美桜の言い分
「…で、なんでギルドに行ったんだ?」
午後7時。本来なら3人で食事をしていた時間に、美桜さんと私はゆきに正座をさせられていた。
「まず、くろ。」
「ひぇっ」
ゆっくりとゆきの目を見ると、目が合い、ゆきからの圧を感じた。
「なんでギルドに行って迷子になるんだよ。」
ぐさっと私のお腹に言葉が刺さる。
「それに、なんで路地裏でカツアゲされてた?」
「カツアゲじゃなーい!ナンパだもーん!」
横で美桜さんが笑っているのが見えた。次の瞬間、ゆきは美桜さんの方にくるっと向きを変えた。
「お前はなんでくろとはぐれても探さないでダンジョンで無双してた?」
「そ…それは…えーと。」
無双?!羨ましい…ってかダンジョン?!
「美桜さん、ひっどい…。」
「誤解なんだよおおおお!」
そう言って美桜が立ちあがろうとすると、ゆきが美桜の頭をぽこんと叩いた。
「座れ?」
「ぐぬぬ…」
「まずは美桜の言い分を聞いてやろう。言え?」
「私は…」
〜説明〜
「待てええええ!!」
「しつっこいなあ?」
私はひったくり犯を追いかけていました…そして
「くろちゃん!回り込んで挟みうちにするよ!!」
声をかけたのに返事が返ってこないことに気づきましたが…
「お姉さんって運動オンチィ〜??」
「は?」
ひったくり犯の挑発に耐えられず…
「貴様あああ!この私を侮辱したことを後悔させてやらあああ!!」
「やっばあ、追いかけて来ちゃったけどここどこ?」
追いかけているうちに迷子になってしまいました。
「あのクソガキも見失ったし…。」
私がきょろきょろしていると、1人の男性が声をかけて来ました。
「やあ、嬢ちゃん?」
振り返るとそこには、筋肉ムキムキのゴツい人が立っていました。
「ひゃっ…な、なによ!!」
「ここから先はダンジョンの近くで危険区域なんだが、嬢ちゃん1人か?」
ゴツい人は屈んで私と同じ目線で話してくれました。
「1人よ。別に危険でも大丈夫よ。私は転生者なのよ。」
「転生者…か。記憶があるだけで力のない愚か者だな。」
「なんですって?!」
「とりあえず、こっちのギルド第二支部に来いよ。」
私はゴツい人に対抗しようと思いましたが、体格差が明確なので、勝てないと判断して、素直について行きました。
「第二支部…か。ずいぶん遠くまで来ちゃったなあ…。」
「?嬢ちゃんどこから来たんだい?」
「魔王の家…?」
「…?!魔王の家!?」
私は慌てて言い換えました。
「鎌倉!鎌倉から来ました!」
「鎌倉から来たのか?ずいぶん遠いな。着いたぞ。ここが第二支部だ。」
ゴツい人はそう言って振り返り、ギルドカードを見せて来ました。
「俺はSランクヒーラーの青斗だ。第二支部自慢のパーティーのヒーラーだ。実はそのパーティー、アタッカーがいなくてだな。お嬢ちゃん、やってくれないか?」
「え?!」
それから私たちはダンジョンに潜り込み、私は大活躍。青斗を守った事から、美桜の姉貴と呼ばれるようになりました。それから少しした頃にゆきに捕まったとさ…。
青斗は鎌倉ギルドに行くと言ってどこかに消えてしまいました。
「これが私の言い分よ。」
「短時間でよくそこまで主人公っぽくなれますね…。」
「はい、17てーん!」
ゆきがニコニコ笑顔のハイテンションで美桜さんに点数をつけた。
「ひっどいなあ。まあ否定はできないけど…。」
「否定してよ…。」
「話を戻すが、ギルドになんで行ったんだ?」
「お金がなかったから…です。」
私が恐る恐る言うと、ゆきは驚く素振りも見せずにあくびをした。
「まあ、知ってたけど。」
「え?」
ゆきは私の部屋のドアを指さして言った。
「音。まる聞こえ。」
「うそでしょ、はやく言いなさいよ。」
美桜さんがゆきの言動に引きながら睨んだ。
「とりあえず、その残ったひったくり犯の依頼を片付けるぞ。」
「今から?!」
時計を見ると、もう8時だった。晩御飯も食べておらず、1日中歩いたので、疲労が溜まっていた。
「ギルドのルールで、引き受けた依頼はその日のうちに片付けないと罰金になるんだよ。ほら、はやく行くぞ。」
「はぁい…。」
私とゆきは家を出る準備をしていたが、美桜さんが不思議そうにこちらをじっと見つめていた。不審に思った私は、美桜さんに声をかけた。
「美桜さん、さっきから大丈夫?」
「あ、ごめんね。大丈夫。ただ…。」
そう言って美桜さんはゆきの方向に振り返った。
「今日のゆき、なんか変だなって。」
「そう?私には普通に見えるけど…。」
「まあ良いわ。行こ?」
「わかった。」
私たちはドアを開けて外に出た。
ちゃる
属性:炎
能力:?
魔法:バフ、糸
身長:176cm
体重:62kg
好物:なし
苦手:きのこ
歳 :25才
種族:人間
ちゃるさんはゆきの実家の執事らしい…!おっかねもち〜!