つっかまえたっ!
美桜さんとゆきはせっせと準備を進めた。
「2人共、準備はおーけー?」
「ったく、大変だったぞ。これくらいの子供なら三人で脳筋プレイできたんじゃないか?」
ゆきはくろを睨んだ。
「意外とすばしっこいの。くろ、こっちはオッケーだよ!」
ゆきは嫌々位置に着いた。
「さん、に、いち!」
私の掛け声で三人が一斉に動き出した。
「よいしょ。」
ゆきが公園のドームの穴にバリアを張った。
「ん…?何これ?」
中から女の子の声が聞こえた。
「ゆき!」
「わあってるよ。」
気だるそうにゆきはドームのバリアをどんどん縮めた。
「な、なんなの!」
女の子はそう言ってバリアに触れた。するとバチっと大きな音が出て電流が流れた。
「いたっ…!」
構わずバリアはどんどん小さくなっていく。
「ほら、美桜。お前の出番だぞ。」
「言われなくてもわかってるって。」
美桜さんはバリアの近くに行ってバリアに手をかざした。
「初めてだから成功するかわかんないわよ。」
「頑張れよな。」
空間切断・改、美桜さんは小声でそう唱えた。
美桜さんの周りには、星のような輝きを放つオーラが出ていた。思わず見惚れてしまうほど綺麗で、神秘的だった。美桜さんが使う魔法は全部どこか神秘的な気がして、見るのが好きだった。でも、ずっと見ていると元の生活には戻れないような、そんな気がして怖かった。
女の子は周りのバリアと一緒に空間から切り離されて美桜さんの亜空間の中に閉じ込められた。
「何、ここ。宇宙…?」
女の子が周りを見渡すと、バリアがバリっと割れた。
「えっ。」
下は水溜りのように水浸しになっていて、歩くとピチャピチャ音がした。
「不思議…。」
女の子が月に向かって歩くと、急に空間が歪んで壊れた。
「やっぱり空間を切り離したまま動かさないでいると不安定な状態になる…反省反省。」
美桜さんはそう言って女の子の腕を掴んだ。
「つっかまえたっ!」
女の子は気づくと公園のドームの外にいた。
「な、なんで…?!」
「顔を見せろっ!」
私は困惑してる女の子の後ろからフードを取ろうとした。
「いたっ!」
悲鳴を上げたのは私と美桜さんだった。
「こんな子供をいじめて何が楽しいの?」
手のひらが少し感電していてピリピリしていた。
そこにいる女の子はさっきまでとは全く別物の雰囲気を纏っていた。威圧感があり、重く、のしかかってくるような声で。凍るように冷たかったが、どこか悲しげな目つきも合わさって私たちは動揺した。
美桜さんも私と同じような感電の仕方だったが、ゆきは離れている場所で動けなくなっていた。
「ゆ、ゆき?大丈夫?」
「俺は大丈夫だ。それよりはやく縄結べ!」
「わかってるよ!」
美桜さんは痛かったのが嫌だったようで、少しキレ気味だった。
逃げようとした女の子を私が後ろから捕まえて美桜さんが縄を結んだ。
「や、やめて!私は平穏な生活をしたいだけなの!お願い!」
ジタバタする女の子を黙々と美桜さんは縛った。
「行こうか。」
「ゆき、立てる?」
「平気だ。それより時間がやばいだろ。俺を置いて先に行け。」
「わかった。立てたら家に帰ってて。」
そうして私たちは急いでギルドに向かった。
「あの、ひったくり犯を捕まえたんですけど…。」
私はギルドの受付嬢の前に立っていた。
「ひったくり…?」
「はい、これです。」
そう言って私はこないだ貰ったクエストの紙を受付嬢に手渡しした。
「申し訳ございません。このクエストはこちらのギルドでは取り扱っていません。この文字は何かの解読クエストですか?」
「え…?」
「解読クエストでしたらギルド第三支部の解読クエスト受注専門受付嬢の方に…」
それからはあまり覚えていない。力が抜けて、美桜さんに報告したのは覚えている。が、それ以降は疲れ切って覚えていなかった。
ギリギリセーーーーフ!!!
週一投稿は守れた!!!