範囲……もっと広げられないの!? 今のままだと抜けられちゃう!」


 トレセルは唇を噛み、冷汗をぬぐう。


「……これで限界だ。もっと『風』があれば……!」


 その言葉に、ナコの瞳が光った。


「風なら私たちで作れるよ!」


 タイタロウも力強く頷く。


「よし、フライングドッグの羽ばたきで、炎を面にして押し広げろ! 突破口を作るんだ!」


 ナコが叫ぶ。


「みんな! フォーメーション『風の合図』!」


「はいっ!」


 飛犬騎士団が手綱を引き、隊列は美しい扇形に変化する。無数の翼が一斉に震え、空気が唸り、戦場全体がうねるように動き出した。


 トレセルが拳を突き出し、魔力を解き放つ。


「じゃあいくぜ!最大火力!エンチャント!ファイヤー・ブロー!!」


 炎は渦となり、空に橋を架けるように広がった。


 タイタロウが号令する。


「翼風支援、開始!!」


 羽ばたきが炎を押し広げ、風が渦を巻く。紅蓮の壁が、空を覆い尽くすほど巨大に膨張する。燃え盛る炎の津波が魔蟲の群れを押し流し、空の向こうまで染め上げた。

「うおおおおおッ!!」


 セクの目に、わずかな恐怖が映る。いつもは冷静なはずの顔に、初めての焦燥が走る。

「な……なに……!? 馬鹿な……!」


 トレセルが叫ぶ。

「今だ! 一気に叩く!」

「く、させるか!」

 セクは必死に虫を呼び戻すが、もはや制御は効かない。


 やがて炎の奔流がセクの体をも包み込む。甲殻が弾け、その輝きが瞬く間に消え去った。


「ぐわああっ!……フェイドゥーラ様……申し……訳……」


 その声は風に溶け、影は跡形もなく消滅する。


 焼け残った巣は炎に包まれ、灰の雨となって落ちながら砕けていく。敵影は完全に消え、空は静寂を取り戻した。


「勝った……勝ったよ私達!」


 完全勝利に、騎士団の歓声が響いた。


 数刻後、飛犬の里。


 ナコがフライングドッグから降り、ヴィーノたちへ駆け寄る。


「本当に助かったよ……! ありがとう!」


 タイタロウも笑みを浮かべる。


「親玉を倒したことで、空域の虫の指揮系統は完全に崩壊した。もし残党が来ても我々だけで対処できるだろう。本当に、あなたたちがいなければ我々は全滅していたところだった」


 ホリーはへたり込み、息を荒げる。


「ひーっ……空中戦、疲れすぎた……!」


 ヴィーノも力なくうなずく。

「僕も……腕がまだ震えてる……」


 トレセルが微笑み、深く息を吐いた。

「だが――悪くない連携だったな」


 ホリーが胸を張り、にやりと笑う。

「だよね!」


 タイタロウがトレセルの手を取り、まっすぐな目で告げる。

「ありがとう勇者どの。約束通り、空の図書館まで案内しよう。あなたたちは『天空図書館の客人』としてふさわしい」


 三人は互いに視線を交わし、同時に頷く。

「行こう。雲の上の図書館へ!」


 村でゆっくりと休んだその翌日。ナコが笛を吹き、ヴィーノ達を乗せたフライングドッグたちが翼を広げて空を舞う。


「じゃ、行くよ」

 ナコと三人は、大空へ飛び立った。


 空の向こうのその先には、まだ誰も知らない秘境が広がっていた。

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