いざ街へ
「街に出るぞ!」
「へ?」
早朝、ゆきはくろの部屋にとつって来た。
「そんなボロボロな服を着るのはいやだろ。」
ゆきはくろの白い服を指さした。
ところどころ穴が空いていて薄汚れている。
「慣れてるし別に大丈夫ですよ。」
「女の子がそんな服着てちゃダメだろ!」
ゆきがキレ気味でツッコミをした。
でもくろは呑気にまだベットに転がっている。
「私行かないよ。行くなら1人で行ってくださーい。」
「あのなあ…。」
※昨日殺す殺されるの関係にあった人達の会話です。
「わああ!すっごおおおい!」
くろは近くの街を興奮しながら歩いていた。
「結局来るのかよ…」
「中世のヨーロッパのような街並み〜!」
街中をぴょんぴょん飛び跳ねて喋る。
「わあ、汽車の模型?」
ガラスのショーケースを覗く。
「これはなんて言う食べ物?禍々しいね!」
元の世界には無かったような食べ物の看板を指さした。
「街だわあああ!」
「うるせえよ。」
ボコっとゆきに殴られた。
「そう言えばですけど。」
「あ?」
くろは店で買ったクレープを食べながら話した。
「なんで私が能力持ってないってわかったんですか?それになんで昨日私を殺さなかったのですか?あと、なんで言葉がわかるかとか…」
ゆきはうーん、と唸って渋い顔をした。
「俺の目は特殊でな、いろんな物が見えんだよ。」
「ほう?」
ゆきはくろの顔をまじまじと見てどこか懐かしいように笑った。
「お前には関係ないよ。」
「それ煽ってますか?」
「はあ?」
服屋に着いたのは夕方だった。
「疲れたあ。」
「お前が寄り道ばっかするからだろ。」
「なにっ?!」
そんな会話をしていると、店の中がザワザワしているのに気がついた。
「どうしたんだろ?」
「お前、頭隠せ。」
「なんで?」
ゆきがくろの頭を隠した。
「良いから隠せって!」
くろは渋々手で頭を覆い隠した。
間も無く、奥から店長らしい白い髭を生やしたおじいさんと若い男が出てきた。
「魔王様、ご来店ありがとうございます。」
おじいさんと若い男は顔を青くしてゆきの後ろに隠れた。
(魔王だから怯えてたりするのかな?)
するとおじいさんがコソコソ話でゆきに話した。
「魔王様、なぜあのような穢れをお連れになられてらっしゃるのですか?」
その言葉を聞いた途端ゆきは鬼の形相になった。
「あいつは人間だ。悪いか?」
それを聞いたくろは、えっ?となった。
なぜならくろは魔王に怯えて青ざめているのかと思っていたからだ。
その店からは服を買ったらすぐに出た。
その後も他の店によらず、すぐに森に帰った。
「ねえ、なんであの時頭隠さなきゃいけなかったんですか?」
夕食の卵を割りながらくろが問いた。
「魔物…魔人はこの人間の国だと差別されるんだ。」
ゆきが憎いと言わんばかりの目で語った。
「確かに私は吸血鬼と人間のハーフですけど…外見じゃ分からないと思いますよ?」
「鏡見てこいよ…」
「ええ??」
鏡に映ったくろの頭にはツノが生えていた。小さいが、少し目立つ。
(吸血鬼ってツノ生えてるっけ?)
ツノの先端をツンツンしてみる。
「いったああ、血が出たああ!」
どうやらえんぴつより鋭いようだ。
「おい、これ着替えろ。」
「きゃあ!ゆきさん!?いつからそこに?!」
洗面所の出口にゆきが立っていた。
「お前がアホみたいにツノで怪我してたとこから。」
「はずい〜!」
部屋に帰って着替えてみると、案外似合っていた。
「うん、良いね。大きさは…ちょっと大きいか。」
リビングに行ってゆきに見せる。
「じゃーん!かわいいですか?」
「ああ、そうだな。」
「ここで!くろの節約術ー!」
「は?」
ゆきは缶ジュースを開けながら椅子に座った。
「服はなるべく大きいのを買うべし!成長期なんだから大きいのを買ったほうがいいのだ!」
「ああ?」
お風呂に入った後、アイスを食べていると、ゆきが声をかけてきた。
「くろは俺のこと、恨んでないのか?」
「ううん、むしろ感謝してます。」
「明日も色々やることあるから準備しとけよ。」
くろは部屋に戻って準備を始めた。
ゆきはいまだに謎が多い。子供なのに一人暮らししていて、魔王で、いろんなことを知っている。
(私も少しこの世界について学ばないと。)
くろは勉強するそうですね。続くでしょうか。