玉藻前
「んっ・・・ここ・・・は・・・・・・?」
俺は目を覚ます。目を開くと知らない天井だった。俺のことを見ていてくれたのか、俺の声を聞いた鳳凰が横から俺のことを覗いてくる。
「・・・・・・ッ・・・!」
「あぁ、まだ起きないでください。一応、ルーが神威に回復の魔術をかけましたが、何故か効果がなかったのですわ・・・。ですから安静にしていて欲しいのですわ」
「・・・なるほどな」
俺は起き上がろうとして、傷による痛みで声にならない声をあげた。それに対して、鳳凰が俺の体を抑えるように押し戻された。
「けど・・・この前、お前がやった時は治ったよな・・・?」
「そうですわね。もしかしたら私が今やったら治るかもしれませんわね・・・」
「ダメ元でもやっておこう」
「分かりましたわ。治らなくてもケチ付けないでくださいよ」
俺は鳳凰の言葉に頷く。それを確認した鳳凰は俺の体の上に手を浮かせた。すると、下から緑色の五芒星の紋様が浮かび上がってきた。それは俺を埋める範囲で広がり、俺の傷は徐々に無くなっていった。しかし、この前のようにあっという間という訳ではなくあまり効いてないのか治る速度が遅い。そうして、緑色の光が消え、五芒星の紋様が消える頃には俺の傷も全て元通りになっていた。
「・・・治りましたわね。やっぱり神話とかが関係あるのでしょうか?」
「かもな。でもまぁ、それは今度師匠やアス姉に聞いたらいいだろ」
「そうですわね」
俺達は2人揃って首を傾げながらも今は考えないように思考をシフトチェンジした。俺は傷が治ったため、体をズラして立ち上がる。
「ちなみになんだが、鳳凰。ここは・・・?」
「この後説明しますわ。でもとりあえずは・・・・・・神威、貴方が無事になって良かったですわ」
鳳凰は立ち上がって俺のことを手招きしてついてくるようにと伝えられる。俺はよく理解していないまま鳳凰のあとをついていく。ついていくと、少し広いところに出た。そこには、真ん中に囲炉裏があってそれを囲むようにルトとルーシャ、それに知らない女性がいた。
「あ、神威。起きたんだね」
「あー!良かったぁ・・・」
ルトとルーシャが俺のことをみて声をあげる。それを聞いただけで俺は3人にどれだけ心配をかけていたのかある程度理解した。
「悪い。対処が遅れてな。それと・・・・・・その女性は?」
「紹介が遅れました、ここの家主である玉木前子と申します」
「神威、この人が私達のことを助けてくれたのですわ」
「そうなんだな・・・・・・。ありがとうございます、玉木さん」
俺は玉木さんにお礼を言う。玉木さんは気にしないようにと返してくる。そうして、彼女は囲炉裏の上で混ぜていた鍋をお椀によそう。そして、それらを俺達に渡してくる。鳳凰から聞いた話だと、遅いからご飯と一緒に泊まっていけとのことだった。
「何から何まですみません・・・」
「いえいえ。困った時はお互い様ですよ」
「ありがとうございます」
聞けば聞くほど優しいと思う。鳳凰達から聞いた話だと、木に当たって気を失った俺のことを追って雑木林におりてきたあと、ルトが俺のことを背負って雑木林を歩いていたらしい。そんな中、山小屋を見つけノックをすると玉木さんが出てきたらしい。そして、俺のことを見て寝かすことと日暮れだったためそのまま厄介になることになったと。
「それに・・・人を化かすのは得意ですから」
「・・・ッ・・・・・・!」
「え?玉木さん、何か言いましたか?」
「いいえ、何も言ってませんよ」
玉木さんがボソッと言い、それが聞こえたルーシャが聞く。それに対して玉木さんは何も無いと答えたが聞こえた俺は考え始める。
化かす・・・。さっきの猫叉もそうだが、化かす妖怪となると限られる。それこそ、タヌキや狐となる。四国となるとタヌキが有力になるけどここは本州。そう思うと、可能性が高いのは狐。それでも、どんな妖怪かは分からない。狐と言えども猫叉のように尾が何本もあればそれを狐という人がいるだろうから。
