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【完結】1000年後に目覚めた転生勇者が、もふもふ毛玉になって少年と旅をするお話  作者: すくらった


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第21話 飛犬騎士ナコ

 早速入手したフェローストーンとメタの外殻を組み合わせると、三人の前に光り輝くスクリーンが現れ、その画面中央に古代文字らしき記号がきらめく。その下には地図、雲の上の図書館、そして……『翼の生えた犬たち』の画像。

 トレセルが眉をひそめる。


「……これは……なんだ?」

「この地図は、『地図をセットしろ』ってことかしら」

「トレセル、何かわからない?」


 トレセルは文字を目を凝らして見つめ、首を振った。


「ダメだ。これは勇者の俺が生きていた1000年前より、もっというと大賢者だった時よりずっと前の文字だ。すまんが俺にも読めない。しかし俺の大賢者時代よりさらに古い時代に、こんな超文明が……」

 その技術力に、勇者は目を見張る。


「そんな……フェローストーンって一体何なの……?」

「ストーンと名前がついてはいるが、おそらく自然の石じゃない。超古代の通信端末か何かだ。あの岩石龍は、大昔にこの端末を飲み込むか何かしたのだろうな」


 ヴィーノは画面に浮かぶ、雲の上に建てられた図書館の絵と、翼の生えた犬の姿に目を奪われる。


「これ空飛ぶ犬、かな……?」

 ホリーは目を丸くして指をさす。

「雲の上に図書館……?」

 トレセルは眉を上げ、額に皺を寄せた。


 何となく意味が理解できそうな気もするが、細部は不明だ。


「……仕方ない、街で情報を集めるしかないな」

 三人はニブラリの街へ向かった。だが数刻後、聞き込みをした三人の顔には困惑が浮かんでいた。


 街のあちこちで「空を飛ぶ犬」「雲の上の図書館」のことを尋ねるが、どこでも首をかしげられるばかりだった。魔法都市の住人たちは、そんな話を聞いたことがないらしい。


「うーん、空を飛ぶ犬のことも、雲の上の図書館のことも、誰も知らないなんて……何なんだろうあの画面……」


 ヴィーノが肩を落とすと、ホリーもすっかり元気をなくした様子で耳をへにょっと垂らした。


「魔法都市の人でも分からないんじゃ、もうどうしたらいいのさ……」


 三人が途方に暮れて考えこんでいたそのとき、小さな影が横からぬっと現れた。


「……ねえ。あなたたち?」


振り向くと、褐色に金髪の小柄な少女が、青い目でじっと三人を見つめていた。

大きな布袋を背負い、首には小さな笛を下げている。


「えっと、何か用、かな?」

 ヴィーノが戸惑い半分に問い返した。


 少女は一歩近づき、鼻をすん、と鳴らす。


「あなたたち、すごく『変なニオイ』がするの」


「……は?」


 三人の声が見事に重なった。


 ホリーが真っ先に慌てて自分の脇を嗅ぎ、ぶんぶんと首を横に振った。

「えっ!? ちょ、ちょっと待って! 私今日汗かいたけど! 変なニオイなんてしてないし!  

トレセル? ボクちゃん? どっち!?」


「ぼ、僕!?僕はそんなに汗かいてないはずだけど……!」


 ヴィーノも必死に袖を嗅ぎ、顔が真っ赤になる。


トレセルは深い溜息をついた。

「俺はそもそも魂だ。ニオイなんてしない」


 少女はきょとんと目を丸くしたあと、慌てて両手をぶんぶんと横に振った。


「ち、違う違う!そうじゃないの! 汗のニオイとか、そういうのじゃなくて!」


 再び、すん、と空気を吸う。


「嫌な感じの空気がまとわりついてるというか……不吉で、ざわざわする感じ。 うちの一族はそういうの、嗅ぎ分けられるの」


 三人は思わず顔を見合わせた。


「不吉で……ざわざわ?」

 ホリーが眉をひそめる。


「……心当たりが、ないこともないが」

 トレセルが静かに目を伏せた。


 少女は改めて三人を見上げて名乗った。


「私、ナコ。ナコ=イヌガスキ。 空飛ぶ犬を操る、『飛犬騎士』の一族」


「空飛ぶ犬を……操る一族!」

 三人の目が驚愕に見開かれる。

 「……あなたたちのニオイ、最近、アイツらの巣の近くで嗅いだものと似てる。 だから声をかけたの」


そう言って、まるで何気ないことのように続けた。


「……あなたたち、『雲の上の図書館』を探してるんだよね? 街の人に話してるの聞いちゃった。

私たち、きっと力になれるよ。その代わり……」


 そこまで言ったところで、ナコはじいっとトレセルのほうを見る。


「ねえ、話変わるけど、そこの『イヌちゃん』、ちょっと触らせてもらっていい?」


トレセルの表情が絶句で固まり、ヴィーノとホリーが顔を見合わせる。


「……イヌちゃん?」

「……トレセルのこと? 見えるの?」


ナコは無邪気な笑顔でトレセルを指さし、きらきらした目で言い切った。


「だって、その子『霊獣』でしょ?私、霊獣大好きなんだ!」


「待て待て、俺は霊獣なんかじゃ……」

 逃げ出そうとするトレセルを、ホリーとヴィーノががしっ、と捕まえてナコに差し出す。

「どうぞどうぞ」

「こんなのでよければ」

「ちょ、おま、ヴィーノ! んで誰がこんなのだクソウサギ!あっ、ちょっと待って、ああーっ!」


「もふもふもふー!」


 トレセルの叫び声が、ニブラリの大通りに響き渡った。幸運なことに、それが聞こえたのはヴィーノとホリー、そしてナコだけだった。

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