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「茶会が決まったら連絡します。迎えは俺が行きますから安心してください」
「は、はい・・」
安心できるか!と言ってやりたいが、『はい』と答えるしかない小市民はつらい。
若頭も組長先生も和服美女もニコニコと笑顔だ。
三人の笑顔がまるで地獄の底なし沼への手招きの笑顔に見える。
可憐な白きざざんかよ・・、おまえに魅せられてこの道を通ったばかりに・・
さざんかの、道は何処へと続く道?
底なし沼に近づく道よ━━━━━
「そうだわ、お昼を食べてらっしゃいな」
「い、いえ!そんなご迷惑・・!」
「なーに、こいつは料理を振る舞うのが趣味なんだ。遠慮せず食ってけ食ってけ」
え?もしや和服美女は組長先生の???
「では昼食ができるまで茶碗のコレクションをご覧頂きましょう」
若頭が立ち上がった。ほんと背ぇ高ぇなこのひと。
「そりゃあいい。俺が説明してやる」
組長先生も立ち上がった。
「いえ!あの・・!」
私は早く帰りたい!
「何か問題でも?」
氷点下の視線で再び脅しをかけてくる若頭。
背景に極寒のシベリアが見える。
なんか歌が聞こえてきた。
『シーベリアの冬は極寒のー氷点下~~~』
右手にピストル、左手に水道管持ってそう。
・・助けてくれ、イタリア。
「い、いえ、・・その・・す、すごく興味が・・あり・・・まぁ・・す・・」
屈する私は拳を握る。
「でしょうね。さあ、どうぞ」
勝ち誇る若頭の笑顔100%。
私は100%勇気で断りたかった━━━
━━━のに!
ある晴れた秋の日に、ヤクザ2人に挟まれ連れて行かれる女が一人。
そんな私の瞳にさざんかの清らかな白がまぶしく映る。
ため息混じりのあきらめに、我が人生が仄暗い裏道の色に染まりませんようにと、私は心から願うばかりだった。
end