「神威、どうかしたの?」
「い、いや、なんでもない」
「そう?まだしんどいならいいなよ?」
「分かってる」
俺が考えているとルトに気付かれて不安げに見られる。どうやら心配からの気遣いだったらしい。玉木さんはそんな俺のことを見透かすように見てくる。
「多分、神威は疲れているのですわ」
「それなら早く休むべきですね」
「そう・・・だな・・・・・・」
俺はそう答えると、鳳凰に急かすように立ち上がらされてそのまま連れられて行く。その後は、鳳凰に横にさせられて寝るように促される。そうして、少ししているとやはり疲れていたのかすぐに眠気が襲ってきて俺の意識はフェードアウトした。
それから少しして俺は何故か目が覚めた。俺は暗い中、目を細めて周りの様子を確認する。俺の左隣に鳳凰が寝ていて、反対側にルトとルーシャが寝ていた。それを確認してもう一度寝ようと思ったところに声が聞こえた。
「フフフッ・・・。神々の愛し子達をここで殺すと私も」
「ッ・・・!」
俺はその声を拾ってしまい寝るに寝れなくなった。その後は音を聞くように集中する。トントンとこちらに向かってくるような音が聞こえ始める。俺は鳳凰が返してくれたボールペンを握る。これは師匠達が何時でも持っておけるようにとボールペンに変形できるように改造された霊剣だからだ。
少しずつだけど足音が大きくなってくる。俺は起きていることが気付かれないように目を瞑る。そうして足音が止まった。
「フフフッ。これで私も・・・!」
そう言って彼女は手をかざして俺達に呪術をかけようとしてくる。俺は咄嗟にボールペンのキャップを外して刀にして向かってくる呪術を断ち切る。それと同時に隣で寝ていたはずの鳳凰が彼女の左手を断ち切った。
「アァァァァ!起きていたのか・・・!」
「生憎少し前に目が覚めてな」
「なんとなく雰囲気で分かっていたので」
彼女は断ち切られた腕を右手で抑えながら俺達に聞いてくる。俺は刀を、鳳凰は小刀を構えた状態で律儀に答える。さっきの彼女の声で起きたのかルトとルーシャも目覚めている。
「・・・玉藻前・・・ですわね。貴方は」
「・・・・・・そうですよ・・・。または九尾の狐とも呼ばれている妖怪ですよ」
「でも・・・関係ない。お前はここで倒すだけだ」
「あなた方に倒せますか?私はこれでも・・・日本三大妖怪のひとつです」
俺達は少し狼狽えたが、すぐに意識を切り替える。そうして狭い部屋の中で俺は霊剣である刀を玉藻前に当てようと横薙ぎに振る。それに合わせて反対側からは鳳凰が姿勢を低くして小刀を振っている。玉藻前は俺達の攻撃をヒラリと躱して俺達に告げてくる。
「今日は宣告です。私達はあなた方の邪魔をします。簡単に神託を解決できるとは思わないことです。それでは」
彼女は俺達にそう告げて煙玉を投げてきた。すぐに部屋は煙で包まれる。
「くっ・・・!アイツは!」
「それよりも神威、この煙をどうにかしないと!」
俺は玉藻前のことをどうにかしようとしたけれどルトに止められた。俺はそれに対して少しイラつきながら煙に対処する。そうして煙が晴れた頃には玉藻前は既に居なくなっていた。
「逃げられたね・・・」
「妖術だろうな。・・・が、何か妖怪側で起きていることは分かった」
「そうですわね。少なくとも・・・一筋縄では終えそうにないですわね」
「そうだね。僕達もあまり気を抜けなくなっちゃったね。このことは後で先輩達に伝えておくよ」
俺達はこれからの行動を話し合った。この場は確かに少しの間、戦場にはなったけれど使えなくなったわけじゃない。そのため俺達はここで朝になるまで待って朝になると同時に出雲に向かうことに決めた。
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では次回の話しでお会いしましょう!




