作戦開始
ゆきは年に一度、王宮に帰る。
みなさんお察しの通りゆきは王族で、王子様だった。
ちゃるさんたちと一緒にお茶を楽しんだりするらしい。
美桜とくろは、それがチャンスだと思い、早速計画した。
「そう言えば、なんで魔王を倒せば元の世界に帰れるの?」
ちゃるさんが王宮に帰った後、くろたちは引き続きカフェで作戦会議をしていた。
「神様と契約したからだよ。すごいでしょ。」
「私手違い転生なのにそこんとこしっかりやってもらえなかったなあ。」
窓際の4人席に大きく紙を広げてオレンジジュースを飲む。
3時ごろだったので、人も少なく、集中しやすい環境だった。
「まず、美桜さんの能力と属性を教えてもらいたいな。」
「私の属性は空間〜!能力は切断!」
「おうおう、強いねぇ。」
くろがなめた態度をとるので、美桜はあからさまにイラついた様子で聞いて来た。
「じゃあくろの能力属性はなんだよ。」
「ないよ!」
その言葉を聞いた瞬間、美桜は岩のように固まった。
「えっ?」
「ないよ?」
「え?」
「ないよ?」
美桜は一瞬諦めたが、すぐに良い案を思いついた。
「ねね、くろ?」
「なんだい美桜?」
「ゴニョニョニョ」
2人は顔を見合わせて希望に満ち溢れた笑顔を見せ合った。
朝
「じゃあ、行ってくるから。」
そう言って家を出て行ったゆき。5分後に美桜がすかさず登場した。
「よし、作戦開始だね!」
〜ゆき目線〜
夜ご飯を食べたらすぐにゆきは帰って来た。
『ガチャ』
「ただい…ま?」
ゆきが帰ってくると、玄関の前でスタンバイしていたくろに刺されそうになったが、ギリギリ避けた。
「帰って来て早々これかよ。」
ゆきはいつも以上に呆れてため息を吐いた。
でも、何か違和感を感じた。
(なんだこの独特な違和感…くろの刺しに威圧感がほとんどない。)
「おっ、おかえりなさい、ゆき!」
(汗をかいていつも以上に焦っている…?)
そんなことは疲れていたのでゆきは無視してリビングに向かった。
(今日の帰省は楽しかったなあ…?!)
歩いていると、急に床が抜けたような感覚がした。
下をみると、真っ黒な空間に足が囚われていて、次の瞬間、上を見ると上も黒くなっていた。
気付けばあたり一体宇宙のようになっていた。
「空間の切り離しか。問題ない。」
そう言ってゆきは切り離し空間自体にヒビを入れて脱出した。外は草原で、みた事のない世界だった。
「空間転移だったのか?」
空間移動の準備をして、すぐ家に帰った。
家に着いた瞬間、四方八方から刃物が迫って来た。
「やるね。」
その刃物はゆきにとっては脆く、体に触れるだけで粉々になった。
〜くろ目線〜
『ミシミシッ』
ジャンプしたり、大きな振動を与えたので、家はミシミシと言って上の床が抜けた。
「いやあああ!」
「誰だ?お前。」
上から美桜が降ってきてゆきはキャッチしたが、不法侵入として今すぐ死刑すると言う勢いで美桜の背中に手を当てたので、くろが飛び出て来て、「ストーーーーップ!」と叫んだ。
「殺さないでー!」
「殺さないが?」
冷静になって見ると、ゆきは美桜の背中を治療しているだけだった。
「お前、俺をなんかの化け物と勘違いしてないか?」
「…」
(はっずかしいいいいいい!)
くろが顔を赤くしていると、ゆきが付け足したように言った。
「殺す覚悟は、殺される覚悟をきめてから、だぞ。」
「はい…。」
「んで…お前は誰だ。」
ゆきが下を向いてずっと抱えていた美桜をみた。
「とっ、とりあえず降ろせぇー!」
ゆきの手の上で美桜はジタバタ暴れた。
「はい。」
ゆきは美桜からパッと手を離したので美桜はドーンと背中から落ちた。
「いったああああ!何すんのよ!」
「降ろせって言ったろ。それより自己紹介。」
美桜がゆきの態度にムッとしていたが、スッと立って自己紹介をし始めた。
「私は美桜。手違い転移者!」
「まあいい。嘘はついてなさそうだから許してやる。今日は泊まっていけ。」
ゆきの返しに美桜はきょとんとした。
「さっき私あんたを殺そうとしたのよ…?」
「慣れれば慣れるよ。」
「え?」
キャラクター設定説明
くろ
属性:なし
能力:なし
魔法:位置特定
身長:142cm
体重:???
好物:もち
歳 :11才
種族:吸血鬼/人間