第18話 金髪さんの名前
「美味しい……これ、うちの茶葉だよね。こんなに美味しく淹れられたんだ……」
「えへへ。恐縮です」
私は金髪さんが淹れてくれたお茶を一口飲んで、思わず感嘆の声をあげてしまう。
大袈裟でなく、本当に私がこれまでの人生で飲んだ中で、それは最も美味しいお茶だった。
美味しいだけではなく、飲んでいると体の芯の奥の方からポカポカと温まってくるのだ。お茶自体が火傷しそうな熱いという訳でもないのに、それは本当に不思議な感覚だった。
本当に同じ茶葉のお茶とは思えない。
改めて驚きと共に金髪さんを見ると、彼女は笑顔で、どこか嬉しそうにはにかんでいた。
それはたまに職場で見かけるキリリとした金髪さんの姿からは想像できないぐらい柔らかな笑顔で、私は不意に金髪さんのことを、とても女の子らしいなと思ってしまった。
「──いや、本当に美味しいよ。何か、コツがあったりするの?」
「え、コツ、ですか? ええっと……」
私の質問に、困ったように言いよどむ金髪さん。
確かにこれほどのお茶を淹れる技術はおいそれと口外、出来るようなものではないかと、私は質問してから気がつく。
せっかくこんなに美味しくお茶を淹れてくれたのに困らせてしまったと質問したことを思わず後悔してしまう。
「いや、ごめん。ぶしつけなことをきいたよね」
「そんな! あのですね、コツというものはなくて……、ただその、ぁぃ……」
「えっ? ごめん、最後、よく聞こえなかった」
「いえ、何でもないですっ! すいません。うまく説明できなくて……」
何かを言いかけていたのを止めて、ブルブルと首を横にふる金髪さん。
ポニーテールにした金髪が激しく左右に振られている。
そんな私たちの様子を交互に首を振って眺めていた子リスちゃんが口を開く。
「とりあえず、ソルトさんはもう大丈夫そうです?」
私は子リスちゃんの方を向いて答える。
「え……ああ。おかげですっかり気分は良いかも。二人ともありがとう。本当に助かったよ。申し訳ないね、引き留めてしまって」
「いえいえ、少しでもお役に立てたなら良かったです」「私もです! そのっ」
子リスちゃんも金髪さんも優しいのだろう。嫌な顔一つせずにそう答えてくれる。
そのせいか、私も思わず金髪さんに向かって甘えたお願いを口走ってしまう。
「お茶、おいしかったです。是非また、飲みたいぐらいに」
「え、は、はいっ。いつでも淹れます。本当に、いつでも!」「ミゼッタさん、ほら。いきましょう。長居はご迷惑ですよ」
そういうと子リスちゃんが引っ張るようにして、二人は帰っていく。
──金髪さんのお名前は、ミゼッタさんか……
二人を見送りながら、私はそんなことを考えていたのだった。




