前世
部屋につくと、くろはそのまま寝てしまった。
俺は自分の部屋に帰ろうとしたところをくろが服の裾をつかんできた。
「ねえ、そろそろ教えてよ。なんで小さい頃に数学とか国語とか教えてくれて歴史も教えてくれたのに、地理は教えてくれなかったの。」
起きてたんだ。さすがの演技力ってところか。
俺はため息をついてくろのほうに振り返った。
「お前の部屋に草は、こんなに鮮やかなんだな。」
「?」
「部屋の色の彩度は人の心を映し出す…。」
「??」
「俺は心配だよ。出逢った頃はしなかったのに、今は俺になんも疑いもなく質問して。前世があんなんだから大丈夫だと思ったのに。」
「?!ぜ、前世って、知ってたの?」
焦ったように聞いてくるくろを見て、俺はこの際一部を除いて全て話してしまおうと思った。
「まず、俺がお前の親と弟を殺した時。常人なら異常なほどの怒りで俺に殴りにくると思うんだ。仮に親に虐待されていても死体の近くを通ったら吐き気がすると思うし、ゆういつの心の支え、弟が殺されたら殴りにくるだろ、普通。泣くだけじゃないと思うんだよな。異常なほどの死への慣れ。これは前世にお前がいつ死んでもわからないような職業などをしていたからではないか?それに目が見えなくても普通に一度も躓いてなかったしな。」
そう話し、チラッとくろのことをみると、ハッとしたような顔をしてこちらを見ていた。
「ど、どうした?!」
「そうじゃん、親と弟殺したのゆきじゃん!」
「忘れんなよ?!」
心配して損した…。そう思うと俺は笑いが込み上げてきた。
「ふふははっ。」
「何がおかしいのよ!!」
変わったな、くろ。俺は再びくるっと後ろを向いて歩いた。
「どこ行くの?」
「俺も暇じゃないんだよ。一応、魔王だし。」
「そうだったわ。」
忘れんなよ!と心の中でツッコミを入れながら俺は笛を吹いた。
リビングに着いた俺は、すぐ玄関に向かった。
最近、ろろと美桜にあっていないからだ。
どこにいるか目星はついている。
俺はそっと家を出た。
「そっかあ、前世バレてたかあ。」
私は布団に顔を突っ込んだ。
「何もしたくない、何も見たくない、現実逃避したい…。」
そう言えば、なんか最近ろろと美桜さんにあってないな。
私は起き上がって笛を吹いた。
「ゆきは多分どっか行ったよね、さっきドアの音がしたもん。」
私はろろの部屋のビー玉に手を当てた。
「いるなら返事して〜!」
しーん…。
非常用のカギ使うか…。
私は非常用合鍵を使ってろろの部屋に入った。
しっつれいしまーす、勝手にごめんなさ〜い。
心の中で言いながら、そろりそろりと中に入っていった。
ろろの部屋は、薄暗く、少し不気味だった。
そして、机には写真が飾られていた。
「自撮り写真〜?こんな服着るんだ?ガラじゃないと思ってたんだけどな。」
部屋を一通り見まわして、ろろがいないことを確認して私は笛を吹いた。