部屋が少ない狭い古い!
部屋が狭い。
とにかく部屋が狭い。
そう、私たちは魔王が森に一人暮らしするために作られた、ツリーハウスに居候しているのだ。
当然部屋数も少なく、2LDK。部屋が少ない狭い古い。最悪な環境だ。
ゆきと同じ部屋に寝るってことも提案されたが、女子は全員拒否。
最近は美桜さんがひとつの部屋を使って、ろろと私が一部屋、ゆきはリビングで寝ていることが多い。
し、か、も!ろろはものすごく寝相が悪い。気付いたら布団から大幅にずれていたり180度回転していたり、私を蹴ってきたり…。とにかく私は全然寝れてない。そこで!
「美桜さん!亜空間って自由に出入りできるように出来ますでしょうか??」
「できるけど…あ、なるほどね!全員分の亜空間を作れば部屋をわざわざ作らなくても良いって事ね。あ、そういえば。色々なゴタゴタで忘れてたけどゆきの暗殺にも役立ちそうだね。」
「そ、そうですね!」
ゆき暗殺か…。別に忘れていた訳ではない。でも最近はナイフを持ったり仕掛けを作ったりすると胸がモヤモヤして結局何もできないことが多かった。あの時、ゆきと殺す事について話した時もチャンスはたくさんあったはずなのに…。
私は考えるのをやめて美桜さんと一緒にゆきに相談しに行った。
「亜空間?あー、良いんじゃないか?」
「軽くない?」
…という事で美桜さんが爆速で全員分の亜空間を作って…。
「はやくない?」
完成した。
「私の技術力を舐めないでいただきたいね!」
「でも本当にこれが亜空間なの?ただの石ころに見えるけど。」
ろろが美桜さんが持っている亜空間玉を覗き込んだ。
「わああ!触れちゃダメ!!これは特殊な布を挟んでないと閉じ込められちゃうビー玉ってやつ!」
「あっぶな。先に言ってよね。」
ゆきだったら内側からゴリ押しで石ぶっ壊して脱出できそう…。
「じゃあ、このビー玉にはどうやって自由に出入りをするんだ?」
「それは簡単!」
そう言って美桜さんは懐から鍵を出した。
「これを専用のビー玉に当てるだけ!」
「そこは普通なんですね。」
「普通とはなんだ!これでも頑張ったんだから!」
私たちは早速ビー玉に入ってみる事にした。
「行くよ、せーのっ!」
ここがビー玉の中…。何もない空間。地面はなく、浮いている感覚があった。
「どうせならもっと草原とかに星がぱあああってあるみたいな亜空間とか…。あ、でもここ部屋か。」
そよそよ気持ちのいい風か吹いていて気温は少しぴやっと程度。綺麗な鮮やかな、明るくところどころが光っている一面の緑の草原に囲まれて、都会では決して見れることのない一面の星空。そういう場所を思い浮かべると。亜空間がガタガタいい出した。
「うわああ、え?!」
そこで美桜さんの放送?が聞こえてきた。
「亜空間内で想像する時は注意してね〜!亜空間は持ち主の考えに影響されやすいからね!」
「マジでそういう事ははやく言え!!」
気がついたらあたり一面、思い描いた通りになった。
「すっっご。なんだこれえ。」
て言うかここ部屋じゃん。なにやってんだ私。
でも…。私は草原の真ん中に一つの小さい赤い屋根の家を想像した。
「これでばっちりかな。」
私は満足して亜空間から出ようとしたが。
「出る方法教えてもらってない。」
絶望。
そこでまた美桜さんの放送?が入った。
「出る時は鍵についてる笛を吹いてね!」
すぐに私は笛を手にしてピーッと吹いた。
視界が急に真っ白になった。瞬きをした次の瞬間、私はリビングに立っていた。
「わあ、本当に亜空間出入りできちゃってる…。」
「やっとちゃんとしたベットで寝れる…。」
「まあ、こんなもんよ!」
美桜さんは胸をドンと叩いてふふんと言っていた。
まあ、あの空間、誰にも負けない心地よい空間を作らせてくれたのは感謝ですね。
…能力やっぱ強いな…。