表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【完結】1000年後に目覚めた転生勇者が、もふもふ毛玉になって少年と旅をするお話  作者: すくらった


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

14/52

第14話 二番目の「七災禍」

 冷たい風が渓谷の底から吹き上がり、古びた鉄橋を揺らしていた。川幅の広い谷を一本の鉄橋が跨ぎ、足元の鉄板は長年の錆で赤黒い。ヴィーノは、その鉄板に確かな重みを感じながら慎重に進む。


 横をふわふわと進む毛玉トレセルは、揺れる橋の欄干に尻尾を引っかけながらバランスを取っていた。


「いいよなぁ、トレセルは浮けて。下、見たら怖くなってきたよ」


「慎重に行けよ。落ちたら骨も残らんぞ、ひひひ」


「脅かさないでってば!」


 そんなやり取りをしながら渡っていた、そのときだった。


 バンッ!


 橋を支えるワイヤーの一本が、まるで何かに強く引き寄せられたように急激に張り、次の瞬間、金属疲労の破断音とともに弾け飛んだ。


 切断されたワイヤーはしなりながら跳ね上がり、鋭い金属の鞭となってヴィーノの頬をかすめた。


「痛っ!」


 続いて橋の側面から、ボルトの外れた鉄板片が浮き上がり始める。まるで見えない手に引っ張られているようだった。


「ヴィーノ、俺に掴まれ!」


 トレセルが尻尾で支柱に絡みつき、ヴィーノの体を固定する。その直後。


「ふふふ……試してあげるわ。あなたたちの力」


 橋の中央付近。

 黒い装甲のような服をまとった女性が、浮遊する鉄片を従えて立っていた。周囲の鉄くずが明確に『彼女に向かって吸い寄せられている』。


「また『影』か!」


「そう。私は『磁』のマグネラ。逃がさないわよ」


 トレセルが剣の形に変わり、ヴィーノの腕に収まる。


 マグネラが指を弾くと、切断されたワイヤーが再びビュンと唸り、鉄片が正確な軌道で飛んでくる。ヴィーノは剣で弾くが、衝突のたびに橋がわずかに軋んだ。


「くっ……磁力で剣が引っ張られてる!」


「重心を落とせ! 橋を踏み締めろ!」


 ヴィーノの足元では、磁力に反応して鉄板がガタつくだけで、完全に浮き上がるほどではない。

(とはいえ、壊れかけの橋がなんとか耐えている、という感じだな。長期戦になるほど不利になる)

 トレセルが分析する。


 マグネラが笑う。


「ジンを倒したそうね。でも……あなたたちでは七災禍『剛』のメタ様には敵わない」


「『剛』のメタ……?」


 その名を口にした瞬間、マグネラの背後、橋の対岸が大きく隆起し、地面が割れた。


 そこに黒い光沢を放つ巨大なオベリスクが姿を現した。圧倒的な存在感が空気を震わせる。

「まさかあれが……!」


「ああメタ様……! いらっしゃったのですね。私に、力を……!」


「……」


 オベリスクから金色の電磁波が放たれ、マグネラの身体がきらめく。


その瞬間、電磁波を浴びたマグネラの周囲に、渦を巻きながら磁気嵐が形成される。鉄片が狂ったように回転し、あらゆる方向へ猛スピードで飛び散る。跳ね返る鉄片がさらに別の破片を弾き、まるで無限の連鎖攻撃のように襲いかかる。橋の鉄板がたわみ、揺れる足元に鋭い衝撃が伝わる。空気がビリビリと震え、耳を突く高周波の金属音が響いた。


「ありがとうございます! メタ様!」


 マグネラが瞬間的に加速する。


 彼女の貫手が橋の鉄板に触れた瞬間、局所的に鉄板が削り取られ、小さな穴が空く。橋全体は持ちこたえているが、振動は確実に大きくなっていた。


「速い……!」


 ヴィーノは踏み込みながら衝撃を逃がし、落下を回避する。


「融合するぞ、ヴィーノ!」


 ヴィーノは頷くと腕輪を外し、トレセルを取り込む。赤い瞳が光り、髪が白く逆立つ。

 「アース・ウォール!」

 橋の鉄材ではなく、『鉄板の隙間から露出した砂利や土砂』が大地の精気に応じて押し上がり、少年の周囲に土壁が盛り上がる。


「磁力が……弱まっていく?」


「渓谷なんかの古い土の魔素は磁力を散逸させる。鉄片の磁力線を繋げられなければ、お前の力もまとまらん!」


 トレセルは地面からせり出した小ぶりな岩の槍を投げつける。それは磁力に引っ張られず、真っすぐ加速してマグネラに直撃する。


「ぐっ……!」


 マグネラがよろめく。


「まだ……まだ終わらないわ!」


 マグネラが橋の鉄骨を引き寄せようとするが、土壁が磁力の流れを遮り、鉄片が吸い寄せられない。


「アース・ウォールで押し切ってやる!」


 トレセルは土壁を前方に押し出し、橋を壊さないよう、衝撃ベクトルを前方向に集中させながら、岩の牙と連動させて大きな衝撃波を叩き込む。


「くっ!」


しかし、マグネラは退かない。電磁波の渦が残る鉄片や鉄板を制御して土壁に叩きつける。壁は揺れ、小さな亀裂が入り、跳ね返る破片が壁を削る。

「このまま鉄の竜巻で粉々に砕いてくれる!」


 と、ヴィーノは先ほど外した腕輪が転がっているのに気づいた。

「このっ!」

 腕輪をマグネラに投げつけると、金属が干渉し、一瞬だけ電磁波が乱れる。


その瞬間、二人は反撃に転じた。土壁と岩の槍を連動し、力を一点に集中させる。ヴィーノは踏ん張り、トレセルと呼吸を合わせて土壁を前方に押し出す。刹那、全ての力が一点に集中して、最大になったことを彼らは感じた。


「これで、終わりだ!マグネラ!」


 一気に押し出された土壁の衝撃を受けたマグネラは後方へ吹き飛び、対岸の地面に転がった。


「……見事。でも……あなたたちでは……メタ様には……勝てない……!」


 光に包まれ、彼女は消滅した。


 巨大オベリスクの電磁波も静まり、谷に静寂が戻る。


「ふぅ……橋、よく耐えたな……」


 ヴィーノが見下ろすと、橋には局所的な穴や裂け目が残っている。


「これ以上の戦闘は無理だな。急いで渡り切るぞ」


 二人は慎重に、ダメージを受けた橋を渡り切り、対岸のオベリスクへと歩みを進めた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